2014/09/30 14:44 | 昨日の出来事から | コメント(0)
ヘッジ ファンドを解約するアメリカの年金基金
先週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
読者の皆様もご存知のように、かつてはヘッジ ファンドと言えば、世界の市場を席巻し、時に中央銀行に立ち向かい、また別の時には政府をも脅かす存在でした。 しかし最近のヘッジ ファンドの衰退ぶりは目を覆うものがあります。その象徴的な出来事として、今月9月15日にアメリカのCalPERS(カリフォルニアの中心的な公的年金基金)が、これまで保有していたUSD4bn(約4,400億円)のヘッジ ファンド ポートフォリオを解消すると発表しました。
そもそもヘッジ ファンド投資することを正当化するには、3つの条件(環境)を満たす必要がります。
一つ目は、市場の中に、アノマリー(anomaly:ひずみ)が存在し、それを素早く見つけて収益を得る必要があります。 1980年代や1990年代には、世界のそれぞれの金融市場の間にかなりアノマリーが存在して、ヘッジ ファンドは非常に活躍することができました(いわゆるアービトラージと言われる裁定取引)。 ですが、ITの発展によって殆どの金融市場はリアルタイム化し、世界中の情報が誰でも同時に受け取れるようになり、そこにアノマリーは殆どなくなってしまい、収益機会が激減してしまいました。
2つ目は、年金基金が、優秀なヘッジ ファンドを見つけることが非常に難しくなった点が挙げられます。 最近のヘッジ ファンドの多くは、当初設定した期待収益を上げることができずに途中で解散に追い込まれ、その結果、ヘッジ ファンド全体の平均寿命は5年未満しかありません。 これによって、今やヘッジ ファンドは長期投資したい年金基金のニーズにこたえることができなくなってしまいました。
3つ目は、たとえ、うまくいっているヘッジ ファンドを見つけることができても、ヘッジ ファンドに支払う手数料が非常に高くて採算に合わないという事情があります。一般的に、ヘッジ ファンドに投資しますと、年間に2%の基本手数料がかかり、もし運用が成功するとその超過収益の20%をヘッジ ファンドに成功報酬として支払わなければならないのです(ゼロ金利時代に年間2%の基本手数料はバカ高い!)。
しかも、この10年間で、ベンチマークとなる株式インデックスと債券インデックスをアウト パフォーム出来たのはわずかに2005年だけ1回しかありません(このときは株式で60%、債券で40%アウト パフォームしました)。
現在、アメリカにある主要な300の年金基金の運用資産残高はUSD15兆ドルあり、その内、ヘッジ ファンドにUSD2.9兆ドル投資していますが、これらのヘッジ ファンドに2%の年間手数料支払った後の平均的な超過リターンは、僅かに+0.4%の過ぎず、年金基金が、年金受給者に支払わなければならい配当原資7.5%には、とても届かないのです。
こんなヘッジ ファンドの成りの果ての有様を読者の皆様はお笑いかもしれませんが、振り返ってご自身がご購入された投資信託が2%も年間手数料を取られているものはありませんか?
もしそうだとすれば、それは成りの果てのヘッジ ファンドを購入しているのとほとんど変わりません!
(今すぐに解約すべきです)。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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