2013/01/31 06:40 | 昨日の出来事から | コメント(1)
通貨安戦争の行方
今週号の英誌エコノミストに主要各国の通貨安政策に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。
2008年のリーマンショックに端を発した世界金融不況の後、アメリカをはじめとする主要各国は自国通貨安政策を推進して自国の輸出産業を後押しすることで景気の景気を回復させようと躍起になりました。 そのおかげで、リーマンショックの影響を直接受けることのなかった発展途上国通貨や日本円をはじめとする一部の先進国の通貨(ノルウェーのクローネやスイスフラン)は、この煽りを受けて自国通貨が高騰し、2010年に当時のブラジルのGuido Mantega財務大臣が、当時の状況を指して「これは通貨戦争である」と指摘したほどでした。
それが、ここにきて日本では、アベノミクスの登場によって、明確な円安政策宣言(円安戦争布告)によって、円は78円台から90円台まで急落しているのは読者の皆様もご存じの通りです。 そして、これ程の短期間での急激な円安(率にして約14%の急落)は、1971年以降のブレトン=ウッズ体制崩壊後では、5番目に大きな下げ幅率となっています(こうした急激な円安の副作用がいずれ出てくる)。
そして今後はこのばっちりを逆に受けて、2010年のギリシャ危機に端を発したユーロ暴落ではEU体制そのものの崩壊懸念にまで発展した通貨としてのユーロは、2012年後半から2013年にかけて大きく買われ、対円では35%近く、更には対米ドルでは10%以上のユーロ高となり、それまでのユーロ安の恩恵に預かっていたドイツを初め、スペインやイタリアなどの輸出産業にダメージを与え始めています。
このように為替を通じた恣意的な歪みは、次の新たな歪みを生じさせます。 このことを英誌エコノミストは過去の通貨安戦争の経験則に照らし、「一連の先進国の通貨安競争の反動で、発展途上国や資源国の通貨が高騰し、そのおかげでそれらに国が輸出している穀物や資源が高くなりすぎ、それがいずれは暴落し、そのことが、また、新たな“異常な事態”を引き起こすことになる」と指摘しています。
ちなみにFT(Financial Times)は、最近の社説の中で、「各国が自国の判断で通貨安政策を行うこと自体は通貨戦争でも何でもない」とこうした考えを一蹴していますが、逆にそういってしまうと、通貨安政策の最終的なツケが何処にそのしわ寄せが来るかといった問題を覆い隠してしまいます。
その意味では、私は英誌エコノミストの考え方を支持しますし、世界各国が、表向きでは、総花論的に「世界の国々の平和と発展」を謳いながらも、いざ自分達の調子(景気)が悪くなると、そんな綺麗事は吹き飛んで、自分達のコストやツケを、弱いもの(発展途上国)に負わせてきたこれまでの歴史は21世紀に入っても何ら変わらないようです。否、それどころか、最近では、益々、それが露骨になってきているように思えてなりません。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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One comment on “通貨安戦争の行方”
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交易は為替と関税でコントロールすべきで、関税ゼロの自由貿易は間違っているのでは。