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2018/02/27 05:20  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

ECBの銀行監督の脆さを露呈したラトビア問題


おはようございます。

今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

ラトビア中央銀行の総裁を17年間務めたIlamars Rimsevics氏は、来年退任する筈だった。 しかし、代わりに、今、彼は辞任を要求されている。2月17日にラトビアの不正取り締まり委員会は、彼が少なくともEUR100,000の賄賂を要求したと指摘し、国際社会はこの事を懸念している。というのもRimsevics氏はECBのメンバーであり、金融政策の決定にも関わっていたからである。

ラトビアの首相Maris Kucinskis氏はこれを重大に捉え、Rimsevics氏は辞任に追い込まれている。しかし、彼は、何とか持ちこたえ、2月19日に保釈金を払って釈放され、彼は「政府はこれまでの悪しき慣行を取り締まるために私を罰した」と述べている。また、彼は、自らが暗殺の危険に曝されているとも述べている。

ラトビアの銀行は、1991年の独立以来、頭の痛いことに、銀行の規模を大きく上回るオフショア取引が横行し、その多くがマネー ローンダリングなどの違法取引が為されている。2008年の世界金融危機以降、ラトビアの最大の銀行Perex Bankは腐敗し、不正会計処理でIMFやEUからの補助金を得ることでラトビア経済を支援してきた。その一方で、Rimsevics氏は自国通貨Latsをユーロとリンクさせる先導的な役割をはたしてきた。それによってラトビア通貨Latsは通貨としての信用を得たが、その一方で、そのコストは膨大なものであった。ラドビア経済の成長率は-25%であり、失業率は20%を越え、国民の10%が海外に流失した。

直近では、先週、アメリカの財務省は、ラトビアの最大の民間銀行の一つABLVが、取引が厳しく制限されている北朝鮮と組織的にマネー ローンダリングを行っていると発表した。これを受けて、預金者は一斉に預金を引き出し、その額はEU600mnに上り、ABLVは6日間業務を休止した。その後、ECBは、2月19日にこの銀行の支払を凍結し、顧客のカード支払いも停止した。

Rimsevic氏には、銀行の規制監督に関わる人を任命する役割があったが、銀行監督規制そのものに責任はない。それ以上に、当該銀行は、ECBの監督下にあったにも関わらず、また、この銀行がEUのアンチ マネーローンダリングのルールに従わなければならない銀行であったにも関わらず、組織的にマネー ローンダリングを行っていることがわかり、改めてEUの銀行監督当局の弱さが露呈した。 しかもそれは氷山の一角に過ぎない。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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