2018/02/08 05:18 | 昨日の出来事から | コメント(0)
パウエルFRB議長の立場は?!
今週号の英誌エコノミストに掲題とした記事がありましたのでご紹介したいと思います。
尚、この記事は、先週末からの世界的な株価下落を反映していません。
かつてJanet Yellen 議長は、有名な比喩をもじって「全てのゲストが到着するまでパンチ ボール(酒)を注ぎ続けなければならない」と言った。今週、投資家たちは、パーティの最後に到着するJerome Powell氏がFedのトップJanet Yellenのポジションをうまく引き継ぐことが出来るか心配している。1月29日に10年国債の利回りは2.7%に上昇し、2014年初め以来の高い水準となっている。こうした金融引き締が株式市場に対してくしゃみ(急落)を引き起こすかもしれない。1月30日には、S&P500は1.1%下落し、昨年8月以来の下げ幅を演じ、その後は若干買い戻されている。失業率の低下と、減税によって、投資家はインフレや金利がやがて上昇するのではないかと心配し始めている。
アメリカ経済は2017年第4四半期に2.5%のGDP成長をした。リサーチ会社Okun‘s Law(GDPと失業率との関連を調査する会社)は失業率の低下が、今回の経済成長に50%寄与していると指摘し、この間、失業率は4.7%から4.1%まで低下している。2018年初のインフレ率が低位に留まっている事は、成長の加速を押さえ込んでいることを示唆している。しかし、ここにきて価格上昇圧力が高まり始めた。第4四半期のコア インフレ(ガソリンや食料品を除く)は、Fedが目標とする2%を僅かに下回った水準にまで上昇してきている。市場は、最近になってFedの2018年の政策金利の引き上げ回数は、2017年と同様に3回だろうと考え始めている。
金利上昇見通しは、以下の3つの懸念をもたらす。 一つ目は、株や債券などのアセット市場は、金利上昇に対する準備が出来ていない。2018年1月29日の株式下落前に、ゴールドマン サックスが取りまとめた金融状況インデックスによれば、金利上昇に対する準備が殆どなく、ずっと低位で推移したままである(殆ど何もしていない状態)。これまで政策金利引き上げを遅らせてきたことが資産価格の上昇を招いてきた。その結果、これまでの政策金利引き上げが逆効果となって資産価格の上昇を招いている。
2番目の懸念は、消費者が支出に対して過度に楽観的になっている。10月の消費者信頼感指数は過去の10年で最も高い水準となった(それ以降、若干、下落している)。車や部品の購入が2017年第4四半期のGDPを+0.4%押し上げた。しかしながら、経済の中間もしくはややそれより下のミドル階級の賃金は、消費を増やすほど十分に上昇していない。代わりに彼らは貯蓄を減らしている。12月の個人貯蓄は僅かに2.4%しかなく、2005年9月以来の低い水準となっている。もし、資産価格が下落して、消費者の楽観的な考えに風穴を開ければ、経済成長は困難となるかもしれない。
3つ目の懸念は、企業債務である。昨年4月、IMFは債務の多い企業は借り入れコストの上昇に曝されているとレポートしている。 また、ある企業会計会社によれば、全企業の10%が既に企業債務の負担に苦しんでいると指摘している。
こうした懸念はもっともな事であろうか? 人々が過大な借り入れをすれば、資産価格の下落は心配材料となる。しかし、規制当局は、過去10年に亘り借り入れを先送りする規制改革を行った。その結果、家計のバランス シートは2008年の金融危機に比べてかなり強固なものになった。企業債務は、確かに問題になるかもしれない。 しかし原油価格の上昇によって、 企業債務が最も多いエネルギー関連企業にとってはそれほど負担になっていない。また、世界的な金利上昇によってFedは強いドルが世界経済の不安定要因なると心配する必要がない。
確かに、もしPowell氏が、政策金利の引き上げをうまくマネージする事が出来れば、それは歓迎されるであろう。というのも、Fedは次の景気後退期に政策金利をゼロまで引き下げるまでの糊代(のりしろ)をより多く持つことが出来るからである。逆に、最悪なことは、パーティが始まる前にパンチ ボール(酒)がなくなってしまう事である(政策金利の引き上げが十分に出来ずに、景気後退期に入ってしまう事である)。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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