プロが語る世界情勢・政治・経済金融の最前線!

The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2017/03/03 05:23  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

ギリシャ、あれから7年


おはようございます。

先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

ギリシャに対して最初の支援が行われたのは2010年、その後、間をおかずに2012年に追加の支援がなされ、2015年にはギリシャがユーロ離脱の危機に直面しながらも、Alexis Tsipras首相は財政削減を条件に3度目の追加支援にこぎつけた。 そして、今、再びギリシャを巡って災い(財政危機)が覆い始めている。

今回に危機の背景には、2つの債権者(ESM: European Stability Mechanism)とIMFとの支援に対する対立がある。ESMの債権は2017年7月に回収されるが、これがそのまま回収されて支援を打ち切られてしまうとギリシャはデフォルトする。遅かれ早かれギリシャのユーロからの離脱は避けられそうにない。というのも、2月20日に開催されたユーロ圏蔵相会議でギリシャ支援に向けて合意の望みが消え去ったからである。これまではデフォルトの1分前に合意を取り付ける歴史の繰り返しであったが、(イギリスがユーロを離脱した今となっては)もはやギリシャのEU離脱を心配する理由は多くない。

今回の困難に至るまで、ギリシャは一時的に改善した時期があり、ECBはギリシャに対する緊急貸し出しをしなくて済む時期があった。失業率はかつての28%から23%に改善したに過ぎないが、それでも2016年には除く支払利息ベースで0.5%の財政黒字になったこともあった。

しかし、ギリシャ経済は引き続き非常に低迷している。銀行債権の約半分は不良債権化し、経済の根幹となる中小企業に対する貸し出しは殆どない。にもかかわらずビジネスのルールや税制は非常にわかりづらく、しかも流動的である(変更ばかりされている)。ギリシャの最も大きな問題は、全ては非効率で不公平な政治の結果によるものである。 例えば、消費税などの限界税率を引き上げる一方で免税項目が増加する。ギリシャでは脱税を行うやり方(レシピ)が出回っている。いまだに、ギリシャでは受け取り賃金の半分以上が所得税から免除されている。 新しく年金を受け取る人の年金額は退職前の81%であり、ドイツの43%に比べても格段に多い。

こうした事に反発を強めているのがもう一つの債権者IMFである。ドイツやオランダはESMのギリシャに対する政策を信用しておらず、彼らはIMFによる救済を期待しているが、IMFはギリシャの救済を躊躇っている。IMFはプライマリー バランスで3.5%の余剰を目標としているが、これではギリシャがより深刻なリセッションに陥るとギリシャ高官たちは警戒している。寧ろ、更なる財政削減を先送りして、痛みを伴わない形の財政手段を主張している。

しかし、IMF自身のルールでは、財政負担が持続維持可能でない限りは支援に参加しないことになっている。つまり、財政赤字が確実に減少し、資金調達が容易になることが条件であるが、ギリシャの財政赤字は、政治の駆け引きに毒されて(利用されて)、オランダやドイツの選挙を前に反EUの政治家が更に支援を増やすように要求している。これに対して、ESMのボスであるKlaus Regling氏は「ESMは既にギリシャの債務(国債)の3分の2を保有し、十分にギリシャを支援している」と反論している。

こうした状況は、実に茶番である。何故なら、そうこうしている内に、ESMの支援の償還が7月に来るからである。本格的にこれまでのESMの支援をIMFに移行するかどうかの議論をすべきである。その為に、ギリシャは2018年以降、年金を減額し、免税対象を減らすべきである。ヨーロッパの債権者(EUやECB)は、域内の金利を出来るだけ低く抑え込み、一方で、IMFはギリシャに対してプライマリー バランスの余剰をより高めるべきである。

しかし、全ては間違った方向に行く可能性がある。Tsipras氏はドナルド トランプ大統領の下、アメリカによって設立されたIMFが支援を放棄する事を待っている節がある。その結果、ギリシャ経済は更に脆弱なものになる可能性がある。ドイツやフランスの政治的な混乱がギリシャ救済合意をより困難なものにする可能性がある。結果として、ギリシャに見る長く続くリスクは再び奈落の底に落ちる。もう、そうなってしまえば誰も得をしない。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
現在有料版にはお申し込みいただけませんのでご了承ください。

当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。

コメントを書く

* が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。