2010/04/06 05:18 | 昨日の出来事から | コメント(2)
政権交代は二大政党時代の始まりではなく、民主党一党独裁政治の幕開け?!
(ウィークリー ミーティング405にも掲載しましたが、誤字脱字、文章のわかり辛い個所が幾つかあり、申し訳ございませんでした。加筆訂正しましたので、改めてお読みいただければありがたいです)。
私は政治の専門家ではありませんし、ジャーナリストでもありませんので、政治の話やその裏話は知る由もありません。まして、オーストラリアに住んでいますので猶更の事です。ですが、そんな私でも為替や日経平均を相場として追いかけている手前、自分のわかる範囲内で押さえておく必要があり、そのことについて考えたことを今日はお話したいと思います。 「現時点で自分のわかる情報から、今後起こりうるシナリオとしてどんなことが考えられるか」についての一つの考察としてお読みください。 従って、今後も定期的にこれを見直し、どういう結末になるかを追いかけてみたいと思います。
2009年9月に民主党政権が成立した時、まず言われたことは、「自民党の一党独裁政権から民主党政権が誕生し、二大政党時代の幕開け」と言われました。 その時は私もそう思いましたし、どちらかと言えば、「民主党は寄り合い所帯」と揶揄されるほど、民主党の脆弱さや基盤の弱さが目立ちました。 一方で、自民党は50年以上も結束を保った組織でしたので、野党に下野したとはいえ「これは一時的なものであって、いずれ近いうちに再び勢いを取り戻し、政権を奪還するのではないか」と思いましたし、読者の皆様の多くもそう思われたのではないでしょうか。
最初の3カ月は、マニフェストに挙げた公約「高速道路無料化」「八ツ場ダムの中止」とか「児童手当支給」、「高校の無償化」や「普天間基地県外移転」といった事が話題の中心になり、国民は「民主党の公約がどこまで実行に移されるのか」に関心が集まりました。 そうこうしている内に景気の二番底不安が出てきて補正予算の話になり、基本的には、バラまきには誰も反対しませんのですんなり成立しました。
そして、年末頃から小沢幹事長の政治資金収支報告書問題、続いて鳩山首相の母親からの資金供与問題、小林衆議院の政治資金問題と続々と政治とカネの話が出て、一時は民主党執行部を揺るがしましたが、これを何とか乗り切り、3月末に平成二十二年度予算を成立させました。 今後は普天間基地問題を乗り切って夏の参議院選挙態勢に入ろうとしているのが現状かと思います。
以上が「政権与党しての民主党」ですが、一方で、「次の参議院議員選挙に向けた政党民主党」としての動きは、素晴らしいまでに着々と手を打っています。
まず、マニフェストにもあったように農家に約5,000億円強もの助成金をバラまき、今、更なるバラまきを選挙に向けて画策しています。次に、浮動票の中核である家計に対して子供手当を支給し、更には高校の実質無償化を実施しました。 また、かつての選挙集票マシーン言われた郵政グループを実質的に昔の組織に里帰りさせ、10万人の非正規雇用者を正規雇用し、これを賄うために郵貯の預け入れ金額を1,000万円から2,000万円に増額することで、郵政グループを完全に民主党に取り込みました。 この増額によって、今後膨れ上がる国債の安定消化先を郵貯に引き受けさせることで、当面の安定的な国債の財源確保に目途をつけました。
業界のつながりとしては、かつて自民党一党独裁時代に「鉄のトライアングル」と言われた政、財、官の鎖の一本と頼んだ経団連が、それまでの政策毎の政党評価を中止し、今後は各企業の自主献金に任せることを決定。これによって、それまで自民党へ自動的に流れていたお金が急速に細り、自民党を下支えしていた土建業界はドミノ的に民主党に鞍替えし、更に、民主党は自治体からの陳情の窓口を一本化して、その隠然たる権力を見せつけ始めています。また、最近になって日本医師会の会長に民主党支持の会長が成立し、医師会も民主党に大きく舵を切り始めました。
実際の個別の候補者選びでは、地元放送局のアナウンサーを中心に人気のある人を候補者に上げることで浮動票の取りまとめに力を入れ、新しいところでは、先のカルガリーオリンピックのアイススケート銀メダリストまで候補者に上げるまでの周到ぶりです。 とどめは二人区に二人の候補者を擁立して、何としても参議院の過半数を確保しようとする凄まじいまでの執念です。
政治的には、国民新党や社民党も、民主党と連立を組むことで自分たちの存在をアピール出来ていますので連立を離脱することは考えられません。 一方、自民党と共に下野した公明党は、かつて自民党と手を組んだ公明党執行部が次々に政界を引退することで若返りを図っています。その向こうには民主党ににじり寄るタイミングを窺っている様子が見え隠れしています。
