2013/08/29 14:58 | 昨日の出来事から | コメント(3)
英誌エコノミストがみたTPPの行方
日本ではTPPの事がどのように報道がなされているのかよくわかりませんが、インターネットなどを通じてなされている日本におけるTPPの行方に関する報道は、まるで情報統制がなされているかのように、相も変わらず関税5品目(米、牛、豚、砂糖、酪農製品)の堅持が掲げられ、それ以外のことは「交渉中なのでわかない」の一点張りに終始し、その一方では、TPP交渉の年内妥結を目指す為に日夜努力する姿だけが報道されて、結局の処、時間だけが空しく経過しているように思えてなりません。
そこで、第3者的な立場にある英誌エコノミストが書いているTPPに関する記事を見てみたいと思います。確かに、日本でなされている報道は間違いではありませんが、「TPPの交渉の現状は、実は年内妥結に向けてはかなり厳しい状況にある」と英誌エコノミストは見ているようです。
と言いますのも、そもそもTPP交渉は、当初は2012年末を目標に始まりましたが、WTOのドーハ交渉と同様に案の定、妥結期限が1年遅れて2013年末と変更されたのですが、その中で提案された交渉項目が全部で29章あって、なんとその内の15章はまだ、全くの手付かずの状態なのです!(これで、どうやって年内妥結ができるのか?!)
そこへ、今年の7月から最も厄介な交渉国、日本が参加することによって、交渉は益々複雑になっているのが現状なのです。日本は、先の選挙で公約に上げた手前、関税5品目に関しては一歩も譲りませんし、譲ろうとすらしていません。 これは、何も日本だけに限らず、各国、それぞれに譲れない項目を幾つも抱えているのが現状です。
さて、今後の行方ですが、楽観主義者の見解によれば、「TPP参加国の政治的情勢は、オーストラリアの総選挙が9月に行われる以外は、現在の交渉国の政権が大きく変わることがないので、何とか、交渉の枠組みを大きく変更することなく、妥結に向けて交渉を進めることが出来る」としています。
しかし、その一方で、悲観的な見方として、アジア開発銀行のJayant Menon氏が指摘するように「各国は、もういい加減に現実的な妥結点に向けて交渉を本格化すべき」と主張し、遅々として進まない交渉に苛立ちをあらわにしています。
しかし、実は、現在のTPP交渉が妥結に向かわない本当の大きな理由が他にあるのです。それは、今回のTPP交渉に世界第2位の経済大国中国が参加していないからなのです。 一部の報道によれば、アメリカは「中国はずし」を狙っているとする報道がありますが、それは大きな間違いで、現在、ブルネイで行われているRCEP(Regional Comprehensive Economic Partnership)には、ASEAN、中国、インド、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドが参加して、TPPよりも緩やかな関税撤廃交渉がなされており、こうした動きに対してアメリカは非常に警戒しているのです。
英誌エコノミストは、現在のTPP交渉において中国は参加していないが、アメリカの本意は、最終的にはTPPに中国も組み込みたい意図があるのではないかとしています。
このように考えてみますと、現在のTPP交渉妥結の道のりは更に遠くなり、各国の政治家は、「TPP交渉に参加した実績だけ」を政治的に利用するだけで、実は中身の決まらない交渉を空しく延々とやっているだけに過ぎないことが次第に見えてきます。
よって、この延長線で今後のTPPの行方を考えれば、TPP交渉の年内妥結など到底ありません。 最終的にTPP交渉が妥結に向かって大きく動く時は、中国が参加してきた時であり、それまでは、TPP交渉は各国の政治家のおもちゃのようにいじくり回されるだけとなりそうです。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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3 comments on “英誌エコノミストがみたTPPの行方”
ペルドン にコメントする コメントをキャンセル
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中国・・
参加しないでしょう・・
このハードル走・・
ゴール・・近づけば・・近づく程・・
ハードル高くなる・・・(笑)
アメリカは交渉によって他国と少しでも貿易が拡大発展することを望んでいるのでは、それ以上でもそれ以下でもないように思います、妥結と言っても何を妥結するのかも決まらないのに。
英字媒体を読解できないものですから、こういう情報はありがたいです。
先の記事の、南欧の銀行事情(特に小さな銀行の)も、ありがたかったです。
どっちも根は深く時間が掛かりそうですね・・・ σ(^_^;)…