プロが語る世界情勢・政治・経済金融の最前線!

The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2012/05/23 06:51  | 昨日の出来事から |  コメント(14)

日本の国債格付けは、今や、中国や韓国を下回る


おはようございます。

読者の皆様もご存じのように、昨日、大手格付け機関フィッチが日本の長期信用格付けをAA−からシングルA+とし、更に今後の見通しをネガティブ ウオッチ(将来的に更に格下げの可能性がある)としました。

1990年台後半に、日本は、それまでのAAAからAA+に引き下げられて以来、日本政府は一貫して「一民間格付け会社の発表にいちいちコメントしない」スタンスを取ってきました。 あれから15年が経ち、昨日、フィッチが日本の長期信用格付けを引き下げた時も、政権が自民党から民主党に変わったにもかかわらず、相も変わらず官僚が用意したコメントを一字一句違わずに読み上げて片づけてしまいましたし、多くの読者の皆様も政府とマスコミのプロパガンダによってそのように考えられる方も多いのではないでしょうか。

しかし、今回の引き下げは、15年前の引き下げの頃とは様子が一変してしまっています。日本の周りの国の長期信用格付けを見てみますと、以前に、このコーナーで「東アジア主要国で最も貧しい国は日本!!」でもご紹介したように、購買力平価で測った一人当たりのGDPといい、今回の長期信用格付けといい、シンガポールに抜かれ、香港に抜かれ、今回の引き下げで中国本土の長期格付けに抜かれ、今や韓国と同じです。 しかも、韓国は、同じA+でも「ポジティブ」なのに対して日本は「ネガティブ」であり、日本は、長期格付けにおいて東アジア主要国の中で最も低い格付けの国に没落してしまいました。

そんな最も格付けの低い国、日本(政府)は、最近になって自分よりも格付けの高い国の通貨「ウオン危機の際には我が国は全面的に金融支援する?? 」と大見栄を切って発表していましたが、「笑止千万! 肩腹痛し!」とはこのことで、むしろ逆で、日本の通貨危機の際には中国元やウオンに支援してもらう日が来るのではないでしょうか。

こんな事を申し上げると、読者の皆様から「じゃあ、そんな没落した国の通貨「円」がどうして円高なのだ?!」とおっしゃるかも知れません。 私も以前はこうした問いに対して「どうして円高なのだろう?」と考えていましたが、昨年来のギリシャ破綻のプロセスを見ていて分かりました。

ギリシャの場合は、ユーロという単一通貨で自国の実力以上に割高な為替レートによって国際競争力を失い、やがて国家破綻の道を辿りました。 一方で、円の場合は、ギリシャの使っているユーロと違って自国通貨なので、表向きは自国の裁量でいくらでも為替水準を操作する事は可能ですが、実際には、アメリカの米ドル安政策の手前、対米ドルでは恒常的かつ半永久的に割高な通貨とならざるを得ないのです。 それは、まるでギリシャが、割高な通貨ユーロで自国経済を運営せざるを得なかったのと全く同じ構図なのです。

私の身の回りにも「円高のどこが悪い!」とあちこちで豪語して回っている人がいますが、もし、その円高が、購買力平価でみた一人あたりのGDPが世界でトップクラスであり、財政も健全で長期格付けがAAAの状態で円高であるならば、そう言っていいでしょう。

しかし、今や、東アジア主要国の中にあって、購買力平価で測った一人あたりのGDPが最も貧しい国にまで没落している国の通貨をもってして「円高のどこが悪い!?」と吠えるのは、まるで、ギリシャ人が「国家財政はボロボロで、国民は怠けていても、割高なユーロ建てのお陰で、我々の資産価値は非常に高く、しかも、高いユーロで買い物や海外旅行も出来るのさ!」と嘯いている(うそぶいている)のと同じであり、それはイソップ物語の「アリとキリギリス」のキリギリスそのものです。

そんなヨーロッパのキリギリス、ギリシャが究極的に辿りついた先は、連日のように私達がテレビで見ているあの政治的混乱と、目を覆いたくなるような経済的惨状です。

さて、東洋のキリギリスの行く末はいかに。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
現在有料版にはお申し込みいただけませんのでご了承ください。

当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。

14 comments on “日本の国債格付けは、今や、中国や韓国を下回る
  1. とがり より
    日本はダメですか?

    対外純資産253兆円、21年連続世界一の日本をギリシャと同じと言われても、何かピンときません。
    ギリシャも対外純資産が日本に次ぐくらいあるということですかね。

  2. ペルドン より
    蟻とキリギリス

    サマセット・モーム「蟻とキリギリス」・・
    読みましたか・・?
    逆の事が書いてあります・・
    ファーブルなら・・
    冬のある日・・キリギリスは・・お腹が空いた蟻に招かれて・・餌になった・・
    と書くでしょう・・
    蟻が日本で・・キリギリスが・・他所様の場合もあるでしょう・・

    ギリシャはユーロ参加後・・不動産バブル背景に・・公務員給料を倍に上げ・・政権党関係者を公務員に・・十人に一人が公務員・・年金も給料の九割・・独逸製品を買いまくった・・付けでね・・

    最近・・
    ペシニズム・・?
    そろそろ・・帰郷かな・・・?

