プロが語る世界情勢・政治・経済金融の最前線!

The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2017/02/09 05:31  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

トルコ、 それは大型爆弾?!


おはようございます。

今週号の英誌エコノミストに掲題と称した記事がありましたのでご紹介したいと思います。

賢明な投資家は、もし、自分が保有している通貨に大きなロスをしなければどうやって儲けるかを良く知っている(高金利通貨を保有し、その金利差で収益を得る)。 しかし、最近になって、こうした取引は、エマージングマーケットから姿を消そうとしている。 今までとは状況が変わってきたのである。そこには、2つの大きな要因が影響している。

一つ目は、FRBがこれまでの超金融緩和政策を終了させたことである。 それまでの超金融緩和政策によって、いい経済の国も悪い国の経済を下支えしてきたが、その影響がなくなりつつある。その結果、悪い国の経済、特にエマージング国については、投資家の観点から如何にパフォーマンスがよく見えるか、マクロ経済から生産性に至るまでより厳しい規律が求められている。2つ目は、アメリカの貿易政策が経済的ナショナリズム(保護貿易主義)に転換した為、エマージング国は、それぞれの国の立地条件や、貿易対象物によって大きくバラつきが出てきた。その結果、それぞれのエマージング国がうまくいくか、いかないかは、近年にない程、その差が大きくなっている。

まず初めにマクロ経済をみると、既にエマージング国のばらつきが大きくなってきている。トルコはその象徴的な一つである。 トルコの財政規律はしっかりしているが、他の要因が悪く、特に、巨額の貿易赤字の多くは市場からの資金調達によって賄われており、しかも多くの外貨建て債務(トルコ リラ以外の通貨に取る資金調達)を保有している。 加えて高インフレにトルコは苦しんでいるが、トルコ中銀は、エルドアン大統領が「トルコのインフレはトルコ中銀の高金利政策のせいである」と言っている為に、なかなかこれに取り組めない

これとは別に、1年ちょっと前まではトルコと同じように扱われてきた南アフリカがある。ズマ大統領は、南アフリカの経済の要である財務省を破壊しようとしたが失敗した。南アフリカ中銀は、景気が後退して南アランド安の中、目標とするインフレ率に固執して経済が混乱している。 一方で、ブラジルは厳しい景気後退にもかかわらず、ブラジル中銀はインフレの目標である4.5%までインフレを引き下げることに専念している。その結果、経済の混乱の根源であった緩み切った財政に歯止めがかかり始め、現行の政策金利13%に対して金融緩和の余地が出てきた。また、ロシア中銀やインド中銀も金融政策をかなり引き締めている。その結果、インフレ率は低下し、金融緩和の余地が出てきている。

究極的には、その国の成功のカギは生産性の向上にかかっている。先進国の景気低迷は、エマージング国にとって反面教師である。鉱山資源中心の経済にとって、資源ブームは他産業の設備投資を遅らせることに要注意である。輸出依存型の経済では、かなりの効率を必要とする(国際競争が激しいため)。どの国でも一人当たりの生産性を継続的に引き上げるのは至難の業である。従って、これを回避するために内需拡大を図って無駄なビルを建てることになる(不動産バブル)。その中にあって、世界的な景気サイクルにうまく対応しながら生産性を拡大させている国々がある。 それはインドであり、インドネシアである。最近のレポートでは、他にうまくいっている小さな国として、ペルーであり、フィリピンやウルグアイがそうである。

アメリカの経済ナショナリズムによって、エマージング国の既存の貿易ルートを試されることが強まっている。今後、エマージング国にとってアメリカに自国商品を供給できるかどうかが成功のカギとなる。メキシコは、今、アメリカの保護貿易主義のターゲットとなっている。また、シンガポールや韓国、台湾もかつてはアメリカに商品供給する事で世界経済の中で生き残ってきた。 しかし、今後、貿易戦争が起これば、こうした輸出依存型の国々は困難に直面するであろう。

一方で、インドは、先進国と発展途上国の間で構築された製造業のサプライ チェーンから置き忘れられてきた。しかし、今後、反貿易主義が台頭してもインドには国内需要を十分にカバーできる12.5億人もの国民の力がある。ブラジルも、またアメリカとの貿易関係はそれほど強くなく、その一方で南アメリカではかなりの影響力があり、しかも大きな国内需要を持っている。

新しい時代が到来しても、先進国の金融政策の影響力がなくなるわけではない。 特に、ドルで資金を調達しているエマージング国にとっては、米ドルの価値が常に関心事となる。同様に経済政策や貿易の脆弱性が問題となる。例えば、トルコは、アメリカやヨーロッパよりも東ヨーロッパにおいて商売の優位性を持ちながら、その一方で、マクロ的には経済後退に直面している。

最後に英誌エコノミストは「こうしたエマージングの国々が繁栄するあるいは、衰退するかは事前に運命づけられたものではない。 しかし、今、トルコから出てきている大型爆弾の類は、今までにないものになるであろう」と、トルコの現状に警戒感を示しています。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
現在有料版にはお申し込みいただけませんのでご了承ください。

当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。

コメントを書く

* が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。