2012/06/01 06:38 | 昨日の出来事から | コメント(1)
ユーロは崩壊する他はないのか!?
思えば、2011年2月にギリシャ危機が大きく取り沙汰された時、このコーナーでもご紹介しましたが、英誌エコノミストは、3つのシナリオを想定しました。 1つめは、「ギリシャが財政削減をしてリスボン条約通りに財政を再建する」、2つ目は「EUやIMFの支援を受けて財政債務の繰り延べ等」をする、そして、最後の3番目のシナリオとしては、「財政が破綻してユーロから離脱する」でした。 あれから、僅か1年半で今や、ギリシャは最悪のシナリオにいちばん近い状態になってしまいました。
そして、今は、ギリシャからポルトガルやアイルランドを飛び越えてスペインに市場のターゲットは向き、通貨としてのユーロは、昨年11月以来のユーロ安を試す展開になっています。
さて、今週号の英誌エコノミストでは、現在のユーロ信用不安再燃を前にして「ユーロは、崩壊の道を本当に辿っていいのか? そして、もし、そうならない為にはどうすべきか?」と題した記事がありましたので、ご紹介したいと思います。
まず、ギリシャの現状認識としては、ギリシャが6月18日の議会再選挙の結果によって「ユーロを離脱する、あるいはしない」にかかわらず、足元のギリシャの資金不足に対して、EUあるいはIMFは資金を供給しなければならないという事実、そして既にギリシャの主要銀行の預金の3分の1以上が流出し、ギリシャの主要銀行は、立ち行かなくなりつつあり、新たな貸出どころではありません(銀行本来の業務ができなくなってしまっている)。
そこへ、もし、ギリシャがユーロから離脱するとなると、EUとして離脱に関する法律的な手続きや条約の見直しに対して加盟国すべての国の批准が必要であり、更に実務的には、通貨切り替え期間の間、ギリシャの銀行は閉鎖しなければなりません。ギリシャ国内の全ての銀行閉鎖という事態になれば、相当の混乱が予想され、その混乱はギリシャ1国にとどまらない可能性があります(既に、ポルトガルやスペインの銀行では、預金者の預金引き出しが加速しています)。 こうした事態を考えれば、英誌エコノミストは、ギリシャ1国の救済だけでもあれだけ、揉めに揉めたのに、更なる大技をここで遂行することの困難さはよく分かるが、それでも敢えて「EU加盟国は、ユーロを崩壊させるのではなく、相当の困難を伴うことは承知の上で、ヨーロッパ各国の財政統合と、ヨーロッパの銀行の管理監督の一元化に着手すべきである」と提言しています。
もし、財政を統合すれば、ヨーロッパ全体の財政赤字比率は、ヨーロッパ全体のGDP対比80%となり、イギリスやアメリカのGDP対比で100%の財政赤字をも下回り、市場に安心感を与えるとしています。 また、今まで、ヨーロッパ各国の銀行の管理監督を怠ってきたのは、当然のことながら当事者である各国中央銀行や各国の監督機関の責任ではあるが、一方で、EUとして、こうしたハイレベルの問題に、その交渉の煩雑さから手を付けてこなかった責任はEU加盟国全てにあるとしています。
こうした観点から、EUの財政統合や、ヨーロッパ全ての銀行の管理監督について反対しているドイツ、オーストリア、そしてオランダを説得させる必要があり、更には、イデオロギー的に、今、ヨーロッパで広まりつつある国民の人気取り(極右)勢力の台頭を抑え込まなければならないとしています。
私たちは、20世紀前半に吹き荒れたあの愚かで歴史上最も悲惨な結果を導いたファシズムを、こんなにも憎んでいるもかかわらず、21世紀に入って、再びファシズムの亡霊をゾンビのように蘇らせようとしています。 そして、現在のヨーロッパの状況を見ていると、ドイツの哲学者ヘーゲルが言った「歴史から学ぶことができるただ一つのことは、人間は歴史から何も学ばないということだ」を思い出さざるを得ません。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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One comment on “ユーロは崩壊する他はないのか!?”
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歴史は自由意識の進歩である・・ヘーゲル・・
である以上・・
ゴタゴタしながら・・
デフォルトではなく・・デフォルメしていくのでは・・・?