2015/11/20 05:23 | 昨日の出来事から | コメント(0)
異常なほど普通?!
今週号の英誌エコノミストに掲題と称して現在の原油価格に関する記事がありましたのでご紹介したいともいます。
読者の皆様もご存知のように、原油価格の下落傾向が続いています。 これまでの世界の原油価格は1960年台に形成されたOPECのカルテルによって決定されてきましたが、最近の原油価格はOPECのカルテル動向と言うよりも、むしろ世界の原油の需給によって決定される傾向が非常に強くなってきています(原油価格決定プロセスの正常化)。
コロンビア大学の世界エネルギー政策 センターのディレクター Jason Bordoff氏は「原油価格市場は、まるで通常のマーケットのような振る舞いをしている。 原油価格はOPECカルテル内の話し合いよりもむしろ、より需要と供給に依存して価格が決まっており、原油は他の資源の一つにすぎなくなってきている」とコメントしている。
例えば、供給サイドを見てみると、この1年の間にOPEC内では原油価格を引き上げようとする動きがあったが、サウジアラビアはこれを拒否した。その背景には、OPEC内で価格を引き上げても、アメリカで活発化しているシェール オイル生産による価格競争に勝てないと判断したからである。それ以来、原油価格は低価格競争に突入し、ロシアを始め、中国に原油を売っていたOPECメンバーは打撃を受けた。 シティ バンウのSeth Kleiman氏は、「最近では、ロシアの石油精製は自国からスエーデンやポーランドを経由してヨーロッパに送られている」とコメントし、割高なロシア内での石油精製からより安い場所での石油精製にシフトしている。
そして、今年に入ってからは、かつてのような高い原油価格であれば採算に乗る油田開発プロジェクトの少なくとも1500億ドル以上がキャンセルとなり、来年もこうしたキャンセルが続く。 その背景には、当面、原油価格が上昇に転じる見込みがない上に、既存の設備で十分供給できるからである。
また、原油でよく言われる地政学的な緊張に関しても、今年に関してはほとんどなく、OPEC内でも生産の削減がほとんどなかった。このことの意味するところは、例えば、イエメンでサウジアラビアとイランの代理戦争が起きて原油価格が上昇したとしても、他のOPECメンバーが割り当て上限を違反して増産する為、原油価格の上昇につながらない。また、ブラジルの原油関連施設で働く労働者がストライキをしても、あるいはイラクで原油設備投資を削減しても、(今や借金だらけの)サウジが(原油を担保に)債券を発行する為に原油価格は上昇しない。
次に、需要サイドを見てみると、最近の原油価格の下落傾向によって需要が多少増加することが見込まれる。 パリに本部を置くエネルギー消費国で組織されているIEA(International Energy Agency)によれば、今後は、アメリカや中国でSUVなどのガソリンを比較的多く使う自動車の需要が伸びることが予想されるが、全体としては1.5%の増加に伸びに留まり、過去10年間の平均である0.9%の伸びを僅かに上回るだけである。
そして、興味深いことに、発展途上国の一人当たりの原油需要も減少している。 特に中国においては、生産効率がいいわけでもなければ、原油の消費を減らすインセンティブが働いていないにも関わらず原油の需要が減少している。市場関係者は、これを(経済学的によく言われる)「供給がピークを付けた」に対抗して「需要がピークを付けた」と表現し、今後は長期に亘り、需要の減少が原油価格を低迷させると分析している。
また、IEAが11月10日に発表した「世界のエネルギー見通し」では、「2020年には、需要が伸び悩む中、供給も減少して、原油価格は1バレル当たり80ドルになるであろう」としている。 と同時に別のシナリオとしては「2020年にかけて50~60ドルのレンジで推移するであろう」とも述べている。 その背景として、アメリカのシェール オイルの開発コストが技術革新により下がっており、かつては現在の原油価格では採算に乗らなかった油田でも採算に乗り始め、アメリカの原油生産高が上昇し始めているからである。
最後に英誌エコノミストは「このようにシェール オイルの集団は、今や、一大勢力となり、サウジアラビアと対峙している。 サウジアラビアもこのことはよくわかっており、いまだに、この両者の戦いの決着はついていない」と述べています。
私たちとしては、両者のバトルが長く続いて、より安いガソリンと灯油を享受できるといいのですが、、、、
ですが、自分にとって都合のいいことが長く続かないのも歴史の教えるところでもあります。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
現在有料版にはお申し込みいただけませんのでご了承ください。
当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。
いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。