2015/12/10 04:15 | 昨日の出来事から | コメント(0)
地球温暖化と株価
今週号の英誌エコノミストに地球温暖化に関連して、二酸化炭素排出の多い企業とそうでない企業の株価について記事がありましたのでご紹介したいと思います。
先々週にパリで始まったCOP21は、ご存知のようにかつて離脱したアメリカや今回初めて参加する中国、更には、これまでは先進国の責任を訴えるばかりで議論の席に付こうとしなかった発展途上国までが参加し、延べ150か国以上によるこれまでのない大規模で地球温暖化に関する議論がなされています。
これまでは二酸化炭素排出する国とそうでない国、あるいは、二酸化炭素排出する企業とそうでない企業の間には、二酸化炭素排出削減にコストをかけるよりも自らの国益や企業収益を優先する国や企業が得をする時代が長く続いてきました。
しかし、ここにきてこうした動きに大きな変化の兆しが出てきています。特に、最近の株価においても、二酸化炭素排出削減に積極的な企業とそうでない企業に差が出始めいます。
例えば、大手格付け機関Moody‘sは、世界の企業が発行している債券を4つのカテゴリーに分類し、まず、(1)石炭採掘や石炭搬出に関わる企業のグループで、これらを「気候変動リスクを即座に上昇させる」企業債券と分類し、その発行残高はUSD512bn(日本円で約6250億円)あるとしています。次に2番目の分類として、ガソリンを使って車を走らせる自動車メーカーや、石油精製会社など8つの産業が発行する債券があり、その発行残高はUSD1.5兆ドル(日本円で約183兆円)あり、これらは「気候変動リスクを増加させる」企業の債券としています。 そして、その次の分類として、「5年もしくは中期的に気候変動リスクを増加させる」企業のグループがあり、これらの企業の発行する債券は7兆ドル(日本円で約850兆円)としています。 そして、最後に、気候変動リスクに対する影響の少ない企業のグループがあり、これらの企業が発行している債券の残高は7兆ドル(日本円で約850兆円)としています。
読者の皆様は、「そんな分類をして何の意味があるのか?」と思われるかもそれませんが、ドイツの大手保険会社アリアンツのように、今後は、気候変動リスクを増大させている企業(石炭関連)の株をポートフォリオとして買わない、あるいはこれらの企業が発行する債券を買わない方針を打ち出しています。
次の動きとしては、同じ気候変動リスクを増大させる企業でも、そのリスクを減らそうとしない企業の株や債券を売り、こうしたリスクを減らそうとしている企業の株や債券を買い動きが出始めています(運用会社Black Rock等)。
そして、最後に気候変動リスクを減らすことに貢献している企業の債券や株式をポートフォリオに積極的に組み入れる動きです(LEDを生産している企業など)。 ゴールドマン サックスの試算によれば、2010年におけるすべての電球に対するLEDのシェアは12%でしたが、2015年には28%になり、2025年には95%までシェアが拡大すると予測されています。
更に、気候変動リスクを増大させる企業のグループの株価と気候変動リスクを下げる企業のグループの株価の動向を観てみますと、2005年ごろまでは両者の株価動向に変化はなく、中国などのエマージング国が好調な時期はむしろ気候変動リスクを増大させる企業のグループがその収益の高さから、気候変動リスクを減少させる企業の株価を上回っていましたが、ここにきて気候変動リスクを増大させる企業の株価は下落傾向になり、逆に気候変動リスクを減少させる企業の株価が上昇し、今年に入って初めて逆転しました。
今や地球温暖化問題は、政治的な問題でもなければ、地球温暖化による気候変動で困っている国や人も問題でもありません。これは私たち投機家にも直接関わる問題であり、そのことを日々の売買に反映させる時代になってきているようです。
だからこそ、今、オーストラリアでは鉱山関連産業依存一辺倒の経済体質からの脱却を急ごうとしています。そういえば、以前、オーストラリアでは、「地球温暖化問題は、学者たちが作ったデマだ!」とウソぶく政治家がいましたが、今、その政治家は、自らが経営するニッケル採掘会社の経営危機に陥っています。
尚、本日は、これから日本へ移動する為、いただいたコメントやご質問のお返事が遅れます事をご了承願います。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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