2015/07/28 05:55 | 昨日の出来事から | コメント(2)
債務問題から抜け出せない先進国
先々週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
思えば、今、先進国が国の債務(借金)を大きく増やしたのは、2007年のリーマンショックによる世界金融危機の時でした。 当時は、世界的な景気後退のリスクを回避すべく、政府が金融機関を救済し、同時に各国が大規模な財政出動をすることによって世界恐慌を回避する事が出来ました。 しかし、その結果、多くの先進国は多額の債務を背負うことになり、この問題が今も世界経済の根底に横たわっています。
これら多くの先進国が抱える債務を減らす方法として、当時、言われたことは、目先的には財政出動によって景気を刺激し、中期的には財政再建を進めることによって経済の健全化が図られるというものでしたが、実際には、中期的な財政再建がなされるどころか、更に国の借金を増やし続けています。 今回のギリシャ財政破綻問題は、こうした中期的な財政再建問題の先送りが顕在化したとも言えます。
さて、国の債務を減らす一番いい方法は、その国の経済が大きく成長し、その結果、税収が増加する事によって借金を減らすことですが、 現在の先進国の多くは、それに見合う経済成長が出来ていません。 そこで、次に、債務を大量に抱える国が取れる選択肢は3つあります。 一つめは、インフレを引き起こすことによって、実質的な国の債務を目減りさせることです。 2つ目は、今回のギリシャ問題で現実味を帯びたデフォルトによって国の債務を強制的に削減させることです。 そして3つ目は、スタグネーション(景気の低迷)が続くことによって国の債務問題を先送りさせることです。
英誌エコノミストは、この3つのプロセス(スタグネーション)を歩んでいるのが日本であると指摘しています。つまり、今の日本の債務問題は、目先的には日銀の異次元の金融緩和によってインフレを引き起こし、国の債務を減らしているように見えるが、経済の実態は引き続きデフレなので、日本の債務問題はあくまでも先送りに過ぎないのです。
最後に、同誌は「今、EUも日本と同様のプロセスを歩もうとしている」と指摘し、「そうならない為には、EU各国の財政権限を集中させた政治的統合が必要である」と述べています。 そして「もし、これが出来ないならば、EU各国は、今回のギリシャ離脱問題で起きたような議論を今後も延々と続けることになり、投資家は、現在のEUに対する一流の評価から、将来的には二流扱いの評価を下すことになるであろう」と警告しています。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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2 comments on “債務問題から抜け出せない先進国”
パードゥン にコメントする コメントをキャンセル
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そこには、第2次大戦で背負った債務問題から
抜け出せなかったイギリスの姿があった。
目先的な金融緩和でイギリス製造業は緩慢な死を迎え
ポンド高で生計はたてたが、結局、戦後のインフレにも
かかわらず財政再建はできなかった
下層中産階級出身にもかかわらずサッチャーは、
これを庶民負担とすることで一気に問題解決した、したが
人頭税を最後に持ち出した為に、庶民の味方ではない事が
バレておはらい箱になった。
英誌エコノミスト特有のもってまわった言い方だが、結局、
誰がいつ支払うかの問題だけなのだ。 他人にお説教の必要はない
イギリスではこうして庶民に支払わせたと書くが良い(笑)
いつもお世話になります。
そうなんですよね。国の借金とは、結局は国民の借金であり、それを支払うのは、我々国民(パードゥン様のお言葉を借りれば庶民)なのです。
問題は、どの世代の庶民にどういう形で、その借金を払わせるかの議論であり、ここには当然不公平も生じますし、様々な対立も生じます。
私たちは、こうした観点から、国の借金の返済方法の「からくり」を見極め、そして「監視する」必要がありそうです。
ご指摘ありがとうございました。