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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2017/04/18 05:25  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

NY株、上値は重い?!


おはようございます。

先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

株式インデックスの目的は3つある。 一つ目は、まず市場で何が実際に起きているかを知ることである。そして、次に、プロのファンド マネージャーが自分の判断で作ったポートフォリオを比較するベンチマークを作る事にある。3つ目は、投資家に対して十分に分散したポートフォリオを低いコストで提供してくれる事にある。 これらは、実際には株式市場で広く採用されているMSCI-all-WorldCountry Indexで行われている。

その理由は、アメリカ株の全世界の株式市場に占める割合が54%に達しているからであり、この水準は、ITバブルの2002年と同じ水準である。 言い換えれば、マーケットをモニタリングする上で、全ての指標はウオール ストリート(アメリカ株の割高感)によって歪められているともいえる。と言うのも国際的に投資するファンド マネージャーにとって、彼らがどれだけ積極的にアメリカ株を投資したかによって彼らのパフォーマンスが決まるからである。 このことは、何も先進国だけをカバーしているMSCI-all-WorldCountry Indexが悪いわけではない。MSCI-all-WorldCountry Indexは先進国の株の60.5%をカバーしており、全世界の株式の割合である54%とさほど変わらない。

また、MSCIの計算方法が間違っているわけでもない。ただアメリカ株の全世界の株式に対する割合が多すぎるのである。また、インデックス ファンドの手数料は0.3%しかなく、それは安いオプションを買うのと似ている。こうした状況は、1980年代に日本株が世界の株式に対して同様に支配的な時期があった。

そのピーク時には、日本株の割合は、MACIインデックスの44%を占めており、まさしくバブルであった。また、その割合はその他のアジアの国々のGDPの2倍以上もあった。 投資家は、トヨタやソニーの株を買う事に熱心で、世界中の国や企業は、この日本の企業モデルを学ぶ必要があった。当時の日本企業は(持ち株制度があったために)、他の企業から買収される心配はなかった。 また、目先の収益を心配することなく長期的な視野で事業計画を立てることが出来た。

今、アメリカ株インデックスの割合は、世界のGDPに対するアメリカのGDPの割合に比べて2倍以上となっている。 この隔たりは、2000年以降拡大している。 と言うのもアメリカGDPの世界のGDPに対する割合は、この間低下し続けたからである。今日の投資家は、全世界的に支配するアメリカのITグループ、例えば、グーグル、フェイス ブックやアマゾンのような企業株を購入する事に熱心である。また、彼らは、特殊な株主による買収、例えば、アマゾンが目先の収益よりも長期的な収益の為に買収する企業の株を買う事に熱心である。一方で、アメリカ以外の国では、アメリカのようなIT企業の誕生を望むのが精一杯である(実際には、こうした企業は生まれてきていない)。

かつては世界の株式市場を席巻した日本のその後は、株式市場と実際のGDPのかい離はどんどん縮小し、今や、日本株の世界の株式市場に占める割合は日本のGDPの割合とほぼ同じ程度になっている(10%程度)。また、中国の株については、中国の国内投資家が主に買うA―株のGDPに対する割合は、もっと小さく、こうした株はMSCIの対象株から外れている。 どんな場合においても、その国の株式市場が、国内経済を完全に反映しているわけではない。例えば、S&P500の企業収益は、アメリカ国内では50%しかあげておらず、残りの収益は海外であげている。

それでも、投資家は、その国(アメリカ)の株式マーケットにより多くの価値を確信しているのかもしれない。何故ならば、その国のファンダメンタルズがいいからである。現在のアメリカ株は、1980年代に西側の価値観の通用しなかった日本株ほど割高ではない。しかし、アメリカ株のEPRは21倍であり、ヨーロッパの18倍、日本の17倍、エマージング株の14倍に比べて割高である。株式サイクル勘案後でこのアメリカ株の割高さは、1920年代や、1990年代のバブル期と同じ水準であり、これらの時期は、共に企業収益が過去の平均に比べてGDP対比で高かった時期である。

現在も同様である。現在のアメリカは、世界の他の国々に比べて、単純に人口が増加するという理由だけでなく、より繁栄するかもしれない。またIT巨人は1980年代の日本の多国籍企業と違って他社との競争に曝されることがないかもしれない。何故ならば、彼らは自身の持つネット ワーク効果によって競合しない、あるいは、その分野で独占しているからである。また、収益は通常の貿易とは関係のない国に素早く持ち運びすることができ、その資本コストは低く、しかもビジネスそのものも持ち運びできる(どこでもできる)。

それにも拘わらず、MSCIインデックスに投資する事は、次の3つの事を示唆している。一つ目はアメリカ市場の重要性に投資する事であり、2つ目はアメリカ企業によってなされた価値に投資する事であり、そして3つ目はアメリカのGDPに対する企業収益に投資することになる(MSCIのグローバル インデックスに投資すると言っても、結局は、割高なアメリカ株に投資していることと同じである)。つまりこのインデックス ファンドを買う事は、(手数料が安くても)価格の低いオプションを買うことにはならないことを心にとどめておくべきである。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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