2012/06/05 06:31 | 昨日の出来事から | コメント(6)
「衰退する国、日本」の株価と為替
朝から、不愉快なお話をしてすみません。 昨日、東証株価指数TOPIXは、リーマンショック後の安値を更新し、バブル崩壊後の安値を更新しました。 尚、日経平均株価指数は、バブル崩壊後の安値は2008年10月28日の6,995円で、今のところ、それを上回っています。
1990年代のバブル崩壊期には金融機関の株を中心に1980年台の株価まで下落しましたが(一部はそれ以下、もしくは倒産)、製造業はそこまで下落しませんでした。 しかし、今回の下落では、ソニーの株や、パナソニックなどのこれまでの日本の製造業の中心的存在であった株が30年以上ぶりの安値を更新し、製造業までも1980年代の水準まで逆戻りしてしまいました。
一部の株式評論家は、「日経平均や、TOPIXなどの株価指数なんか見ていても、何もわかりませんよ!」とおっしゃいます。確かに、その時々の注目銘柄を追いかけて収益を上げていく投資家にとっては、そうかもしれません。 しかし、だからと言って、株価指数を見ることは全く無駄なのではなく、それらを見ることは、その時々の時代の背景や、今後の社会や経済の趨勢を占う上で様々なインプリケーション(implication)を与えてくれる非常に有用なものと私は考えています。
私は、以前までは日本経済の復活とその可能性を信じきました。 しかし、今年の5月以降の下げ相場を目の当たりにして、「今、世界的な経済の低迷の下、日本株も売られているように見えるが、実は、それもさることながら、日本の特殊要因(「衰退要因」)の影響が大きいのではないかと考えています。それが証拠に、世界的に株価が上昇するときは、日本株も買われますが、その買われる度合いは緩慢で、下がる時には、他の株式市場以上に売られているからであり、今回のソニーやパナソニックなどの株価低迷にもそれが端的に表れているように思います。
そこに、更に話をややこしくする問題が、読者の皆様もお分かりの通り、為替問題(具体的には円高)です。 私の身近にも「日本経済(ファンダメンタルズ)が強いから円高なのだ! 円高のどこが悪い!」とおっしゃる人がいますが、私には、そのように見えません。 今の円高は、かつて、ギリシャが自分の国の実力以上に割高なユーロに参加することによって疲弊し、やがて財政破綻していったプロセスと非常に似ているように思います。 即ち、表向きは、政府日銀は自らの判断でいくらでも為替誘導(円安)が出来ることになっていますが、実は、半永久的なアメリカのドル安政策の下(政治的な「雁字搦め」の対日政策の下)、円は半永久的に円高であり続けさせられています。そこへ、今回のようなユーロ安が起こると、円は益々円高になってしまうのです。
言葉を返せば、円高は、ギリシャの破綻プロセスでも見たように、日本の財政が破綻する「直前」まで続く可能性が高いと考えたほうがよさそうです。 多くの読者の皆様は、日本の財政は、数十年単位で破綻しないとおっしいます。 もし、その考えが正しいとすれば、円高も、あと数十年単位で続くことになりますし、それに合わせて日本国債も買われ続け、それとは裏腹に日本の株は売られ続けます(そんな数十年単位で株が売られたら、限りなくゼロに近くなってしまいます。ですが、株価(特に株価指数)がゼロになることはありません。ということは、日本の財政が数十年単位で破綻しないという想定は、、、、)
(尚、ここでは、大幅な円安は、「日本の財政破綻が表面化する時」を前提でお話しています。)
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6 comments on “「衰退する国、日本」の株価と為替”
通りすがり@関西人 にコメントする コメントをキャンセル
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いつも斬新な視点で問題を提起して頂けることに感謝し、また、楽しみにしております。
オーストラリアと違い、日本は無資源国ですから人材が唯一の資産であり、他の方が指摘されている通り、国民こそが日本ブランドだと思います。
頭の良い官僚の方には省益の確保に没頭せず、政治家は世界の工場として君臨した高度経済成長期の考え方を早く捨て去り、次の経済成長のビジョンを早く持ってもらいたいものです。
ただし、一番重要なのは国民が自立意識を持つことでしょうね。そうすればきちんとした政治家を選ぶことができるはずです。
「日本の財政破綻が表面化する時」は、なにをきっかけに訪れるのでしょうか?金利引き上げでしょうか?
業界のプロ(前橋殿)にお伺いします。
財政破綻とはどのような事を言うのですか。
技術屋として定義がしりたい。
この言葉よく聞きますが、イメージがわきません。(鈍感なもんで)。
メディアで専門家がよく言います。日本国債は暴落する。財政破綻だ。このままではギリシャだと。
前橋殿含め、皆様方は円預金すべて解約されてるんですか?
御教授お願いします。
いつもお世話になります。
先日もお願いしたことなのですが、日本人様のお顔を存じ上げず、また、日本人様がご年配であることをも顧みず、失礼なことを申し上げることをお許しいただきたいのですが、日本人様が、私に対して「売国奴みないな」とおしゃったお言葉のご撤回を願います。
このご撤回なくしては、日本人様のご質問にお返事いたしかねます。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
前橋
いつもお世話になります。
ちょっと、ここで申し上げたいのは、「破綻するプロセス」と「破綻するシナリオ」は、区別しておいたほうがいいと思います。
破綻するプロセスに関しては、特に日本だけが特別な破綻のプロセスを経るとは考えていません。
ギリシャや、アイルランド、そして、今、問題になっているスペインと、それぞれの原因は違え、そのプロセスは同じだと私は考えています。
では、「その際、どういったシナリオが、考えられるか?」をFOX様がお尋ねなのだと思いますが、それは、様々な要因が考えられ、今、ここで「このシナリオで破綻プロセスを経る」と決めつけるのは無理があり、やや乱暴です。
何故ならば、日本の財政破綻プロセスは、読者の皆様もおっしゃるように、数十年先の話であり(それが本当かどうかは別にして)、そこまでに至る今後の政権運営や、財政運営によってそのシナリオも変わってくるからです。更には、世界の景気動向も大きく影響しますので、そのシナリオも変わってくる可能性があります。
ですが、どんなシナリオであれ、あるいは日本の財政破綻に、どれだけでの時間軸がかかろうとも、現在のような弛緩しきった財政運営を続ければ、結果的にギリシャのような破綻プロセスを辿ることは間違いないのではないかと私は考えています。
うまく、FOX様のご質問にお答えできていなくて恐縮ですが、よろしくお願いします。
前橋
前橋様
ぐっちーさんとポジションが逆なのが
とてもおもしろいです。
(これは、どっちが正しいということじゃないので)
本当の意味での健全度を測るのは、
日本が持つ外国向け債権の残高を
観察すればいいのかな
と思っていますが、いかがでしょうか?
(残額だけではなく)