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2016/08/25 05:50  | 昨日の出来事から |  コメント(1)

業績不振にあえぐヨーロッパの銀行


おはようございます。

先々週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

7月29日にヨーロッパの主要銀行のストレス テストの結果が公表されたものの、その内容はヨーロッパの銀行に対する投資家の不信感を払拭するものではなかった。特に、イタリアの銀行に関しては、益々、不信感を募らせる結果となっている。 ストレス テストの結果が公表された後の8月1日にはEuro Stoxx banks Indexが3%下落し、その後も5営業日連続で下落した。

とはいえ、2014年に大掛かりに行われたストレス テストの結果に比べれば、まだ健全であり、fully-loadedの自己資本比率は12.6%あり、最悪のシナリオにおいても自己資本比率は9.2%確保している。また、2014年に最も低かったアイルランドの自己資本比率5.2%を下回った国も今の処はない。しかし、ギリシャ、ポルトガル、キプロスの国々に関しては、景気の悪化によってこれらの国の銀行の自己資本は今後、更に悪化するする可能性を持っている。

そして、それ以上に市場参加者が懸念しているのはイタリアの銀行である。 その中にあって最悪なのはイタリアで3番目に大きい銀行Monte dei Paschiのストレス テストが自己資本比率-2.4%となり、最悪のシナリオでは倒産する事がわかった。そこで、同銀行はストレス テストの公表2~3時間前に、5bnユーロの増資や資産売却を含めた銀行再建計画を慌てて発表する始末であった。それでも同行の銀行株価は、発表翌日の8月1日に16%急落し、投資家の不安感を払拭することは出来なかった。

また、イタリアで2番目に酷い銀行はUniCreditであるが、その自己資本比率は7.6%あり、Monte dei Paschiほど悪くない。 しかし、2016年3月以降、資本のバッファー(余力)は、10.5%から10.3%に低下し、今後、更に低下する事が懸念されている。 モルガン スタンレーのアナリストは、同行は6bnユーロの増資が必要と考えており、今回のストレス テストの発表後には同行の株価は17,8%も急落し、経営者は優良資産である子会社のクレジット会社の売却を発表さざるを得なかった。

こうしたイタリアの銀行に対する懸念は他の銀行にも広まり、その中の一つBanco Popolareがある。そして最悪の銀行Monte dei Paschiのストレス テストでは、同行の不良債権評価方法が、他のヨーロッパの銀行不労債券評価方法よりも20%程度甘い評価に留まっており、これと同様の評価方法を他のイタリアの銀行に当てはめられているとすると、イタリア全体では18bnユーロの追加増資が必要との試算もある。

こうした事態はイタリアの銀行に留まらない。 アイルランドのAllied Irish Bankの自己資本は4.3%であり、アイルランド政府は2017年には同行の自己資本を25%まで引き上げる計画である。また、オーストラリアの銀行Raiffeisenの自己資本比率は6.1%であり、ドイツの大手銀行CommerzbankやDeutsche bank もおかれている状況は同じである。

投資家は、ヨーロッパの銀行のストレス テストの結果以上に、これまで続いてきた長引く病(不良債権の増加に歯止めがかからない病)を懸念している。そして、より根本的な問題としては、ヨーロッパの銀行の収益性を心配しているのである。銀行は、その銀行が経営しているそれぞれの国の景気と強く結びついている。 ヨーロッパ経済が低成長であり続ける限り、ヨーロッパの銀行の収益が回復すると期待すべきではない。

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One comment on “業績不振にあえぐヨーロッパの銀行
  1. パードゥン より
    日本銀行経営者は資本注入嫌いましたが

     ヨーロッパでも同じなのですか?
    日本と異なり、外人経営層は充分な給与をもらっているので
    銀行止めても生活に問題ないと思いますが何か問題でも
     ユーロは高すぎて困ってるわけで、注入で下がれば
    景気が良くなるでしょうに?

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