2013/10/25 14:23 | 昨日の出来事から | コメント(2)
ヨーロッパ財政危機とアメリカの財政危機、どっちが性質悪い?!
今週号の英誌エコノミストに、掲題に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
読者の皆様もご存じのようにヨーロッパ、特に南ヨーロッパの国々の財政破綻危機は、2010年のギリシャの財政破綻危機に始まり、一時はEU崩壊の危機に直面しましたが、EU, ECB、更にはIMFの支援を受けて、今の処、小康状態を保っています。
一方で、アメリカの財政赤字上限法案に関するオバマ大統領と野党共和党とのバトルは、10月に入って政府機関を約2週間閉鎖し、10月17日のアメリカ国債のデフォルト寸前の10月16日なって、共和党が折れる形で、政府機関を来年1月15日まで再開し、財政赤字に関して2月7日までの財政赤字の上限引き上げることに合意しました。
これまでアメリカは、EUに対してさんざん彼らの機能不全を批判してきましたが、今回の件で、アメリカこそが機能不全に陥っており、その度合いは、「アメリカの方が酷い」と英紙エコノミストは指摘しています。 と言いますのも、 「確かにEUは、問題となっているヨーロッパの銀行の統合や、より高いレベルでの域内の統合(域内の財政統合)に関しては、遅々として進んでいないが、それでも、彼らは何らかの話し合いをして何とかしようとしている」としています。
その一方で、アメリカはどうかと言えば、大統領と民主党が、自らの言い分を主張するだけで、そこに話し合いの余地が全くなく、ただ、期限が来たかから目先的に財政赤字の上限を吹き上げ続けてきただけに過ぎないからです。
確かにアメリカの財政赤字は、足元的にはGDP対比3.4%と、ヨーロッパのそれに比べて半分にも満たないのですが、長期的に現在の財政赤字をこのまま増やし続けていくと、「2030年頃には退職したベビーブーマーへの年金や、医療保険を含めた社会保障の支払いに耐え切れず、アメリカの財政が破綻する」とIMFは予想しています。 こうならない為には、現在増え続ける財政支出をGDP対比11.7%も削減する必要があり、この削減比率の大きさは、世界の財政赤字のトップ ランナー「日本」のそれよりも大きくなってしまうのです。
こうした観点から、英誌エコノミストは、今回の「小さな政府」を標榜する共和党の行動に対して、ある種の同情はするものの、今回の『政治的戦略のまずさ』にはとても付き合いきれない」としています。 それが証拠に、現在の共和党の支持率は、1992年以来統計を取り始めて以来、最も低い28%まで急落していまます。
さて、本当に「ヨーロッパの財政危機とアメリカの財政危機で、どちらの方が性質(たち)が悪いか?」という議論は、私に言わせれば「どっちもどっち」のような気もします。 それよりも、この議論の中に「日本の財政危機の議論」が飛び込んできた暁には、それこそ「性質の悪い厄介な話」になることだけは間違いありません。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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2 comments on “ヨーロッパ財政危機とアメリカの財政危機、どっちが性質悪い?!”
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何処かの国・・
忘れていませんか・?
はい・・
中国・・・(笑)
前橋様、こちらでも有用な情報ありがとうございます。
で、中国に関してはペルドンさんのご指摘も首肯せざるを得ないところですね。
保8戦略(表記が違っていたらゴメンなさい)を保てなくなるどころか、既に人口が頭打ちになりつつあり、日本ほどの財政余力を蓄えないうちに、急激に少子高齢化・・・となれば、日本以上の厳しさのJapanaizationが起こり、世界規模への波及効果もとんでもなく大きいかも知れない。加えて、内憂をごまかすために、外患に目をそらさせようと、軍事力行使で対外進出・・・なんてことにならなければ良いのですが・・・