2014/10/30 14:49 | 昨日の出来事から | コメント(1)
原油安は歓迎すべきこと?!
今週の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
私たち日本人や、私の住むオーストラリアは原油産出国ではありませんので、原油の値段が下がるとガソリン価格などが下がってありがたいことです。 世界的な原油安の背景には、原油の需要そのものがかつてほど強くないことが挙げられます。 例えば、現在の車の燃費は10年前のそれに比べて25%の良くなっていますし、世界の地域別需要では、アメリカはシェール ガスの産出によって、かつての原油輸入国からほとんど自国の原油で賄えるまでになっています(ちなみにシェール ガスの採算ラインは、1バレルあたり80ドルであり、現在の水準はまさにこの辺りで取引されています)。 また、別のアナリストによれば、先進国における自動車の利用台数もそろそろピークに達しつつあると指摘しています。
その一方で、今回の世界的に原油の値下がりを手放しに喜べない部分(国や地域)もあります。特に、英誌エコノミストは、今回の原油安で懸念される国として、ロシア、ベネズエラ、イランなどの石油産出国を上げています。
まず、ロシアですが、1991年にソビエト(現在のロシアの前身)が崩壊した背景には様々な要因が挙げられますが、経済的には当時の原油価格の暴落がロシア経済に致命的なダメージを与えました。 あれから20年以上が経ち、今、再びロシアは原油価格の下落によって大きなダメージを受けています。 そこへ、ウクライナ情勢への介入によって西側諸国から制裁を受けてロシア経済は更に打撃を受け、これによってロシアの外貨準備高は一気に減少し、あと1年半もこうした原油安の状況が続けば、ロシアの外貨準備は底をつくと試算されています。
更に、ベネズエラやイランはロシアよりも事態は逼迫しています。 まず、ベネズエラですが、この国の原油輸出価格の採算ラインは1バレルあたり120ドルと高く、現在のように80ドル台で推移すると国営石油会社は一気に赤字に転落して国家財政は急速に悪化し、その影響でベネズエラ通貨(ボリバル)は暴落し、国内の物価は高騰しています。
また、同様にイランの原油輸出価格の採算ラインは140ドルとベネズエラよりも高く、しかも前政権時代によってなされたバラマキ政策によって財政負担が大きく膨らんでいるために一気に財政が悪化しています。
今回の原油安の背景には、「ヘッジ ファンドが暗躍している」とか、「スンニ派(サウジアラビヤやクエートなどの湾岸諸国)が、意図的に増産して原油供給過多にして原油価格を下落させ、シーア派(イラン、シリアのアサド政権、イラク)政権に経済的ダメージ与える陰謀がある」と指摘するアナリストもいますが、 その真偽は定かではありません(現有動向を巡ってはこれまでも何度も言われてきた)。
いずれにせよ、今回の原油安によって、ダメージを受ける国々の債券や為替には、暫くは手を出さない方がよさそうです。
ちなみにオーストラリアのトニー アボット政権は、今回の原油価格下落に付け込んでガソリン税を上げて増収を図る姑息(gutless)な手段に出ています(この類の増税は法改正、国会の承認を必要としない為)。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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One comment on “原油安は歓迎すべきこと?!”
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ガソリンに比べ・・
灯油・・高値・・貼り付き・・
鉱物性燃料 •輸出額 1兆5,367億円、輸出総額に占める率 2.2%
軽油/灯油(とうゆ)※ジェット燃料を含む ほか
でありました・・
多々・・摩訶不思議なカラクリ・・冬は寒いな・・・(笑)