2011/04/05 05:26 | 昨日の出来事から | コメント(5)
日本の放射性物質の暫定規制値は、WHOのガイドラインの20〜30倍
昨日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会分科会は、厚生労働省が食品衛生法に基づいた食品や飲料水から摂取する放射性物質の暫定規制値を維持すべきとの所見をまとめました。 ですが、そもそものこの放射性物質の暫定規制値ですが、東日本大震災発生後の3月17日に、それまでは食品衛生法には基準がなかった為、原子力安全委員会が98年に定めた摂取制限に関する指標値を今回の暫定値に採用しています。
これは問題です。何故ならば、原子力安全委員会は、当然のこのことながら、万が一の原発事故が起きても問題にならないような緩い水準に設定しているからです。 更に日本の原子力安全委員会は、国策である原発推進の観点から物事を決めており、原子力の安全に関する中立性が保たれていません。
そこで、世界の標準的な基準となっているWHOの放射性物質のガイドラインを調べてみたところ、 WHO飲料水水質ガイドライン(2004)には、ヨウ素131、セシウム137は、それぞれ10ベクレル/リットルとなっています。 ちなみに3月17日に厚生労働省が出した暫定規制値ですが、ヨウ素131は 300ベクレル/リットル、 セシウム137は 200ベクレル/リットルとなっています。 つまり、私達の飲料水は、WHOの定めるガイドラインの20〜30倍の放射性物質までは「問題なしで安全!」とする、先進国の中でも最も放射性物質に対する規制が劣悪な国なのです。
何故、政府は「今回の暫定規制値は、WHOのガイドラインの20〜30倍である」という「現実」を国民に公表し、それを説明しないのでしょうか? そして、もし本当に安全と言い切れるならば、今回の原発事故が収束した後でも、WHOのガイドラインに合わせることなく、永遠にこの基準を貫き通せる筈です。たとえ、他の先進国から「先進国から最も放射性物質規制の劣悪な国」と言われようとも。 しかし、そこは役人のすることで、そこまで、そういい切れない自信のなさ(あるいは、状況によっては更に緩和させる可能性)が今回の「暫定規制値」の“暫定”という言葉に込められているような気がしてなりません。
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5 comments on “日本の放射性物質の暫定規制値は、WHOのガイドラインの20〜30倍”
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WHOには平時の基準と、緊急時(原発事故など)の2通りがあると聞きました。平時には最大10ベクレルですが、緊急時はもっと甘くても良いとなっているのでは?
すいません、自分ではまだハッキリと確認してませんけれども・・・。
利益を優先する社会は国に限らず民間の会社もほとんんど同じ思考だと思います。これが今の日本人の考えを象徴してるようですな・・・。きれいごとでやっている組織や会社などはほとんどないでしょう、皆自分たちの都合のいいように考えこうどうしている。
WHO のHPのFAQにあるのが正解では?
http://www.who.int/hac/crises/jpn/faqs/en/index8.html
今は緊急時。長期間じゃなきゃいいよってことでしょ。
正しいかどうかは不明ですが、緊急時の基準としてはドイツより厳しいとの指摘もあります。
http://www.swissinfo.ch/jpn/detail/content.html?cid=29897800
参考までに、東京都の水道水の新宿地区の水質です。
http://ftp.jaist.ac.jp/pub/emergency/monitoring.tokyo-eiken.go.jp/monitoring/w-past_data.html
現状はWHO基準を満たしています。
まあ、政府とか報道機関も「暫定基準値」の意味合いをちゃんと説明すべきだと思います。みんな薄々理解していますけど、なんで「暫定」なのかを。
当初は今回のような話が飛び交い、混乱していましたし。
読者の皆さまからのご指摘で、私が参考にした数値が所謂「平常時」の数値であって、今回のように原発事故が起きた際のガイドラインは、今回の暫定基準値とほぼ同じ内容であることが分かりました。
ご指摘ありがとうございました。
前橋