2017/05/02 05:13 | 昨日の出来事から | コメント(0)
ETF市場がバブルに?!
今週号の英誌エコノミストに最近のETF市場に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
時として、金融市場の新しい手法があまりにも行き過ぎると(急上昇した市場が、その後、急落すると)、娯楽テレビでいえば、そのチャートの形が、まるでサメの背びれのような形になる。今、ETF(Exchanged Traded Fund)市場においても同様の事が起きているかもしれない。最近に発行されたETFは、なんとETF運用会社に投資するETFが現れたのである。
その背景には、これまでのETFは、投資家に対して低いコストで分散投資を供給出来たおかげで急速に拡大してきた。去年、この業界が管理するETFの資産残高は、2005年もUSD725bnドルからUSD3兆ドルまで増加した(10年で4倍)。そのおかげでファンドの中には高いパフォーマンスをしているものがある。
しかし、ETFの本来の目的の1つである分散投資とは裏腹に、その多くは市場の構成上、金融セクターに集中して投資をし、例えば、巨額のファンドを扱っているBlackRockや、NASDAQの様な取引場は、ETFそのもの以上にEFT市場の急成長により多く関わらざるを得なくなっている。つまりETF業界が成長すればするほど、こうした企業はよりより大きなリスクを抱えることになる。
そこで新しく出てきたファンド(その名も世間受けするようにETF Industry Exposure and Financial Service ETF)は、このETF業界がより「特殊化」して行くいい例である。 そもそも初期のETFは、例えば、S&P500の値動きに連動するように資産を分散して株を買い集めたものに過ぎなかった。それが、今や全世界で1338の特殊なETFが生まれ、ファンド リサーチ会社EFTGIによれば、その資産残高はUSD434bnにまで拡大している。
こうした特殊なETFの中には、エネルギーやメディアに特化したものもある。彼らは、投資家に対してこうした業界がよりパフォーマンスがいいと訴え、投資家も業者に対してそうしたニーズ(特殊な業界に特化してETF)を要求している。しかし、その他の多くの特殊なETFは、その実態が曖昧である。例えば、企業創立者に投資するETFがあり、そのファンドの残高はUSD3.1mドルとなっている。あるいは、Nashville Tennesee(単なる地名に過ぎない)の近くにある企業の株を買うETFがあり、その残高はUSD8.5mドルとなっている。最近では、大麻に関連した企業の株を取り入れるETFまで出てきている。
こうして見てみると眩暈(めまい)がしてくる。より特殊化したファンドは、より小さな企業に投資することになり、当然のことながら、その値動きは不安定であり、流動性も少ない。もはや、本来の小さな投資家の安全性の為に考え出されたETFの趣旨とはかけ離れてしまっている。
金融市場においては、かつても同様の途を歩んできた。2000年初旬に、イギリスでは投資信託業界の危機に苦しんだ。ETFと同様に、当時の信託銀行は株式投資のマネージメントに関わったのである。こうした業務は19世紀からあったが、愚かにも、当時(2000年第初旬)、資本分割信託(Split-capital Trust)と言って、株式を2つに分け、一つは配当だけをとるファンドと、もう一つは株価の上昇だけをとるファンドに分けたのである。この背景には税制優遇があったことと、小口投資家にも買えるファンドであったことがある。しかし、このSplit-capital Trustの中には、本来の株式投資をせずに、他のファンドの株を買っていたファンドがあった。 そして、いくつかのファンドで問題が起きた時、その余波が業界に広がり、最終的には200百万ポンド(USD258百ドル)の賠償問題になった。
アメリカでは、更に大規模に同様の事がMBS(Mortgage backed Securities)で起きた。モーゲージ ローンの金利支払いを原資とした債券を発行する考えは19世紀からあった。しかし住宅モーゲージ ローンを原資とする債券は1980年に起こった(それまではなかった)。 このモーゲージ市場におけるCDO(Collateral Debt Obligation)と言う名の商品は、それぞれのローン資産を幾つかのグループに分け、投資家はそのリスクに合わせて資産を買う仕組みであり、2000年代かけてサメの背びれの形状のように急拡大した。しかし2007年にその資産のクレジット(信用)に疑問が生じたことが引き金となって世界金融危機が起こった。
今の処、ETF市場は、イギリスのSplit-capital TrustやアメリカのCDOのような極端な状態になっていないが、しかし、大雑把に言えば、レバレッジとはいえファンドが本来の株式などの資産を買わないとなると、もしETF市場が1%価格が下落しただけで、そのロスはレバレッジがかかっている分だけ損も大きくなる。
しかも、ここにきてETF市場が急拡大したせいで、いくつかのETF価格に歪みが生じ始めている。最近では、データ供給会社Factsetによれば、金のETFに大量の資金が流入した為、金のETFで最も大きいファンドであるVanEck Junior Gold Miners ETFは、何とその業界の企業54社の3分の2以上の企業の株を買っている。
このファンドの資産USD5.4bnの内、半分は今年1月から4月17日にかけて流入している。一つのファンドによって買い上げられたことによって、VanEck Junior Gold Miners EFFは、ETFの性格上、更に買うことになる(自らが買う事によって、更に自らが買いに行く羽目になる)。
こうしたリスクをフィード バック効果と言う。つまり、ファンドが小さな会社に資金を投入する事によって、これらの株価が上昇し、その価格上昇が投資家からの更なる資金流入を招く。しかし、ひとたび投資家が彼らの気持ちが変わって資金を引き出したと望んだ時、こうした鉱山関連株は急落する。人々は、VanEck Junior Gold Miners EFFはこうした急落にも対応できる大きなファンドだと考えて投資している。 しかし、ETF業界が特殊化すればするほど、大きな困難がより頻繁に起こる。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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