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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2015/10/27 05:34  | 昨日の出来事から |  コメント(1)

アメリカは、ポンドの準備通貨としての没落から何を学ぶべきか


おはようございます。

3週間ほど前の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

(抄訳)
英国が、かつて保持していた世界に卓越したパワーを失ったのはいつか? それは、第1次世界大戦もしくは第2世界大戦頃にイギリスの耄碌(もうろく)が始まった。少なくともイギリスが1956年のスエズ動乱に受けた屈辱の時期までには、アメリカの覇権は明白となった。 しかし、アメリカ ドルが世界の主要準備通貨としてイギリス ポンドからその地位を剥奪した最も明確な転機は現在に至っても未だにはっきりしていない。

そして、現在、過去数十年に亘り台頭してきた中国や人民元の手によって、アメリカと米ドル(以下ドル)がイギリスやポンドと同様の運命をたどる懸念が生じている。 中国は、昨年、購買力ベースで世界最大の経済規模となり、また、中国政府が貿易で人民元をより利用する努力をしたことにより、世界の準備通貨の移行のエネルギーは溜まってきている。こうした事が、経済歴史家に「ドルと人民元の間にどのような差し迫った確執が内包されているか」といった観点から、ポンド凋落の歴史を改めて検討させる事を促している。以下のリサーチでは、大きく3つの分野について検討がなされている。 一つ目は、通貨がどのようにして準備通貨の地位を獲得するのか、次に2つの通貨が準備通貨となり得るのか、そして最後に無能な政治家がいかに通貨の凋落を加速させるかについて検討する。

かつて、ポンドは19世紀後半において世界の金融市場を支配していた。世界の60%以上の貿易と公的機関が発行する債権の90%がポンドでなされていた。 その絶頂期には、ある意味、ポンドは世界の経済に対して完全にその影響力を行使し、大英帝国は約世界の4分の1の地域とそこに住む人々を網羅していたのである。 しかし、最近、UC バークレーのBarry Eichengreen氏とその他の大学による一連の研究によれば、イギリスのこうした事だけが、通貨の覇権のための条件ではないと指摘している。 つまり、アメリカは1880年代には既にイギリスの経済規模を越えたいたにもかかわらず、ドルは、第1次世界大戦終了後までは、外国では殆ど使われることがなかった。

Eichengreen氏はその通貨の金融市場における取引規模、安定性、そして流動性が準備通貨として最も重要な決定要因であると指摘している。 ポンドは1820年以来、金と自由に交換できた為に、その通貨価値に信頼があった。そして、ポンドは世界で最大かつ最も安定した金融センターであるロンドン市場にアクセス出来る通貨でもあった。更には、もう一人の経済歴史家Charles Kindkeberger氏によれば、世界におけるポンドの立場は、他の国際協力によって支えされていたと指摘している。 即ち、国際経済の経常収支の黒字や赤字の安定化を助け、ヨーロッパの各国中央銀行の金融政策や中央銀行同士のローンに協力していたのである。

その結果として、通貨覇権の移行は、1913年に米連邦準備制度が設立された後、アメリカの金融市場により多くの流動性が供給され、更にはドル通貨がより安定化することによって、ようやくドルはポンドの立場にとって代わり始めたのである。 その一方で、第1世界大戦後の賠償とローンについて各国の確執の中、ポンドを支えていた国際協力が崩壊してしまった。

ここから、(人民元がドルに取って代わられることを心配する)ドル擁護者を安心させる事柄が見えてくる。 即ち、アメリカの資本市場は、中国の資本市場に比べて、とてつもなく巨大であり、更に流動性がより多くあり、また、より透明な法の規制の下にあるのです。 確かに中国政府は、1世紀前にアメリカが行ったように積極的に金融市場を発展させてきたが、その方向性は明白ではない。 つまり、人民元は完全に自由に両替できないし、当局は市場を混乱させるだけであり、中国の株式市場は不安定そのものである。

