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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2009/10/04 15:16  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

世界の失業給付金の比較をすると、、、


おはようございます。

先週号の経済雑誌エコノミストに世界の失業給付金の比較がありましたので、ご紹介します。 特に、注目すべきは、失業して1年目の給付金と5年後の給付金を比較していることです。

まず、失業して1年後にどれくらい給付されるかの比較です。
一番多いのは、ノルウエーで失業する前の72%です。 次いでスペイン、フランス、スエーデン、ベルギー、ドイツと続き、これらの国は、総じて65%近い給付金が支給されます。 主要先進国の平均は55%程度で、カナダがこのあたりに位置しています。
日本は45%程度、オーストラリアが40%程度、そしてイタリア、韓国、イギリスと続いて最後にアメリカの30%弱となっています。

次に、失業して5年経って、まだ失業している人に対する給付金の比較です。
一番多いのは、やはりノルエーで失業前の所得の72%給付されています(失業1年後の給付金と変わりません)。 ついで、ベルギーの63%、オーストラリアの42%が際立っています。 そしてドイツの36%、イギリスの28%と続き、残りの国は10%程度で、これでは生活を維持できません。アメリカ、韓国、イタリア、
トルコに至っては支給額ゼロですし、日本は3%とゼロに等しい状態です。

1990年代半ばまでの日本では、失業率が3%程度と、ほぼ完全雇用が確保されており、 失業給付金は、あくまでも次の仕事か見つかるまでの一時的な支給であり、また、実際、比較的短期間で次の仕事が見つけることができた時代でした。(従って、1年後まで多く支給する必要もありませんでしたし、5年後まで仕事が見つからない状態を考える必要はほとんどありませんでした)。

しかし、 現在の日本は、表向きの失業率こそ5%程度ですが、政府の雇用助成金で潜在失業者の雇用が維持されていることを考慮すれば、実際の数字は大きくなり、更には、非正規雇用者の位置づけや考え方によっては、実質的な失業者の数は欧米の10%近くの失業率と変わらないとの分析もあります。

雇用実態が変わってしまっているのに、完全雇用の頃の失業給付金の形態を踏襲し、その場しのぎ的に増やしても、所詮、無理があります。
今後は、社会の中に、5−10%程度の失業者が、長期にわたり常に存在することを前提とした失業給付金の仕組みに変更すべき時期に来ているように思います。

個人的には、税金は今のままで、ノルエーのような社会保障が一番いいのですが、残念ながら、それはあり得ません。(ノルエーは、一方では、世界で最も税金の高い国の一つです)。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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