2012/06/15 06:41 | 昨日の出来事から | コメント(2)
ユーロ危機のカギを握るドイツ
今週号の英誌エコノミストに、去年のギリシャ危機には始まり、今やスペインの10年国債が7%まで利回りが上昇(価格は下落)する事態となり、世界は今週末に行われるギリシャ議会の再選挙結果に注目が集まっています。
さて、そのギリシャ議会の再選挙の行方ですが、これまで激しく対立していた右派も左派も、終盤に入って単独では政権を獲得できない状況になって、お互いに歩み寄りを見せて(人気取りに走って)自分の政党に有利になるよう戦略を転換してきています。
たとえば、右派は、それまでの「ユーロに留まるために財政緊縮を順守してこれを推し進める」方針から、「ユーロに留まる為に財政緊縮を順守するものの、直近の財政緊縮策に関してはEUと交渉する」と財政緊縮政策の緩和を打ち出し、一方で、左派は、それまでの「ユーロには残る一方で、EUやIMFの財政緊縮政策の放棄」と打ち出して大いに人気を集めていましたが、あまりに自分勝手なマニフェストだとさすがのギリシャ国民も気付き、「そんな身勝手が通用するか」と疑心暗鬼になり、「左派に任せると、ギリシャはユーロから放り出される」との懸念から左派人気は急速に伸び悩み、それを受けて左派は「財政削減計画すべてを放棄するのではなく、EUと財政削減計画の見直しをする」と態度を軟化させています。
結局のところ、両政党とも「ユーロには残りたいが、財政削減計画は順守したくない」とのギリシャ国民の身勝手な考えに歩み寄らざるを得なくなっています。
一方で、こうしたギリシャ国民の身勝手な考えに対して、EU各国は「ギリシャはユーロに留まる為には合意した財政削減計画を順守すべき」と、こちらは原則論の主張にとどまっています(というのも、17日のギリシャ議会の再選挙の結果を見てみないことには何とも言えない為)。
そこで、新たな疑問として、「じゃあ17日の再選挙が行われれば、全てがはっきりするか?」と言えば、実は、そうではないのです。 以前にも、このコーナーでも指摘しましたが、選挙をしても、再び、内閣が組閣できない可能性も残っていますし、たとえ組閣できたとしても、EUとの財政削減計画の交渉で、EUと合意ができる可能性は非常に低いと言わざるを得ません。 なかでも、財政削減計画推進論の中心的存在であるドイツは、メルケル首相のこれまでの財政削減計画に対してすら、国民から大きな反発を買っており、ここで、更に約束した筈の財政再建計画の見直しなど、とても国民の理解を得られるものではないからです(既に、地方選挙で与党は大敗の連続)。
英誌エコノミスト誌は、それでも「今回の世界的な金融危機回避のカギを握るのは、ギリシャでもなければ、スペインでもなく、ドイツこそが(メルケル首相こそが)、そのカギを握っており、ユーロ分裂を回避することは、最終的にはドイツの国益にも叶う」と論じています。
しかし、ことギリシャに関して言えば、たとえ、今回、財政削減計画の見直しをEUと合意しても、ギリシャが割高な通貨ユーロにとどまる限り、いずれ財政破綻することは避けられないとの指摘もあり、その意味では早めにユーロを離脱して早く経済を立て直す方が、コストが少なくて済むという考えもあります。
私は、これまで、危機的な状況を前に、読者の皆様に、よく「Please Fasten your seatbelt!(お座席のシートベルトをお締めください)」と言ってきましたが、今回に関して言えば、「Please put your hand on your Emergency button just in case ! (万一に備えて、緊急脱出ボタンにお手を乗せてください!」としたいと思います。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
現在有料版にはお申し込みいただけませんのでご了承ください。
当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。
2 comments on “ユーロ危機のカギを握るドイツ”
コメントを書く
いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。
ユーロに留まって苦労する方が意味があるし、これを糧に出来ないようでは、どうしようもないのでは。
マイケル・ルイス・・ギリシャレポート・・
ギリシャと国民は・・
近代社会以前の状態・・現代社会にはなっていない・・
ルイスレポート以前に・・
独逸やフランスは・・ギリシャの実態を把握のはず・・
GDS比赤字が3%以下ではなく・・十数%だと言う・・専門家の警告が・・委員会に流された・・にも拘わらず・・無視・・加入させた・・
今その付けを払わされている・・
だからと言って・・
付け馬全部を清算出来ない・・とメッケル・・
イギリスは・・ドイツに冷たいのです・・
メッケルは・・怒りの余り・・八つ当たり
・・米国や日本は財政赤字を減らせ・・!
日本は援助交際してるんですが・・・