2017/09/12 05:57 | 昨日の出来事から | コメント(0)
長期見通しの悩ましさ?!
先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
長期投資で最もいい方法は何であろうか? 多くの人々は、過去のパフォーマンスがいい資産を運用しているファンド マネージャーをピック アップし、過去のパフォーマンスだけを当てにして投資を判断している。 ファンド マネージャーのパフォーマンスは常に一定あり続けることはあり得ないので、そのリターンは千差万別である。 また、現在の資産のパフォーマンスが高ければ高い程、将来の期待収益は低下する傾向がある。
この事は、国債についても端的に当てはまる。誰かが国債を2%で購入し、それを償還まで保有すれば、それは一番良くて(インフレ勘案前で)2%のリターンが得られるだけである(基本的には国債がデフォルトするとはほとんどないのでそれ以下になるリスクは少ない)。 しかし株に関しては、国債ほど計算が簡単ではない。低い配当の株を買う、あるいは収益の高い株を買うなど、様々ないい投資方法があるにもかかわらず、これらの結果は、通常のリターン(インデックスのリターン)を上回ることはない。
更に、長期投資に関する投資判断では、投資資産は、投資家の価値観やファンダメンタルズよってそれぞれ割り当てられていく。 ファンド マネージメント会社GMOが10年以上に亘って行ってきたこと(投資判断の基準)がある。 それは、収益を生むファンダメンタルズについて常識的な前提に立って投資判断する事であり、更には過去7年間の平均的な収益を投資判断の基準とする。
このプロセスは、ある意味では成功している。GMOが想定した資産のパフォーマンスは、相対的に他の資産よりも高いパフォーマンスを上げている。逆に、このプロセスで悪い評価を得た資産は、低いパフォーマンスとなっている。しかし、彼らの考えに基づいて悪い評価を得た資産でも、実際のところは-2.8%程度のパフォーマンスに留まっている。
GMOの予測は、特にエマージング マーケットの債券や、国際的な株に関してはかなり正確な予測(評価)が出来ている。 彼らの予測したリターンと実際のリターンの乖離は1.5%程度に収まっている。 しかしアメリカの株に関しては、GMOは悲観的になり過ぎており、彼らの予測は実際のリターンより4%程度下回っている。
この過ちの理由ははっきりしている。株価が、彼らが想定した過去の範囲にまで戻ってこなかったからである(割高のままで推移したからである)。GMOの予測は株価配当に対してはかなり正確である。しかし、将来価値の予測に関しては大きく予測を外している。
以上から2つの結論を得ることが出来る。 1つ目は、GMOは、単に予想のレンジの範囲を間違えたという考え方である。つまり、株は新しい価値基準、あるいはより高い株価基準に移行したという考え方である。こうした考えは、1929年までのIrving Fisherのようなエコノミストにとっては不愉快なものとなる。つまり、世界恐慌前の割高な水準に上昇した現在の株価が更に高い水準へシフトしたとする考えである。現在のアメリカの企業収益は長期的な観点からGDP対比でかなり高い。 これは、いくつか企業がその産業において独占的な力を持っている結果と言える。あるいはグローバリゼーションの時代にあって労働者の賃金交渉力が後退した結果と言える。
更に明白なもう一つの議論(結論)としては、短期金利や長期金利が非常に低いので、投資家は、少しでもリターンを得る為により高いコスト払っている(割高な株を買う)ことが挙げられる。 当然のことながら低い配当利回りと低い経済成長の下で、高いROEを維持する為には、GDP対比で高い水準の企業利益を出さなければならない。実際にはこうした事は起こりえない。 何故ならば、政府が、独占企業のような社会に対して不満を引き起こす企業を取り締まる(あるいは規制する)からである。 あるいは、こうした状態では労働市場が逼迫して賃金が上昇し、企業業績を圧迫するからである。
いずれにせよ、GMOが今の処、これまでの企業収益の評価方法を変える(あるいは放棄する)気がないのは十分理解できる。また、最近の予測では、リターンがかなり下方修正されてきている。事実、直近の実績は、エマージングの株を除いて、殆どの株や債券のパフォーマンスがマイナス リターンとなっている。(にもかかわらず)こうした足元のパフォーマンスが悪くなっている事を信じない投資家は「今回だけが違っている」ということに賭けている(いずれ良くなると信じている)。 たしかにそういう事もあるかもしれないが、そう言い切るには相当強い信念が求められる。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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