2018/04/17 05:32 | 昨日の出来事から | コメント(0)
ビットコイン、その後
今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
2017年後半から2018年初めにかけて高騰して以来、仮想通貨(暗号通貨)は急落している。一番良く知られたビットコインは、今やピーク時の3分の1まで下落している。
しかし、それでもデジタル通貨信者は数多くいる。彼らは、(いくら下落したとはいえ)現在は、まだ2016年の水準より高い水準で取引されていると主張する。また、投資家の中には、アナリストがいう「暗号現象」の説明に強い関心を持っている投資家もいる。
最近、バークレーズが発表したレポート「2018年の株、ギルト(通貨)研究」の中で、「テクノロジー通貨は、株や通貨以上に金融や経済に大きなインパクトを与える」と述べている。また、レポートの中で、暗号通貨は「問題解決を求めている段階」として述べている。
そこには、とりわけ4つの課題がある。1つ目は、「信頼」の課題である。多くの消費者や経営者は、通貨が政府によって発行された故に信頼を置いている。2つ目は「主権」の課題である。どの政府や中央銀行も私的な暗号通貨によって脱税され、あるいは金融調節の手段を失う事に非常に敏感になっている。
3つ目はプライバシーの問題である。暗号通貨は匿名(仮名)で使われるが、全ての取引が記録として残っているブロック チェーンによって、実際の処は現金よりも匿名性に対する信頼度は低い。もし、この匿名が破られると、そのユーザーの取引履歴が全てわかってしまう。 4つ目は、システムエラーを起こし、あるいは取引を元に戻すのが非常に困難なブロック チェーンの不正によって、暗号通貨が使用不能になる問題である。
実は、こうしたこれらの問題を解決する存在が現金であり、現金は支払いを完璧に行い、しかも即座に資金移動を可能にする。
よって、新規参入者(通貨)は、現金に勝る何を訴えるのであろうか? プライベートの暗号通貨は、信用が低い状態、あるいは政府が通貨交換の手段として通貨を望まない、もしくは通貨を交換させない状態(例えば、戦争や、財政破綻など)においては、社会に取って魅力的なものとなり得る。バークレーズは「投資機会が制限されている国々においては、暗号通貨は国内資産の貯蓄を分散させる手段の一つになるかもしれない」と述べている。
しかし、こうした事は先進国には当てはまらない。一方で先進途上国ではそうした目的で保有している人々はいる。また、先進国では、犯罪逃れで保有する需要がある(最も、今は現金の方が好まれているが)。そこで、低い信用と犯罪市場において暗号通貨の需要があるとの緩い前提にたって議論をしたとして、バークレーズは、暗号通貨の全ての流通価値は、最大でUSD660bn~780bnであった。 しかもこれはあくまでも2018年初めの概算価値である。
この最大の概算価値というのは「適正な価値」と同じ意味ではない。調査によれば、ビットコインを買った人の多くは「投資目的」であった。アメリカ人の僅か8%の人だけが、購入や支払の為にビットコインを使っているに過ぎない。ビットコイン購入の動機の大半は「投機」なのである。そのことは、最近の急上昇と、その後の急落が如実に説明しており、チューリップからビットコインに至るまでバブルそのものなのである。
投機的なバブル(資産が非合理に上昇するプロセス)を合理的に説明するモデル化(定形化)は困難である。しかし、バークレーズはこれを伝染病に例えてうまく説明している。バブルは、最初は少数の所有者(感染された人)から始まる。その後、新規購入者はこの病気に侵される。何故ならば、彼らは価格が上昇する事を実際に体験し、それによって今度は買わないことで儲け損ねることを心配する。しかし、まだ大半の人々は、こうした伝染病に対して免疫があり、決してそうした伝染病にかからない。
しかし、買った人は現在の価格と最近の価格上昇のアルゴリズムを組み合わせて将来的な目標となる価格のターゲットを期待する。 (こうした状況下で)価格が早く上昇すればするほど、人々の期待はより広がり、より多くの人々がこの伝染病に感染する。最終的に、マーケットは潜在的な購入者を全て巻き込むと価格上昇が緩やかになる。そして、ひとたび価格が下落に転じると、所有者は儲ける期待がなくなり、売り始める。ここに伝染病の拡大が終わる。
バークレーズのモデルは、ビットコインの歴史をうまく説明している。また、同時に、長期的な暗号通貨の将来の見通しが明るくない事を示唆している。 多くの人々が僅か2~3か月の間にビットコインを大量に買い、その陶酔状態は極限に達した。中には、ビットコインだけでなく他の仮想通貨にまで手を広げて異常なまでに大きなリスクをかけて買った人もいた。 しかし、彼らは、期待した富の代わりに損失を被ることになる。また、今となっては、保有している仮想通貨を売りたくて仕方ない人もいる。もはや、新しい購入者は、暗号通貨が一方向だけに動くことに賭ける事(上昇だけを期待する事)は困難となる。
暗号通貨に取って良いこともある。 それはブロック チェーンが他の目的で有用であるとわかることがあるかもしれない。例えば、資産移動の記録などにはブロック チェーンの考え方は有用かもしれない。しかし、こうした潜在的な発明が、人々に価格が永遠に上昇し続けるまで魅了すると考えるのは無理がある。暗号熱(仮想通貨の伝染病)は、結局の処、終わった。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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