2015/01/30 05:56 | 昨日の出来事から | コメント(1)
スイス フランの乱高下は始まったばかり?!
今週号の英誌エコノミストに1月15日のスイス国立銀行(中央銀行)によるユーロ/スイス フラン下限撤廃に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
読者の皆様もご存知のように、1月15日にスイス国立銀行が2011年以来行ってきた為替市場におけるユーロ/スイス フラン下限維持政策の撤廃を発表した瞬間、市場からスイス フランの為替取引の値段が消え、約10分後に取引が成立した時には、その直前の取引から約30%もかけ離れた水準で成立し、その日の1日の値幅としては30%以上(スイス フラン/円に至っては値幅が約51円)と大乱高下しました。
これについて英誌エコノミストは、以下のように述べています。
この値ブレ(1日の値ブレが30%以上)を数学(統計学)で説明すると、それは標準偏差にして+20シグマ以上の確率となり、統計学上ではあり得ないことが起きた。 そして、この日、特に大きな損失を被ったのは為替市場でFXトレードをしている個人投資家である。 彼らの多くは、僅かな証拠金で大きなレバレッジをかけてFXトレードを行っており(アメリカでは50倍、イギリスでは400倍のレバレッジをかけることができる)、一瞬にして証拠金が吹き飛び、確定した損失を個人、もしくはFX取次業者で負担しなければならなくなり、負担できなくなった個人の損失を肩代わりしたFX取次業者の中には売買停止、あるいは倒産に追い込まれている業者も出ている。 そもそも、個人がFXで儲けることは至難の業であり、フランスの金融庁が調べたところでは、FXを行っている個人投資家の85%は損をしている。
その一方で、金融機関でも、スイス フランを扱っているヨーロッパの銀行を中心に今回の為替取引で多額の損失が発生している。特に、彼らの頭を悩ませているのは、VaR( Value at Risk:バリュー アット リスク)による市場リスクを算定する際には、毎日の値ブレ(ボラティリティ)を使っており、この計算に標準偏差+20シグマの数字を当てはめると、現在保有しているスイス フランのリスク(Exposure)の大半を圧縮しなければならなくなるのである。
為替市場のように非常に効率的な市場にあって、一部の中央銀行が非効率な政策を打ち出し、これが破綻した時の乱高下は計り知れない(1992年のイングランド中銀によるポンド買い支えの崩壊、1997年の東南アジア諸国のドル=ペッグ制の崩壊(いわゆるアジア ショック)、そして今回のスイス フランの下限維持政策の崩壊)。
更には、1987年のブラック マンデーの暴落や、今回のスイス フランの1日の値幅が30%以上となる出来事は、もし、恐竜時代から株式取引や為替取引が行われていたとしても統計学上は起こりえない出来事であり、しかも、こうした出来事が、ここ2~30年の間に何度も起きているである。 この「ありえない出来事が現実に何度も起こっている」金融市場に、私たちが自分の命の次に大事なお金を投入していることの意味合いを、私たちは、今一度、考えてみる必要がありそうです。
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One comment on “スイス フランの乱高下は始まったばかり?!”
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損をした人のお金は無くなるわけではないから、
大勢のイギリス個人投資家のお金は、少数のどなたかへ
いった訳ですよね。
その少数だが、いずれ来るスイスフラン高騰にかけて
総ザラエをした会社か人、それは誰?