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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2018/03/01 05:27  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

何に投資するのが一番いいのか?!


おはようございます。

今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

債券、株、T-Billは投資対象として非常にいい。しかし、所詮、それらは紙切れに過ぎない。それらを壁に飾ったり、近所に見せつけられるようなものでもない。多くの金持は、土地を始め、高級ワイン、クラシック カーや芸術品など、もっと目に見えるものに投資してきた。

果たして、それは賢明な投資なのだろうか?ロンドン ビジネス スクールのElroy Dimson とPaul Marsh, そしてMike Stauntonは、クレディ スイスが毎年出しているグローバル投資年鑑を使って多くの投資対象の毎年のリターンを計算した。その中には、ワインや切手、バイオリンなど、他の投資対象に対してリターンの多いものもいくつかあった。その中でも高級ワインは最も高いリターンであった。驚くことに、皮肉にも高級ワインの価値は上がると同時に劣化してビネガー(酢)、即ち無価値になることもある。実際の処、古いワインは歴史的な共感を呼ぶ。1787年のChateau Lafite Rothschieldの1本のワインがUSD156,450で売られた。 というのもその所有者がトーマス ジェファーソン所有だったからである。

こうしたリターンを予測する際には、そのコストも考えなければならない。芸術や価値のある楽器の総合的な指数は、株などの指数に比べてリターンが低い。しかし中には歴史的価値が評価され、あるいは作品の出来栄えが評価されて高騰することもある。

処が、実際にオークションで入札されても、輸送費と維持費がその価値の30~40%もかかる。といのも何十年、何世代に亘り、これを保管するコストは頻繁に売買されている株よりも非常に負担となる。

また保険の費用もかかる。もし、誰かがシュトラリバリウスのバイオリンを家に保管したら、殺人などの犯罪をしてもそれを盗もうと泥棒が入ってくるリスクがある。

一方で、税金面ではこうした収集品は有利である。金融資産は所得税と見なされて利息や配当、売却には税金がかかり、全体では40%程度もしくはそれ以上かかる。しかし芸術品や切手は所得とはみなされず、それらが売却された時のみ税金が発生する。イギリスの投資家にとっては、計算上、1900年以降の税引き後では、こうした投資は株式よりもリターンが高かった。

そして、何よりも、投資家がこうしたものに投資するのは、投資以上に趣味として「目に見えないリターン:emotional return」を得るためかもしれない。クラッシック カーを所有している人に出会った人は誰でも、彼らがそれを見せびらかして楽しんでいるとわかる。

多くの人に取って最も大きな資産は、自身の保有する家ではないだろうか。2016年末時点で世界全体の家の評価額は228兆ドルあり、一方で株や債券の世界全体の評価額は170兆ドルである。しかし、投資しての家の価値については懐疑的である。最近の報告では、家の投資リターンは、株式投資のリターンと同じ、もしくはそれ以下であることが分かっている。 しかし、人々は対して「それは、この報告を書いた人の統計の取り方が、特殊な方法、あるいは通常でない時期を取ったものであり、それは間違っている」と指摘する。

しかし、賃貸ベースで家の価値を見てみると、家を貸しに出した際の不動産業者への手数料や空き家リスクがある。また、家が何十年も経過すれば、多くの家の価値は下がり、家の価値を下げない為に改修繕をしなければならない。何世紀にもわたり家を所有してきた人々は多額の資金を、セントラル ヒーティングや配管などに費やしてきた。これらを含めたトータル リターンでは恐らく株式のリターンを下回るばかりか、債券のリターンをも下回るであろう。

今回の報告の中で、最も驚くのは、過去118年間にわたり、その間にインフレの時期があったにも関わらず、金や銀が現金や債券よりもリターンが低く、全ての投資対象の中で最もリターンが悪いという事である。事実、デフレ下ではT-Billの次に金のパフォーマンスは良かった。また、金は、インフレ時には他の投資対象よりアウト パフォームした。 しかし、金は長期的なコスト(景気サイクルの変化)に対するヘッジ手段に過ぎないのである(何故ならば、平常時には何のキャッシュ フローを生まない為)。

結局の処、株式が最もパフォーマンスが良く、1900年以降で見れば5.2%である。しかし投資家から見れば、こうしたパフォーマンスが今後も続くとは限らない。株のリターンの観点から見れば、株のリターンは、リスク フリーの金利(T-billの金利)+リスク プレミアムとなる。 このレポートの報告者によれば、株のリスク プレミアムは3.5%程度である。一方で、T-Billの実質リターン(インフレ勘案後)はマイナスであり、これらを考慮した実際の株のリターンは3%程度である。 LBS(ロンドン ビジネス スクール)は、同様の調査を2000年以降でも行った。その結果、この間の株のリターンは2.9%であった。もし、この報告が正しいとすると、人々は、表向きは株式投資よりも高いリターンが出ているボルドー ワイン投資(表向きのリターンが3.5%以上)の誘惑にかられるであろう。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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