2013/04/23 14:43 | 昨日の出来事から | コメント(0)
金の暴落はデフレの兆し?!
今週号の英誌エコノミストに4月12日~15日にかけて起こった世界的な金の暴落に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
金は昨年10月には1800ドル手前まで買われ、その後は1600ドル台で揉み合っていたのですが、4月に入って1600ドルを割り込み、4月12日から15日にかけては2日間で200ドル以上も暴落して1300ドル台まで値を下げました。 その影響を受けて、株価も下落し、為替市場では円が一時的に大きく買われて、この時は私も株も為替も損をしてしまいました。
私の住むオーストラリアでは、金を含めた鉱山価格の値動きは豪の株価に直結している為、資源価格の値動きには特に敏感です。 金だけでなく、今年に入って原油価格は10.6%下落し、金と同様に資源価格の指標とされる銅も8%も下落しています(金は、その後、反発していますが、銅は下がり続けていることが気になります)。
では、こうした資源価格の下落の意味するところは何でしょうか?
まず考えられることは、「今後、世界経済がデフレになって景気が悪くなり、資源などの価格が下落すると人々が懸念している」ことが考えられます。 しかし、この考えには説得力がありません。 と言いますのもFRBは引き続きQEIIIを継続していますし、日銀は異次元の金融緩和を始めたばかりだからです。
では、次に考えられるのは、「これまで金に逃避していた資金が、今後は景気が回復するとの期待感から株式等の他のリスク商品に資金が流れた」という考え方です。 しかし、これも説得力がありません。 と言いますのも、もし、今後は景気が良くなって株式が上昇するならば、債券は売られて債券価格が下落する(利回りは上昇する)筈だからです。 ところが、債券価格は今年に入ってからは低下気味に推移しており、こうした考えを正当化するものではありません。
結局の処、今回の金の暴落のような急激な価格の変化に対しては、経済的にこれを合理的に説明できるものはなさそうです。
そして、こうした時にいつも使われる説明としてあるのが「実需の売り」の話で、例えば、「金を保有している中央銀行が売却した」と言った類のものです。今回の暴落ではキプロス中銀が保有している金を売ったとの噂が流れていますが、キプロス中銀の保有している金の残高は14トンとたかが知れています。 別の説明としては、モルガン スタンレーによれば、金の個人保有者やヘッジファンドを含めたプライベート セクターが今年に入って249トンも売却した事が今回の暴落につながったと説明しています。
英誌エコノミストは「いずれにせよ、金は、債券のようにクーポンがあるわけでもなく、金は価格が上昇している内は保有価値があるが、ひとたび、価格が下落し始めるとその保有を正当化させるものは何もない」としています。
これと同じことは私たちの通貨「円」にも当てはまるのではないでしょうか。 即ち、「『円』は、他の通貨(例えば豪ドル)のように金利が付くわけでもなく、『円』の価格が上昇している内は保有価値があるが、ひとたび、『円』の価格が下落し始めると、その保有を正当化させるものは何もない」と。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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