  3. 月虹 より

    韓国は、他国に金を貸すほど金あるの?
    この間日本に外貨借りに来ましてよね?

  4. DAN より
    こんな見方はダメですか

    品質の良い適正価格の商品を節約しつつ買っている・・・だからGDPが低いとか?市場が成熟してるのもあるだろうけど・・・景気が良ければ購買力は変わるんですかね?

  5. 匿名希望 より
    分かりやすいです

    ほぉ

    日本はアリではなく、キリギリスだったんですね。

    で、アリはどこの国ですか?

  6. 日本人 より
    だから

    おっしゃるとうりだと思います。
    まずは、自覚が必要でしょうね。ただ残念なのは、だからこそ、こーしなくてはとの意見もなく、いかにも売国奴のコメントで気分悪いですね。
    出来ない理由、言い訳、歴史経済的な自虐史観ばかりで、発想がむなしい。
    たまには、前向きな提言してください。

  7. 前橋 より
    日本人様

    いつもお世話になります。

    私は、これまでも何度も提言してきました。

    国がどうのこうのといっても始まりませんのので、少なくとも私たち個人のレベル出来ること、あるいはやらなければいけないことを申し上げてきました。

    それは
    (1)韓国や香港に行って高級ブランド品を買ったり、飲み食いに散財するのではなく、自分や自分の家族、あるいは身の回りの人のスキル向上の為に投資すること。

    (2)特に、これからは、私たち、日本人は、日本の国内だけで仕事を得ても、それ相応に評価してもらえない可能性が高い為、外国へ行き、外国の企業で自分のスキルや能力を正当に評価して採用してもらえるようすることです。

    国は何もしてくれません。逆に国は、国民ひとり一人の合計にすぎません。
    なのに、今、私たちは、何かあると国や政治家を批判しますが、実は、心の中では「何とかしてくれるだろう」と甘えたところがあります。したがって、まず、そうした国や政治家を頼る気持ちを断ち切ることです。

    そして、今度は翻って、日本人様にお尋ねします。

    日本人様は、外国(英語)で暮らし、外国(英語)で仕事をして、世界の人と渡り合う覚悟と気概をお持ちでしょうか?また、それを可能とさせる語学力と知識をお持ちでしょうか?

    今、私たちが必要なのは、こうした覚悟と気概、そしてそれを実現させるための語学力と外国で働く人に負けない知識なのです。

    そのように、私は考えています。

    でも、こんな事を申し上げると、読者の皆様の多くは「英語なんて、、、」とか、「この年から外国暮らしなんてできない」といったコメントをたくさんいただきます。

    確かに、今までは、そんな悠長なことを言っても何とかなりました。

    でも、近い将来には、そんな悠長なことを言えないほど、この国は切迫してくると私は考えています。

    だからこそ、今、私たちの目の前で起こっている不愉快な出来事にも目をそらさず、それを踏まえて「自分は何をすべきか」をご自身に問い、そして行動を起こすべきではないでしょうか。

    もし、お言葉が過ぎていましたら、どうかお許しください。

    前橋 拝

    P.S 私は売国奴ではありません。そのお言葉だけは、ご撤回願います。

  8. 日本人 より
    前橋様

    初投稿させて頂いた日本人です。

    前橋殿のおっしゃるとうりです。と申し上げた。

    私は10年程前から隠居の身です。語学は全く駄目でしょう。(笑)これもだから?になります。

    海外在住、友人、甥っ子含め行かせてます。
    これも、だから?なんです。私自身、メーカ(技術職)出身で現地調整、商談等で渡り合ってきました。

    個人レベルで身を守る、綺麗ごと言えばそーなります。が私が言いたいのは、民間であれ、その長(船頭)が舵取りを誤れば沈没すると言う事なんです。人ひとりの力は弱い。

    前橋殿の提言には、自己保身及び自己満足が伺えたので、残念だったのです。

    甥っ子含め、若い世代の一部は日本を流れを変えようと懸命な者もいます。

    駄目駄目と言えば、いずれ駄目になります。
    投資?から見れば追従型で良いかもしれませんが。

    問題はその先です。個人レベルではまず問題意識の欠如が問題なんですが、非力ながら回りには説いてはいるんですよ。(これ嫌われるんですよね)(笑)

    売国奴、安易に使ってしまったが定義そのものが曖昧ですわな。これも投資の立場と一国民では見方が変わるのでしょうが、投資、金融業界とは無縁の外の目からみると、内容がそのようにお見受けしてしまったのです。

    今後の前橋殿のご発展お祈りしております。

  9. えま より
    そろそろボーズ

     そうですか?
    世界で、日本ほど恵まれた国ってないですよね。

     そもそも破綻するなら、それいつなんでしょう?

     10年後? 20年後? はたまた50年後?
     
