2016/03/24 05:19 | 昨日の出来事から | コメント(0)
低賃金は、低い生産性が原因であり、また、その結果である?!
今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
先進国の労働生産性の伸び率は、1960年台移行40年以上に亘り、低下の一途を辿っている(ただし2000年に入ってから数年は除く)。1970年頃には、日本の労働生産性の伸び率は9%近くありましたが、現在は1%程度です。 また、ドイツも当時は5%程度でしたが、現在はやはり1%程度です。アメリカは当時3%でしたが、現在はやはり1%程度です。 それは、何も先進国だけに留まりません。 メキシコやトルコで同様の事が言えます。
では、労働生産性が趨勢的に低下しているのは何故であろうか。 この問いについて3つのことが考えられる。
一つ目はニュー ウェスタン大学のRobert Gordon教授が唱える「19世紀や20世紀に起きた電気や、これに伴う電化製品、あるいは自動車の発明とその生産は、現在のコンピューターやソフト ウエアの生産のインパクト以上に大きかった」とする考え方です。この考え方には、やや一貫性が欠けるところがあり、1990年台に台頭した人工知能やコンピューター生産は大きく生産性を向上させ、2000年台に入って一時的な生産性の向上に寄与しているからである。
2つ目の考え方は、生産性の測定に問題があって、現在の生産性が正しく捕捉できていないという考え方である。例えば、コンピューターやインターネット、スマート フォンの普及によって、人々は大量の情報を得ることができ、生活の質は一気に向上したが、その多くが無料で享受することができる為に、これを生産性に反映することができない(GDPにカウントできない)。 しかし、これに対して、シカゴ大学のChad Syverson教授は、その無料のコストを試算し、こうした無料による生産性の損失は、2004年のアメリカでは2.7兆ドル(国民一人当たり8,400ドル)で、これをもって趨勢的な生産性の低下の原因にすることは出来ないと指摘している。
3つ目の考え方は、生産性の低い街や、生産性の低い会社から労働者が移動した為に、労働者間の競争が激化した為に、賃金が低く押さえ込まれた。 また、この15年間において、アメリカでの収益性の高い企業は、新規の事業を展開するのではなく、自分の得意とする本業に特化することで他の企業との競争に打ち勝ってきた(生産を増やすにではなく、収益重視の経営をした)ことが、生産性の増大には寄与しなかったという考え方である。また、政府や地方政府による様々な規制によって、生産性の向上を阻害した部分もある。例えば、シカゴ大学の試算によれば、サンフランシスコ近郊の建築制限規制によって、労働者はより安い生活環境と雇用を増えることで生産性が500%上昇するが、その一方でその周辺の町は、悉く廃墟になってしまうのである。
そして、今、経済学者が注目しているのは、「低賃金と低い生産性は同一の方向性を持っているのか?」という疑問が起きている(つまり、賃金の低い人は生産性が低いとこれまで考えられてきたが、この考えは本当に正しいか?と言う疑問です)。 と言うのも、今、企業では、政府からの圧力もあって、本来であれば、ロボットやコンピューターで代用できる仕事を低い賃金で労働者にさせている部分があり、その一方で、安い賃金で労働者を確保で来るのであれば、高価なロボットを買わなくても済む業務も多くある(労働者とロボットやコンピューターの間で裁定が働いている)。
以上から、英誌エコノミストは、「結局のところ、政府は、企業に労働者を多く雇用してもらいたいが故に、労働者の賃金を引き上げ、かつ企業の生産性を上げる(多く儲けて法人税を払う)ことを要求できない」と締めくくっています(これって、20年以上デフレに苦しむ東洋の日出る国の現政権の事?!)。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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