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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2015/01/20 05:36  | 昨日の出来事から |  コメント(1)

下落するユーロの先に?!


おはようございます。

先週はスイス国立銀行(SNB:中央銀行)が、これまで3年間にわたり続けてきた1ユーロ=1.2スイスフランの為替上限政策の撤廃を受けて世界の為替市場は大混乱に陥りました(主要通貨が1日で30%以上も乱高下したのは恐らく変動相場制が始まって以来のことではなかったでしょうか)。 

今週号の英誌エコノミストでは、今回のスイスフランショックの主要相対通貨であるユーロの今後の動きに関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

そもそもユーロは1999年1月に1ユーロ=1.17米ドル近辺から取引が始まり、その後は2000年にかけて売られて下落し、ユーロとしては最安値の0.83ドル付近まで値を下げましたが、2008年にかけてはユーロ絶頂期を迎えて対米ドルで1.6ドル近辺まで上昇します。 しかし、その後は2008年のリーマン ショック、2012年のギリシャ ショック、そして昨年2014年には、政治的にはウクライナ問題とギリシャ問題の再燃、経済的に歯止めのかからないユーロのデフレ圧力によってユーロは大きく売られ、現在は1999年1月にユーロが取引された頃と同じ水準1.17ドルを割り込んで取引されています(現在は1.16ドル台で取引されています)。

英誌エコノミストは、まず、こうしたユーロの歴史を振り返り、今後のユーロの動向については2つの側面(政治的な側面と経済的な側面)から議論をしています。

まず、政治的には、喫緊の政治的問題として1月25日に行われるギリシャの総選挙の動向が気になるところであるが、幸いなことに、今回優勢とされている極左政党Syrizaは、選挙に勝っても引き続きユーロに留まる事を公約しており、直ちにGrexit(GreekのユーロからExitと意味する造語)には結びつかないとしています。 しかし、その一方で、この政党の党首Alexis Tsipras氏は、ギリシャが2012年にEUとIMFからの財政支援の条件として受け入れていた最低賃金の引き下げを撤廃し、逆にこれを引き上げると表明しており、今後の政局次第ではGrexit(ギリシャのユーロ離脱)のリスクは引き続き残っている。

次に、経済的には、ユーロ圏のインフレ率は僅かに+0.2%しかなく、域内のデフレ圧力が高まったままである。 これに対し、ECBは主要国の国債を買い取る量的緩和を検討しているが、ドイツがこれに強く反対し、また、EU憲章でもECBが個別の国の国債を買い取ることを禁止している。 しかしEuropean Court of Justice(ユーロの最高裁判所)は、ECBが個別国の国債を買い取ることに合法であるとの判断を1月14日に下したため、ECBによる量的緩和政策に道筋が立ち、早ければ今月末にもECBによる国債買取り政策が実施されそうである(実は、スイス国立銀行が、これまで続けてきたユーロ/スイスフランの為替上限政策の撤廃を発表したのはこの翌日でした)。

英誌エコノミストは「ECBが量的緩和政策を実施すれば、FRBによる量的緩和政策にも見られたように一定の経済効果があるだろう。 しかし、それと同時に、これまでのユーロの歴史は、通貨が下落するとそれを食い止める為に応急処置をして何とか持ちこたえ、 その一方で、ユーロが上昇している時、あるいは一定の経済成長を維持できているときには、本来、やるべき抜本的な改革を先送りする歴史の繰り返しであった。 今後、行われるであろうECBによる量的緩和政策(ユーロ安政策)は、域内のデフレの進行と景気の回復に寄与するであろう。 しかし、これは、本来やらなければならない域内の投資と消費のバランスの取れた経済回復にはほど遠いものになるであろう」と指摘しています。

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One comment on “下落するユーロの先に?!
  1. 夏の空 より
    あ。 合点がいった

    フランなんて気にしてもいなかったのでどうでも良いのですが、FXの阿鼻叫喚とか、どこぞの仲介業者が業務終了やら、どこぞの金融機関で損失が、というニュースを興味をもって拝見し、「なぜこのタイミングで撤廃?」というのが疑問でした。  今週にもECBの量的緩和が発表されるかも&これ以上は、暴落が予想される通貨の引き受けは無理、との説明も説得力がありましたが、「なぜ、この日に?」は、ドイツも文句を付けづらくなる『ユーロの最高裁判所』の判断&発表が1月14日にあったことが最大の要因であることに今気がつきました。・・・そこからスイス中銀の出方を予想するぐらいでないと・・・ですねw

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