     「対外純資産は、相変わらず増え続け、対外収支黒字をたたき出す国がつぶれるときって、それはどのような理屈で成立しているのでしょうか?」
     

     「いつか北朝鮮や中国が攻めてくるし、富士山が爆発して、原発がすべて地震でやられるから、起きます。」というなら納得ですけど、経済ブログとしては・・・ですね。

     新聞、雑誌、テレビ、公共性の高いブログで、破綻論を展開していた人は、坊主ですよ。

     経済を萎縮させるこの論調、その結果、苦しんだ若者に対して、素直に謝るべき時ではないでしょうか。

  10. 前橋 より
    えま 様

    いつもお世話になります。

    まず、ご質問の「日本ほど、世界で最も恵まれた国はなのですよね?」とお尋ねですが、私は、世界中を旅して比べたことがないので、正直、分かりません。

     確かにとてもいい国ですし、私は日本が大好きですし、日本に生まれて来てよかったと思っています。 

    ですが、これは個人的な要素もかなり含まれていますので、もっと客観的に「世界でいい国かどうか」に関する資料としては、「世界で安全な都市はどこか?」あるいは、「世界で最も幸福度の高い国はどこか?」 あるいは、今日のブログにも書きましたが、「世界で最も安全な投資先はどこか?」などの資料をご覧になれば、ある程度、見えてくるのでないでしょうか。

    残念ながら、こうした資料からは、日本が最もいい国という客観的な答えは出てきません。

    次に、「そろそろボーズになれ」とのことでしたが、私は、自分の思惑をいているのではありません。

    IMFが出した購買力平価で測った一人当たりの日本のGDPは、東アジア主要国の中で最低であるという事実、そして、大手格付け機関が出した各国の長期信用格付け(具体的には国債の格付け)が、東アジア主要国の中で、最も低いという事実を述べているだけです。

    そのことが、どうして若者を委縮させるのでしょうか?

    今回のブログの「日本人様」から頂いたコメントに対してお返事しましたが、これからの若者は(別に若者に限りませんが)、国や政治家を当てにすべきではありません。

    また、私達の若い頃のように、「忍耐、根性、努力、そして理不尽」を背負って日本の企業にしがみつくことなく、ちょっと大変は大変ですが、世界に自分の能力と可能性を求めて切り開いてほしい」と励ますことのどこが若者を委縮させうのでしょうか?

    確かに、国が衰退していく姿や、格付けが下がっていく話は不愉快ですが、だからと言ってそうした客観事実に目をそむけてしまうもいかがなものでしょうか。 

  11. mo より
    アリとキリギリス?

    こんなポジショントークを続けては信用丸つぶれです。アリとキリギリスでたとえるなら、どう見ても日本はアリです。世界で一番アリ度が高い国(世界)と言っていいでしょう。一方ギリシャはどう見てもキリギリス度が最も高い国の一つです。世界中のほとんど全ての国はその中間にあります。もちろん経済をうまく回すためにはアリとキリギリスがほどよく同程度混じっていることが必要ですから、日本はギリシャの方向に向かう必要があり、ギリシャは日本の方向に向かう必要がありますが。

  12. 前橋 より
    mo 様

    いつもお世話になります。

    貴重なご指摘ありがとうございます。

    確かに日本人は、かつては名実ともにアリでした。
    ですが、最近の日本は、財政規律や国際競争力といった点で、かなりギリシャに近いキリギリスになってしまっていないでしょうか?

  13. 通りすがり より
    中国元やウオンに支援?むりぽ。

    世界の一人当たりの購買力平価換算のGDP(USドル)ランキング

    http://ecodb.net/ranking/imf_ppppc.html

    見てみましたが、確かに日本の購買力は落ちています。ただ、購買力ですから、アメリカ人の様に貯蓄をせず、物量主義で生活する人種と、日本人のようにせっせと貯蓄に走り「もったいない」を合言葉に節約に励む人種を比べて購買力が低いと言われても、当然ではないのかな?としか考えられないのですが如何でしょうか?

    日本が国債バブルなのは認めるところなので、格付けが下がるのも有りでしょう。また、円高なのは、ぐっちーさんが言われる様に国際的に信頼のあるドル、ユーロ、ポンド、円の場合、今安全と思われるのは円だからでしょう。

    前橋氏の言われる「一人当たりの購買力」と「国債の格下げ」と「円高」が私には別々の理由に見えるのですが、この3つが関連付けされ総合的に日本が投資先として危ないと結論付けられた経緯を知りたいです。

    私も、国債バブルがはじけた時には、欧州うと違い日本は被害を被る国が他にあまり無い為、見捨てられるのではないか?と危惧はしています。ただ、中国や韓国は救いの手なんて出してはくれないと思いますけどね・・・???

  14. 製造業はもう古い より
    現実を直視すべき

    かんべえさんがブログで仰られていましたが、技術ではなく、そこそこの技能があれば製造業は成り立つそうです。したがって、技能という差がつきにくい要素に支配される以上、製造業が他の東アジア諸国に追い抜かれるのはいた仕方ないことだと思います。

    これからの時代は、10年も前に定年された元技術者さんのように一所懸命働いてモノを作れば世界から評価されるような甘ったれた時代ではありません。若者に今の時代の厳しさを知らしめるためにもブログ主様が仰られるように現実を直視させた方がいいと思います。

コメントを書く

* が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。