2013/11/26 14:39 | 昨日の出来事から | コメント(0)
後手に回るオーストラリア
先日、このコーナーで「スパイ スキャンダルに揺れるオーストラリア」でもご紹介しましたが、今週号に英誌エコノミストにもそれに関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
そもそも、この問題は、読者の皆様もご存じのようにCIAの元職員であったスノーデン氏が2009年にオーストラリアの情報エイジェント(Australia’s Defense Signals Directorate: DSD) が、インドネシア大統領、その夫人とその身近な関係者の電話を盗聴した事をリークしたのが発端です(その意味では、アメリカ主要国35か国の要人の電話盗聴と同じ流れにあります)。
また、これはオーストラリア単独ではなく、Five Eyes (アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)の国々がお互いに連携して行っているものでもあった為に、当初、トニー アボット首相は、この問題は2009年当時の労働党(ケビン ラッド首相)が政権を担っていた時の話であり、更に、これは自国防衛の為に行った諜報活動であったとして、先日もご紹介しました「Australia should not be expected to apologize for the step we take to protect our country now or in the past」と議会で発言しました。
この議会発言に対して、インドネシアは一斉に反発し、 在オーストラリア大使をインドネシアに帰国させ、インドネシア外相のオーストラリア訪問予定をキャンセルし、 ようやく始まったばかりのインドネシアからのasylum seeker(亡命希望者)という名目のその実は「違法移民」問題は中断してしまいました。
さて、こうした事態になって困るのはオーストラリアであって、先日もお話したようにインドネシアからの違法移民対策に巨額の税金を投入しているオーストラリアは、今回の対応のまずさから、その修復の兆しすら見いだせていません。
最近になって、トニー アボット首相は、インドネシアのご機嫌なだめに遺憾の意を表明すると同時に、「インドネシアは我々にとって最も重要、かつ唯一の関係国である」と言っていますが、その白々しいいいぶりに、専門家は「首相就任直後のインドネシア訪問の際に、彼が、『インドネシアの主権を尊重する』といった言葉は、今となっては、不誠実以外の何物でもなかった」と指摘しています。
今回の件は、オーストラリアにとって、実に高くつくコストになりそうです。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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