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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2012/03/23 05:57  | 昨日の出来事から |  コメント(1)

アルゴリズム円安?ヘッジ ファンド暗躍?!それとも??


おはようございます。
(今回の内容は、有料サイトご購読の皆様にはウィークリー ミーティング319で記載させていただいた内容と同じです)

読者の皆様もご存じのように、最近、米ドルが買われています。 また、あれほど円高一辺倒であった日本円が、他通貨対比で軒並みに売られています。 この動きに対し、読者の皆様は「何があったのか?こうした動きは一時的なのか?それとも、今後も続くのか?」と不思議に思われている方も多いと思います。

私のように、テクニカル分析を中心に売買している者にしてみれば、円が買われても売られても、テクニカル分析に合わせて売買するだけですが、世の中の多くの方は、やはりそのファンダメンタルズ的な動きを理解(あるいはご自身で納得)しないと売買できない方も多いと思います。

そこで、今日はそのファンダメンタルズに為替の動きを説明する幾つかの考えをご紹介したいと思います。

(1)アルゴリズムによる円安
これは、しばしば登場する説明の一つですが、これまでのファンダメンタルズでは説明できないような円安が進んでくると、決まって「システム売買で米ドル買い、もしくは円売りのシグナルが出て、機械的に米ドルが買われている(あるいは円が売られている)。こうした流れは、本来のファンダメンタルズと違った動きなので、長続きはせず、いずれ再び円は買われるであろう」とするものです。

こうした後講釈的な説明は、それまでのファンダメンタルズでは説明できない動きによって損をしてしまった人の心を癒す、あるいは投資家向けのファンドマネージャーからの「弁解」としてよく使われてきましたし、現在もよく使われます。

確かに、最近の調査では、EBS(電子ブローカー 取引)における人間の判断による売買の比率は全体の55%程度に留まり、アルゴリズムによる売買は45%程度と推計されます。 ちなみに2007年の時にはアルゴリズム売買の比率は27%程度でしたのいでその比率が高まっている事は事実のようです。 加えて、ギリシャ財政危機がひと段落して人間による売買が減少したところに、アルゴリズムの売買だけがそのまま残っていると、益々、アルゴリズムによる売買比率が高くなり、より活発な循環が働いていると言うのです。BISの報告によれば、為替の世界でのアルゴリズム売買(特に超高速売買)の割合は約25%を占めており、株式のマーケットでは、アメリカでは56%、ヨーロッパでは38%、アジアでは10〜30%程度となっています。

ここからわかる事は、今の時代は、人間が「あ〜でもない、こうでもない」と思案して売買する時代は、もう過ぎて、「私達はアルゴリズム(システム売買:もしくは売買のルール化)の時代に入っている」と数字からも分かります(クロコダイル通信の売買ルールも「ある意味でアルゴリズム的売買」と言っていいと思います)。

(2)ヘッジ ファンド暗躍説
これも後講釈的な説明でよく使われますが、「今、こうしたファンダメンタルズ的な動きと違う動きをしているのは、これまで円を買ってきた投資家や投機家を損させる為に、ヘッジ ファンドが徒党を組んで大量の米ドルを買って仕掛けている」とするものです。 

2008年以降のリーマン ショック以降、銀行がヘッジ ファンドへの貸出を絞ったために、ヘッジ ファンドは、かつてのようなレバレッジを掛ける事が出来なくなって(銀行からお金を借りて自己資金の何十倍もの資金を相場に投入する事が出来なくなって)、以前のような市場プレゼンス(存在感)がなくなったと言え、こうした説明が今もって幅を利かせています。 と言いますのも、確かにかつてのようなヘッジ ファンドの勢いはなくなりましたが、ヘッジ ファンドの売買比率は、市場取引全体の25%程度を占めると言われており、今もって侮れない存在である事には間違いはありません。

さて、以上が、世間一般的に言われているファンダメンタルズで説明できなると後講釈的に言われる主な説明ですが、先週号の英誌エコノミストに現在の為替や株式市場の値動きに対して、こうした説明とは違ったアプローチがありましたので、ご紹介したいと思います。

それは、皮肉にも?!著名なヘッジ ファンド マネージャーの一人Ray Dalio氏が、彼の運用として使っているファンダメンタルズを指標化(モデル化)した分析で、それを第3の説明としたいと思います。

