2014/03/25 14:57 | 昨日の出来事から | コメント(0)
オーストラリアで最も幸せな州はタズマニア州?!
今週号の英誌エコノミストにオーストラリアのトニー アボット政権が、これまで長年に亘り政争を続けてきたタズマニア州の森林開発に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
オーストラリアのタズマニア州は、オーストラリア大陸の南に位置し、南極に最も近いオーストラリアの島です。 島と言っても日本の北海道よりもやや小さい程度の大きさがあり、その大半が森林と湖に恵まれた緑豊かな州です(オーロラも見ることが出来ます)。
その一方で、産業と言えば、林業、農業と観光が中心で、政治的にはグリーン党(環境保護、同性愛を積極的に支持する政党)の本拠地であり、彼らはタズマニアの環境破壊(特に森林伐採)に対して徹底的に抵抗し、過去30年に亘り、森林開発業者と環境保護団体、そしてグリーン党との間で協議を続けてきましたが、2011年に3者間の取り決めがようやくなされました。
しかし、今回、タズマニア州の地方選挙で16年振りに自由党連合のタズマニアの首相(premier)が誕生した事でこの話が再び蒸し返され、 豪連邦政府は世界遺産に登録されているタズマニア州の森林地域の内、7.4万ヘクタールの遺産登録の解除をWHC(World Heritage Committee) に提出しました。
その背景には、これまでの労働党とグリーン党政権によって、かつては6,000人いた森林従事者が4,000人まで減少し、失業率も他の地域が6%そこそこなのに対してタズマニア州の失業率は7.6%と突出し、これ以上、同州の林業が衰退してしまうと、国際競争力が低下して同産業を持続維持出来ないことが挙げられます。
確かに、タズマニア州の一人あたりの平均所得はオーストラリアの中で最も低く、また、先程述べたように、失業率は7,6%と他の州に比べて群を抜いて高いのです。 更に、健康面においても平均寿命は他の州に比べて低く、社会保障を含めた州全体の予算は私の住むブリスベン市と同程度の規模しかありません。
このようにお話すると、「タズマニア州はどんなに惨めでひどい処だろう」と読者の皆様は思われるかもしれませんが、実は、このタズマニア州は、オーストラリアの中で「自分の住んでいるところが一番幸せ」と感じている人の割合が最も多い州でもあるのです(ちなみに、反対に「自分の住んでいるところが一番幸せ」と感じていない人が最も多い州は、私の住んでいるクイーンズランド州です)。
タズマニア州は、連邦政府からの補助金がなければ立ち行かない州とはいえ、個人ベースでは、失業率が多少高くとも、所得が他の地域よりも多少低くても、更には寿命が他の地域入りも多少短くとも、「ここに住むことが一番幸せ」と思える人がたくさんいる場所なのですから、ある意味で羨ましい場所ではありませんか?!
経済学的には、私たちの幸福を構成する要素に雇用、所得、そして寿命などが挙げられますが、実は、それ以上にもっと大切な要素があることをタズマニアの人たちは語ってくれているような気がします。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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