「準備通貨は、そのトップの地位に孤独である必要はない」
Eichengreen氏は、また、2つの準備通貨が長期間にわたって共存できる可能性について言及している。ドルは、第1次世界大戦後の混乱期にその覇権を獲得していったが、ポンドも第1次世界大戦と第2世界大戦の間の時期において準備通貨として十分にその役割を果たしていた時期があった。また、新しい準備通貨への道のりは一本道ではなく、事実、アメリカが1930年代に金融危機に陥った時には、ポンドがその地位を一時的に回復した時期もあった。 

経済学者たちは、単一の準備通貨を利用することによる国際貿易や投資コストの低さから、単一の準備通貨を利用することのメリットを強調する傾向があり、こうした考えは、一つの準備通貨からもう一つの準備通貨への急激な移行を促す傾向がある。 しかし、Eichengreen氏は、中央銀行や投資家は、(ポンドのように)廃れていく通貨が引き続き十分な流動性を維持している限りは、これを保有し続けると指摘している。 というのも、保有通貨の分散によって通貨危機の際には、資本損失を限定させるより大きな恩恵があるからである。

その一方で、(ポンドのように)間違った政策決定によって、準備通貨としてドルとポンドが両立する期間を短くしてしまうことも有り得る。先の2つの大戦の間において、イギリスは金融センターとしてのロンドンの衰退していく立場を対し、関税の導入やポンドをイギリスの輸出競争力を弱めるようなレートで金との交換レートを設定する等の様々な間違った手段を取ってしまった。 結果として、こうした政策は、長期間にわたってイギリスの経済成長を押し下げる非生産的なものとなり、その後も更にポンドの立場を弱めていった。 そして、第2世界大戦後の通貨切り下げと金との兌換停止によってポンドは、通貨としての信頼と安全性に致命的なダメージを受けた。

幸いにして、アメリカ議会は、左派、右派を問わず人気取りの政治家の熱狂的な支持があったとしても、直面する貿易の妨げ(中国の台頭)に対して抵抗するであろう(通貨の覇権の移行には抵抗するであろう)。 また、アメリカはドルの地位が弱まるような世界の他の国と経済と協力することに反対することも容易に想像できる。 また、今のところ、アメリカと中国はIMFや世界銀行の改革について相容れるところがない。また、アメリカは、中国のAIIB(Asian Infrastructure Investment Bank)にもぶっきらぼうに抵抗している。

第1世界大戦後の国際金融の協力体制の崩壊によって、世界の金融市場は、両大戦の間の時期は混乱を極め、非常に不安定であった。第2世界大戦後に、IMFや世界銀行が設立されたのは、こうした「あやまち」を繰り返さないためのものであった。 そして、もし、これらの2つの機関の設立そのものが、アメリカが歴史の教訓から学ばないものにことに対する象徴となれば、それは非常に皮肉なものとなるであろう。 つまり、ドルは、すぐには他の通貨に取って替わられることはないであろう。そして、(現在のドルのように)勢いのある通貨には、逆境など必要ないであろう。しかし、そうならないためにその通貨を守ろうとすることが、準備通貨としての終焉を最も早めてしまうのである。

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One comment on “アメリカは、ポンドの準備通貨としての没落から何を学ぶべきか
  1. 脱 国民洗脳なら副島隆彦の学問道場 より
    脱 国民洗脳なら副島隆彦の学問道場

    日本はアメリカの属国、つまり家来国家である! アメりカの洗脳広告代理店、電通による、テレビ、新聞、週刊誌、ラジオ等の、マスコミを使った偏向報道による、見事な国民洗脳によって、思考が停止状態にある日本人は、自分自身の脳、すなわち思考そのものを点検せよ! さらにネット洗脳システムのツイッターやフェイスブックの利用、まとめサイトには注意が必要である。 我々はハッ、と気付いて、常に注意深く、用心して、警戒し、疑いながら生きれば、騙されることはない。 すべてを疑うべきなのだ!

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