(3)ビジネス サイクル(Business Cycle:景気サイクル)とデット サイクル(Debt Cycle:債務サイクル)
彼の考えによれば、経済は、目先的な「5〜8年のビジネス サイクル(景気循環サイクル)」と、「50〜70年のデット サイクル」で説明できるとしています。

ビジネス サイクルとは、景気循環サイクルの事ですので、中央銀行の金融調節によってこれをコントロールする事が出来ます。 例えば、景気が悪ければ金融緩和をして(政策金利を引き下げて)経済を刺激し、景気が過熱しているときには政策金利を引き上げて(金融を引き締めて)、景気の過熱感を冷やします。

一方で、債務サイクルでは、企業や国が、債務(借金)を大きく膨らませ過ぎた為に、企業の倒産や国の財政破綻の危機に直面し、結果としてこれを是正するための借金圧縮(deleverage)に迫られます。 しかし、これに対して資本の出し手(株式の引き受け手、国の場合であれば国債の買い手)、あるいは貸出(ローン)の出し手が不足(もしくは不在)となり、 いくら中央銀行が政策金利を低くしても「資金の借り手」と、「資金の出し手」のギャップを埋める事が出来ない状態に陥ります。 また、デット サイクル(債務サイクル)の特長は、一度これに陥ると、生涯続く可能性があり(それほど長期期間かかり)、更には、この期間中に政治家の理解不足と、政策の失敗を繰り返す傾向があります。

Dalio氏によれば、「景気循環による景気の低迷であれば、中央銀行が政策金利を引き下げれば、景気は回復するが、デットサイクル(債務サイクル)による景気の低迷の場合には、債務の削減(場合によっては債務の帳消し)、財政緊縮、更には富の移転(増税による豊かな人から貧しい人への所得移転)等のバランスのとれたコンビネーションが必要であると指摘しています。

しかし、彼は「何よりもデット サイクルによる景気の低迷に対処するには、まず大量の紙幣を印刷する必要があると指摘しています。 しかし、第一世界大戦後のドイツのように、極端に大量の紙幣を印刷すると、ハイパー インフレーションを起こして国家が破綻し、 一方で、紙幣を僅かしか印刷しないと、今回のギリシャのようにデフレに陥ってしまい、これも国家財政破綻危機に直面してしまう」とコメントしています。 つまり、彼に言わせれば、デッド サイクルによけるデレバレッジ(deleverage)に対処するには、「何よりも相当量の大量の紙幣を印刷する必要があると同時に、その他の政策のとのバランスが重要である」というのです。

そして、この延長線上で、現在の為替市場や株式市場の動向を考えてみると、今年に入ってECBが金融緩和をし(大量の紙幣を印刷し)、EU及びIMFがギリシャに資金を供給し、ギリシャは財政債務の圧縮と先延ばしをしたということは、目先的には、デット サイクル(債務サイクル)のダウンサイド リスクが無くなってきた事を意味し、それに代って、ビジネス サイクル(景気循環サイクル)がアメリカを中心に上向き始めたと考えれば、現在の米ドル高と株高は説明できるとしています。

つまり、現在の為替や株の動向は、「アルゴリズム売買」でもなければ、「ヘッジ ファンドの仕掛け」でもなく、「市場の関心がデット サイクルからビジネス サイクルに移行したからだ」と、「著名なヘッジ ファンドのボス」が言っているのです。

そして、彼は「今後、スペイン、ポルトガル、イタリア、アイルランドの債務のリストラクチャリング(一部債務の放棄)はあるだろう。しかし、もう、今回、我々が経験したギリシャ問題のようなパニックにはならない。何故ならば(経済が混乱するような)混沌(Chaos)を我々は経験し、その後、我々はこれを何とか対処したことによって、そのリスク(無秩序的なデフォルトリスク)が減少したからである。 故に、我々は、もうこうした危機をテーマに売り仕掛けをしていない」と言っています。

彼の言葉によれば、今後は、ビジネス サイクルに注目する時間帯が来ています。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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One comment on “アルゴリズム円安?ヘッジ ファンド暗躍?!それとも??
  1. ペルドン より
    それとも・・??

    市場は・・多面人格性が・・
    理性的に追いかけても・・
    熱情的に追いかけても・・
    裏切られるのでは・・?

    人間の欲望が・・エネルギー化・・渦巻いているのでは・・・??

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