さて、以上をお話した上で自民党ですが、もうかつての一党独裁政党としての勢いはありません。権力という強力な接着剤で辛うじて纏まっていた自民党は、その権力を失い、今や派閥の締め付ける力もカネもなく融解が始まっています。にもかかわらず、”昔の名前で出ています〜♪”のお偉方が、国会やテレビで与党民主党を批判し、攻撃しても全く迫力がありません(少なくとも私にはそう見えます)。野党に慣れていないからか、あるいは批判すれば過去の自分たちの悪政を暴くことになり、天に唾を吐くことになるのか、その実情はよくわかりませんが、私には彼らの言葉がやたら空しく響きます。
そこへ、鳩山 邦夫氏の離党に続き、先週末には与謝野 馨氏、園田 博之氏が離党し、無所属だった平沼氏と新党結成するに至って、自民党は一気に流動化してきました。今や参議院議員選挙対策どころか、現在の執行部体制の維持すら危ぶまれてきているように思われます。
国民にしてみれば、「この半年間の民主党の政権運営に失望したが、自民党にはもっと失望した。もう何もない!」といったネガティブ スパイラルが働き、こうした失望感の受け皿となる政党がなく、かつてのように政治にそっぽを向いてしまう可能性が高くなりそうです。 しかし、それこそが民主党の思う壷であり、低い得票率であればあるほど、今度は自分たちの組織票のウエイトが大きくなり、選挙は有利に進めることができます(かつての投票率の低い時に公明党が躍進した構図と同じであり、これまでのように高い投票率で有利に働いていた野党時代の選挙とは逆)。
このように、次の参議院議員選挙では、低い投票率の中、民主党が大勝する可能性すら出てきました。そうなりますと、民主党が衆参両議院で過半数を占め、かつての自民党一党独裁体制よろしく今度は民主党一党独裁体制が出来上がることになります。 これに対して、野党は、自民党、公明党、みんなの党、そして今度出来る新党と、小さな政党が乱立し、一つにまとまるには時間がかかりそうです。 そして、何よりも支持団体とカネ蔓を完全に民主党に押さえ込まれていますので、野党が纏まるのに時間がかかればかかる程、餓死して野党総倒れする可能性すら出てきているように思われます。
さて、これらを受けて私たちが追いかける為替や日経平均はどうなるのでしょうか?
まだ何とも言えませんが、民主党が衆参両議院で過半数を取りますと、少なくともここ数年間生じていた与野党ねじれによる政治の停滞は起こりません。 政策の良し悪しは別にして政府の意思決定を迅速に行うことができ、その点では景気に対してプラスに働く可能性は高そうです。政策の内容はともあれ、安定的な政治体制のないところに持続的な経済成長はあり得ませんので、その意味では経済にとってはプラスです。そして政策の中身ですが、少なくとも2013年までは、公約上、消費税を上げることはできませんので、バラまきを継続することができます(バラまき自体は目先の景気にプラスか)。 また、財源的には郵貯の増額で賄えば、目先的には安定的に調達できる可能性が出てきています。
以上から、現時点で考えられるシナリオとしては、
(1)低い投票率の下、民主党が参議院で過半数を確保出来る可能性が大きい。
(2)その際には、野党はバラバラな小さな政党の乱立となり、二大政党体制にはならない。
(3)その結果、民主党一党独裁体制の幕開けとなる可能性がある。
(4)こうした体制の誕生は、過去の与野党ねじれで政治が停滞した時期に比べて、景気にはプラスに働き、日経平均は上昇する可能性が高い(但し、これは政治的要因から見た日経平均であり、他の要因については、別途、考察する必要があります)。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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2 comments on “政権交代は二大政党時代の始まりではなく、民主党一党独裁政治の幕開け?!”
ぺルドン にコメントする コメントをキャンセル
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小沢幹事長が過って打った要石・・小選挙区制・・碁打の見事な戦略・・一手・・
これを飲んだ時・・自民党は自分の首にロープを掛けた・・戦略家がいなかった・・
我等は・・ハトさんを含め・・囲碁譜の中・・・
全くもって同意します。
与謝野氏も以前、喉頭がんを患っていますし、平沼氏も以前、たしか脳梗塞で倒れたと記憶します。
政治家は、健康が命です。
両名とも70歳を過ぎ、魅力を感じません。
この10年間、GDPは一向に上昇していません。(賃金は下がるばかり)
民主党にもう少し任せていいのではと思います。