2016/12/22 04:42 | 昨日の出来事から | コメント(1)
為替市場における負け戦?!
今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事(サブ タイトル: 「何故、通貨安が、時として経済成長を阻害するのか?」)がありましたのでご紹介したいと思います。
2010年9月ブラジルの財務大臣Guido Mantega氏は「国際的な通貨戦争が勃発した」と警告した。彼の不満は、先進国の通貨安政策によって自国の輸出を有利にした為、(エマージング国のである)自国の資金調達が困難になった為であった。 当時、アメリカのFRBは、QEII(量的緩和第二弾)を打ち出して通貨安を推し進めた。 これに対して敗者となったのは、ブラジルのようなエマージング国であり、おかげでブラジル レアルが急上昇し、1ドル=1.7レアルまで上昇した。
最近は1ドル=3.4レアルまで下落し、自国通貨が安くなったからと言って、逆に勝利宣言はしていない。彼らにとって通貨安はありがたいものではないからである。国際フォーラムの中で、BIS(国際決済銀行)のJonathan Kearn 氏とNikhil Patel氏は、「時として、通貨高は経済の下支え要因となり、逆に通貨安は経済にとって阻害要因となる」事がわかったと述べている。彼らは44か国の経済と通貨を取り上げ(その内、半分はエマージング国)、輸出入における為替レートの経済に対する効果と、物価及び外国からの資金調達の影響を調べた。
彼らによると、GDPの変化と為替による外国からの資金調達の間には、反比例の関係があることわかった。言い換えると、為替が弱いとネットの貿易はGDPにプラスに働き、その一方で、為替が強いとネットの貿易はGDPに対してマイナスに働く(これは教科書通り)。 しかし、同時海外からの資金調達に関して、為替は貿易とは反対の力が働く。先進国にとっては、貿易による効果が、資金調達能力のマイナス要因を勝る。しかし、エマージング国22か国中13か国については海外からの資金調達要因の方が大きく働くために、先進国と同様の動きにはならない。こうした国では、通貨高が経済を押し上げ、逆に通貨安では経済の足を引っ張っている。
この考えは、世界の金融サイクルの影響とも強く結びついている。通貨高になれば、先進国の資金がエマージング国に流れて株や債券の価格が上昇し、逆に通貨安になれば、こうした資金は自国に還流して株や債券が売られる。こうし流れは、先進国の中央銀行の動き、特にFRBの動向に左右され、アメリカ国外のビジネスや海外の政府に大きな影響を与える。 このように、先進国の政策金利は、エマージング国のリスクと直結している。Fedが政策金利を引き下げた時には、ドルの調達コストを下げるだけでなく、世界中の資産価格を押し上げ、それがまた担保価値を高めて更に資金を調達しやすくする。
つい数日前、あの通貨戦争を宣告したMantega氏が、ブラジル国有の石油会社PetrobrasのUSD67bnの資金調達に成功した事を祝福した(最近のブラジル レアル安にも関わらず、多額の資金調達に成功した為)。
今回、調査をしたBISの二人は、エマージング国の資金調達は、自国内の調達よりも外国からの調達に頼っている為、その可否は海外の投資家次第であると述べている(今回の調達は、石油資源であったことと、レアル安であったことから投資家は買った)。 これが、エマージング マーケット国の経済の実態である。
最後に英誌エコノミストは「通貨安は必ずしも低迷する経済を刺激するとは限らない。 また、為替レートは金融危機などのショックを吸収する役割を常に持っているわけではない。寧ろ、為替は、バブルとその崩壊をより増大させる働きがあるかもしれない」と述べています。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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One comment on “為替市場における負け戦?!”
パードゥン にコメントする コメントをキャンセル
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ドルが機軸通貨のために他の国とは手段が異なり事に
なりますが、為替操作をしている事は同じ
イギリスは機軸通貨国だったから、この原理を理解して
いるが、アメリカへの遠慮なのか、婉曲な書きブリですね
かってのイギリス ジャーナリズムはそん遠慮はなかったけど
変質してしまいましたね(笑)
金本位制に戻すしかないでしょう(笑)