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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2014/07/15 15:40  | 昨日の出来事から |  コメント(3)

「第3の矢」に期待する英誌エコノミスト


おはようございます。

少し前の号になりますが、英紙エコノミストに、今回、安倍政権が策定した新成長戦略に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

これまで、日本は「失われた20年」という言葉に表されてきたようにデフレと景気低迷に苦しんできました。 この間、毎年のように景気浮揚のための様々な政策がなされたが、全てと言っていい程うまく行きませんでした。 しかし、その一方で、日本は大きな社会的な構造変化に直面し、今や殆ど全ての日本人がこの構造変化に対して「何らかの社会の仕組みの変革もやむを得ない」と変革を容認する姿勢に変わってきています。 また、2012年末からのアベノミクスによって実感したように、日本経済を発展させるためには「改革が不可欠である」ことが認識されつつあることも変革容認姿勢に変わってきたことの理由に挙げられます。

さて、この「日本の社会的な構造変化とは何か?」、言うまでもなく「少子高齢化」に代表される「人口問題」です。 ある調査機関によれば、2040年までに900近くある全国の市町村の内、半分近くが人口減少によってこれまで通りのサービスが維持できなくなり、その一方で、都市には更に人口が集中し、都市と地方の格差は益々拡大するとしています。 その流れの兆候は既に表れており、全国に存在する住宅の内、10分の1以上は空き家で、その多くは地方に集中しています。

また、これまでは「何が何でも現状維持」に固執し続けてきた日本の農業ですが、こちらも農業従事者の平均年齢が70歳を越え、それでも「何が何でも現状維持」を主張するにはもう限界をとっくに越えてしまっています。

更に、これまでの日本人だけで構成されてきた日本の労働市場においても、労働条件の厳しいしい仕事を中心に外国人労働者に依存せざるを得ない状況になりつつあります。 また、戦後の日本の労働市場を支えてきた「終身雇用制度」は既に崩壊し、若者や女性を中心に全労働者の3分の2の労働者は「終身雇用制度」に属していません。

更に、株式市場においても同様で、かつては主要銀行や取引企業との間で「株の持ち合い」が当たり前で、市場全体の外国人の株式保有比率は1989年には4%に過ぎませんでしたが、今では全体の約30%を外国人が保有しています。 当然のことながら、彼らの株式保有比率が高まることになって、日本の経営者もそれまでのよう非効率な経営(あるいは日本独特の経営スタイル)では済まされなくなり、収益や効率を重視せざる得なくなりました。

英誌エコノミストは、こうした日本の社会的な構造変化を絶好の機とし、「今回の安倍政権の成長戦略に対して、労働団体、農業団体、医師会、あるいは経団連などの抵抗に遭うかも知れないが、様々な改革に対して、その内容を骨抜きにするようなCodicils (補足条項)抜きにして改革を推進すべきである」と声援を送っています。

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3 comments on “「第3の矢」に期待する英誌エコノミスト
  1. st より
    先ず遣るべき事。

    構造変化を嫌っている官僚が行政を牛耳っているんだから、日本の社会的な構造変化なんか起きっこない、古臭い訳の分からない天皇制官僚制を止めて大統領制共和制国家元首を大統領に変えないと日本の成長はないと思います。

  2. natunosora より
    あれ?

    最後のパラグラフ、一群の出だしが労働団体で、最後は経団連ですかw それって完全に利害背反のグループを一緒くたに論じてるって事で、おかしいようなきがしますよね。  官僚を目の敵にしてるお方もおられるようですが、逆にこれだけあっちこっちに振れる政治の世界に抗して、日本がずっとうまくやれてるのは何が効を奏しているのか判ってないのでは?と申し上げておきましょうw だいたい、今の好景気は(一部は好景気だそうですが)、アベノミクスのおかげではなくて、アメリカ等の景気回復にタイミングが合っただけですのでw

  3. 前橋 より
    natunosora 様

    いつもお世話になります。

    私の文章がまずくて誤解を招いたかもしれませんが、ここで英誌エコノミストが言いたかったのは、「改革をやろうとすると、(労働団体、経団連、医師会、全農等など)業界を問わず、既得権益を守るために横やり横車を入れてくる」ことのようです。

    また、ご指摘のように、アベノミクスが今のところ、うまくいっているように見えるのは、とりもなおさずアメリカの景気が回復し、好調に推移しているおかげに過ぎません。

    その流れからすれば、今回、英誌エコノミストが声援を送る今回の第3の矢(成長戦略のための構造改革)も、「虎の威を借りた猫」よろしく、「アメリカの好景気のおかげでできる小手先だけの社会構造の微調整」ともいえます。

    この辺りのことは、今後の動きに注視していきたいところです。
    よろしくお願いします。

    前橋

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