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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2013/04/18 15:09  | 昨日の出来事から |  コメント(2)

自由主義ファイター: マーガレット サッチャー


おはようございます。

昨日、イギリスではマーガレット サッチャー前首相の葬儀が執り行われましたが、今週号の英誌エコノミストに彼女の首相としての業績に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

読者の皆様もご存じのように、1970年代のイギリスは、労働党や労働組合の力が強く、ストライキが頻発し、民間企業の国有化が進んで経済全体が非効率し、景気は低迷する一方でインフレは2ケタ台と高く、「イギリス病」と言われるほどスタグフレーションに苦しんでいました。

そんな中、1979年に彼女が首相となり、彼女が取った政策理念(サッチャーイズム)は、徹底した競争原理の導入と規制改革を通じて「小さな政府」を目指すことにありました。おかげで、1975年には27%もあったインフレ率は1986年には2.6%まで下落し、所得税の最高税率も83%から40%まで低下しました。 また、外交面では、当時のソビエトをはじめとした社会主義国を平和裏に自由主義経済に移行させる橋渡し的な役割を担いました。

その一方で、古い産業は規制緩和と自由化によって壊滅的な打撃を受け、特にイギリス北部のスコットランドを中心に石炭関連で働いていた人々は職を失い、加えて、彼らの多くが新しい職に就けなかった為に、いまだにサッチャー前首相を恨んでいる人は多く、今回の葬儀の是非を巡っては国を2分するほどの論争となっています。

英誌エコノミストは、彼女の過去の栄光と影はともかくも、サッチャー首相の取った政策理念(サッチャーイズム)は、現在のイギリスのみならず世界に大きな影響を与えていると指摘しています。

まず、一つ目は、現在のイギリスにも厳然と継承されている彼女の政策理念「ユーロとは距離を置く政策」です。 イギリスが、EUと一定の距離を取る政策は彼女が判断した政策理念であり、今の処、現在のEUがEU通貨危機に苦しんでいるとことをみれば、彼女の判断は正しかったと言えますが、果たして、もっと長期的な観点からもて「イギリスが今のようにEUにコミットしないことが本当に正しいかどうか」は歴史の判断を待たなければわからないとしています。

その次の問題は、EU加盟をめぐるイギリスの問題にとどまらず、イギリスも含めた全ての先進国に当てはまるものです。彼女の政策原理の根本には、「財政赤字は削減して『小さな政府』を目指さなければならい」と言った考えがありましたが、あれから30年以上たった今、政府の役割(GDPに占める政府支出の割合)はますます拡大し、それが、今や南ヨーロッパの国々の財政破綻問題となって表面化しています。 

しかも、こうした財政赤字に苦しむ国々をはじめとする先進諸国は、「自らの力で成長戦略(規制緩和と競争原理の導入)構築を躊躇い、まるで他人任せのように世界経済が勝手に経済成長してくれることで、自らの財政赤字が目減りすることを期待しているように見える」と英誌エコノミストは警告しています。

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2 comments on “自由主義ファイター: マーガレット サッチャー
  1. ペルドン より
    サッチャー嗚呼・・サッチャー

    とあれ・・
    人頭税導入計り・・
    背中・・刺された・・
    小さな政府・・恵まれぬ階層・・切り捨て・・繋がる・・

    英・EU・・一卵性双生児・・基盤・・ローマ帝国・・
    財布は別・・
    正しい選択では・・

    先進諸国・・英含め・・日和見主義なのです・・経済も・・・

  2. st より
    シェール革命で何もかも変わる。

    冷静に現在を考えるとシェール革命で人類は永遠に石油文明を謳歌することが出来ることが確定した、オートメーション化で物が不足することも高価なものでもなくなった、デジタル革命でその一分野のネットで人類は文化的な暮らしを手に入れた、もう人類は何も心配することはない、もうすでにアメリカはこのことに気付いているし、これを踏まえて政治経済社会を変えていこうとしてるんだろう、日本も異次元だとか言わずに冷静に地に足を付けて考えた方がいいのではないか。

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