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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2012/06/12 06:35  | 昨日の出来事から |  コメント(1)

スペインは、「ギリシャより、まし」 ってホント?!


おはようございます。

先週末には、EUが、今、懸案のスペイン信用不安を解消するために、スペイン政府に資金を援助するのではなく、不良債権で過小資本に落ちっているスペインの銀行に100bn ユーロ(日本円にして約10兆円)資金支援をすると発表しました。

スペインの10年物の国債利回りは、ギリシャや、アイルランド、ポルトガルのように5月30日には6.6%台まで上昇し、このままの金利水準では、借り換えコストが高くていずれ財政破綻してしまう危険水域で取引されていました。

先週号の英誌エコノミストは、ギリシャとは一線を引いて議論をしており、「スペインの信用不安は、スペインの財政が悪化しているのではなく、2000年台に起こったスペインの不動産バブルとその崩壊によって発生したスペインの銀行の不良債権が問題なのである」としています。

即ち、スペインの毎年の財政赤字は、GDP対比8.9%と高い水準にありますが、他の国に比べてダントツに高い水準ではありませんし、また、国債発行残高もGDP対比で70%近辺とドイツの国債発行残高比率よりも低いのです。  そして、何よりも、ギリシャのように政治家が何も決められずに、EUを離脱する、しないで、再選挙するような状態と違い、スペインでは、過去1年間をかけて年金を削減し、また、財政赤字の上限を憲法に規定しました(英誌エコノミストに言わせれば、スペインとギリシャでは雲泥の差があるといわんばかりです)。

また、先週末のEU蔵相会議でも、スペインの銀行に対する10兆円の支援を各国が即決したように、EUとしても、ギリシャの二の前を踏みたくないことと、資本援助をを銀行の資本金とすることで、各国の税金で拠出された資金が、よその国の年金や社会保障費に回らないこともEU各国の国民の同意が得られやすかったことが挙げられます。

そして、今、問題となっているヨーロッパの銀行の預金引き出し問題についてですが、私たち日本人から見れば「その残高は私たち日本人と同様に多いのはないか?」と想像しますが、実際は、ヨーロッパ人は、銀行預金をそれほどしていません。 ユーロ全体でも、銀行に預けている預金の残高は、7.6兆ユーロ(日本円で760兆円)で、そのうち個人預金は5.9兆ユーロ(日本円で590兆円)と日本の個人預金残高の半分以下です。 

しかも2010年時点で、その72%の預金(口座数にして95%)は、政府が保証している預金保険金額の100,000ユーロ以下に収まっており しかもその多くは、ドイツやフランスなどの国民の預金であって、今、問題となっている南ヨーロッパの国々の預金残高は、更に限られてしまいます。

更に、シティ グループの試算によれば、もし、ギリシャがユーロから離脱し、再び、かつてのギリシャ通貨ドラクマを採用した場合、その為替レートは現在のユーロ対比、30%程度安い水準で取引される可能性が高いとしています。

つまり、「ヨーロッパの銀行の預金引き出しが起きても、それは限定的であり、更に、ギリシャが自国通貨ドラクマを採用しても、肝心のユーロが既に大きく売られているので、その通貨価値の下落も限定的である」というのが、英誌エコノミストの言い分なのです。

確かに、一連の混乱が落ち着けば、英誌エコノミストの指摘することも説得性を帯びるかもしれません。 しかし、そこに辿り着く前には、目も覆わんばかりの混乱とパニックがあり、更に、そのパニックによって、新たな信用不安が他の国に伝播した場合、どこまでそのパニックが拡大するかわからないリスクと恐怖を英誌エコノミストは過小評価していると私は考えています。

何故ならば、こうしたパニックの連鎖で、私たち日本人は、1990年台の日本の金融恐慌の中、本来は潰れる必要のない金融機関までがバタバタと倒産していった悲劇を目の当たりにしたではありませんか。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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One comment on “スペインは、「ギリシャより、まし」 ってホント?!
  1. ペルドン より
    ホント・?

    時間をかけて・・
    市場に浸透・・
    さほど・・パニックは起こらないのでは・?
    パニックが起きるのは・・
    ギリシャではありませんか・・・?

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