2013/08/28 16:19 | 昨日の出来事から | コメント(1)
南欧銀行の苦境
ここにきて、EUの景気が上向きに転換し、これを受けて通貨としてのユーロが他通貨対比で買われて、ヨーロッパにはようやく薄日が差してきた感が出ていますが、その中にあって南ヨーロッパの中小銀行経営の苦境に関する記事が英誌エコノミストにありましたのでご紹介したいと思います。
今回のヨーロッパ信用危機が勃発する前のユーロ圏における銀行経営は、ドイツの大手銀行の資金調達金利とスペインの銀行の調達金利の差(スプレッド)は僅かに2~3bpポイントしかありませんでした。 しかし、2年前のユーロ危機が発生して以来、現在は150bp(1.5%)もの調達金利のスプレッドが開いています。
またドイツの銀行とイタリアの銀行のデフォルト スワップのスプレッドが300~350bpも開いたままで、特に小さな銀行のスプレッドは700bpも広がっている銀行がある程です。一方で、大手のスペインの最大銀行(サンタンデール銀行)のスプレッドは260bpに留まっています(それでもかなり大きなスプレッドには違いありませんが)。
ここからもわかるように、南ヨーロッパの中小の銀行は、日々の資金調達に高い金利を支払い、株式市場から資本金を調達しようにもあまりにも高いコストを支払わなければならず、とても域内の同業他行と競争できる環境にないのです。
その結果、こうした銀行からお金を借りている民間の中小の企業は、益々高い金利を支払って借りなければならない上に、十分な資金すら確保できない状態なのです。
こうした悪循環を断ち切る為には、英誌エコノミストは、まず、中小の銀行に資金を安く調達させるための仕組みが、EUの枠組み内でECBを中心に必要であるとしています。
更には、スペインには2009年時点で53もの銀行や「cajas」と呼ばれる貯蓄銀行があり、更にイタリアには700もの銀行があり、こうした過剰なまでの数に上る銀行の整理統合がどうしても不可欠であるとしています(しかしながら遅々として進んでいません)。
こうした状況は、1990年台の日本の銀行を取り巻く環境とウリ2つであり、あの頃は、何度も日本の景気回復が言われたにも拘わらず、本当の大底は2000年台前半(株価で言えば2003年)までかかり、その後も低迷を続けました。 こうした事を踏まえると、今のヨーロッパの一時的な楽観的な景気回復は、とても信用に値しないことは私達日本人が最もよく知っています。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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One comment on “南欧銀行の苦境”
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これから何十年も掛けて政治経済社会が改善調整されていくのでしょうね。