2017/02/14 05:20 | 昨日の出来事から | コメント(1)
投資家がバブルを認識するのは容易なことではない
今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
バブルは、歴史に「面白い現象」をもたらす。オランダのチューリップ バブルで球根1個の価値が地方の一軒の家以上の値段を付け、あるいはとてつもなく有利な状態で値段が推移している話(大儲けしている話)に対して反論できる人はいない。 そして、また、バブルが何であるかを知っている人もいない。
経済学者は、長きにわたりバブルを発見できるかどうか、あるいは2007~2008年の危機にように、バブルが非常に大きな損害になる前にそれを止めることが出来るかどうか議論してきた。しかし、起きてしまってから指摘するのは容易であるが、その逆は難しい。チューリップ バブルのように投機家にとっては契約書に書かれた曖昧な言葉によって引き起こされたならば猶更である。ましてや僅かな損失でマーケットから離れるのは至難の業である。
多くの投資家にとって、より重要な疑問は、バブルの飲み込まれないように避ける事が可能かどうか、つまり、2000年~2002年のITバブル後の暴落のようにNASDAQが80%も下落する苦しみを経験しないように出来るかどうかである。これについてはCFA Institute ResearchとCambridge Judge Business Schoolの2つのレポートの中で、「バブルのタイミング(認識)をどう判断する事は非常に困難である」と述べている。
始めに、Yale School of Management のWilliam Goetzmann氏は1900年以降の21の株市場の歴史を調べた。彼は市場価値が2倍以上になり、その後、価格が50%下落する現象をバブルと定義した。その中の72のバブルのケースにおいて、1年で2倍になるのは僅かに2%に過ぎなかった。 そして6つのケースでは2年に亘り上昇し、その後、50%以上下落した(1976~1977年のアルゼンチン、1923~1924年のオーストリア、そして1933~1934年のポーランドである)。更に、これらの市場は、その後5年に亘り、更に半分になるのではなく、逆に2倍以上上昇した。
3年以上に亘りバブルになるケースは多くあり、全体の14%を占めている。そして、これらは、その後、半分程度まで下落し、 20ケースでそれ以上下落したのは僅かである。また、残りの10%はバブル崩壊後の5年で価格は半分に下落している。 しかし、こうしたケースの5分の1は、その後、再び価格が2倍に上昇している。 このように、マーケットの急上昇は「売りシグナル」ではなく、「買いシグナル」となる。 故に、投資家が相場のピークで市場から抜けだすことが非常に困難なのである(相場が上昇している時には売れない)。
読者の中には、Goetzmann氏の定義がバブルの定義として正しいかどうか疑問を持つかもそれない。彼は、個別の企業ではなく、市場全体に注目している。ファンド マネージメント グループでるGMOは、(バブルについて)違った概念を持っている。即ち、市場価格が、長期的な価格の標準偏差に対して2σまで上昇した時、バブルと定義している。
別のアプローチではもっとファンダメンタルズに注目している。資産価値は、将来のキャッシュ フローを現在価値で割り引いたものである。理論的には、バブルは資産の将来に対する見通しが突然改善する事を意味するが、これらは合理的に説明できるものでなければならない。これに対する一つのアプローチとして、(しばしばこのコーナーでも使っているが)景気循環勘案後のPER(Price-earning ratio)、あるいはCAPE(過去10年間の収益の平均値)を使って合理的に説明できる。 これによれば1929年や2000年は、非常に高い数字となり、これは世界的なバブルに一致する。
AQR Capital management のAntti Ilmanenn氏の書いた別の本によれば、CAPE ratioを市場のタイミング(バブルのタイミング)とみなしている。これはかなり頼もしいシグナルであり、過去10年間以上に亘り、年13%のリターンのあるアメリカの安い株を買い、将来の価格の上昇を待つ。 しかし、これには問題がある。と言うのも、これを見極める為には、過去からのヒストリカル データすべてが手元になければならない。 つまり1930年代において、20世紀で最も安い価格で株を買う為には20世紀全てのデータがその時点(1930年代)で必要となる(そんなことは不可能)。 また、このRatioは短期売買には使えない。更には、1990年代はCAPEでは非常に割高であったが、実際には、その時期に株式市場はピークを付けなかった。
結局の処、バブルを株価が2倍になることと定義づけようが、過去のデータから割高から定義づけようが、どちらもバブルのピークで売り抜けることが出来ない。だからと言ってこれらに失望すべきではない。 と言うのも、もしバブルのピークのタイミングが簡単に見つかるならば、そもそもバブルのような大きな価格の変動そのものが起きるはずがないからである。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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One comment on “投資家がバブルを認識するのは容易なことではない”
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FRBの議長が逃げに使った表現の題名ですが、
ピークがいつかはわからないであって、バブルはプロにはわかってるでしょ?
最近の英誌はかっての鋭さがないですね