2012/11/20 06:08 | 昨日の出来事から | コメント(1)
ユーロ危機の時限爆弾は、フランス?!
今週号の英誌エコノミストに「ユーロの中心にある時限爆弾」と題して、将来のユーロを維持できるかどうどうかの核心部分は、実は、ギリシャやポルトガルでもなければ、スペインやイタリアでもなく、フランスの財政危機によるユーロ崩壊のリスクであると紹介しています。
そもそも統一通貨ユーロを持ち出したのは仏ミッテラン大統領の時であり、当時の西ドイツが東ドイツと統合されてその政治的、経済的影響力がヨーロッパの中で突出することが容易に予想され、フランスの相対的地位が低下することを避けるために提案されたものでした。 その後の統一通貨ユーロ誕生によって、フランスはユーロ通貨の恩恵に浴し、例えばフランス国内金利は、ドイツと同じく非常に低い水準にあり、個人や企業の調達コストを引き下げることが出来ました。 また、最近までは、フランスはEUの中にあって政治的にも経済的にも除くドイツにおいて他のユーロ加盟国に比べて優勢を維持しています。
しかし、現在のフランスは、昔から営々と続いてきた中小零細企業の多さによる効率の悪さ、また、高賃金と手厚い労働者保護による労働市場の硬直さ(フランスの失業率は10%ですが、若者の失業率は25%と非常に高い)、更には高税率(所得税の最高税率は75%!)をかけられた企業家はその税金の重さゆえに国外脱出を図り、おかげで国内の新しい企業は極端に少なくなってしまい、その結果、1990年代にはGDP対比で22%しかなかった財政赤字が、今や、GDP対比90%近くまで悪化しています。
最近のIMFの報告でも「フランスの(財政危機)リスクは、スペインやイタリアの背後に控えている」と警告しています。 当のフランスのオランド大統領ですが、こうした批判や警告を受けるまでもなく、彼なりには手を打っていて、企業家であるLouis Gallois 氏の提案に沿って企業の社会負担の軽減を含む幾つかの改革案の推進を約束しています。 しかし、オランド大統領の出身は、元々は左派(社会主義的な考え)であり、これまでのサルコジ氏やその前任の大統領のように、自由主義的な考えや労働者に負担を強いるような政策には及び腰です。
一方で、今や名実ともにEUの盟主となったドイツですが、そのドイツもかつては東西ドイツ統合後の東ドイツの効率の悪い経済を抱え込んで景気は大きく低迷しました。 しかし、その後の大変な努力とコストを払って(とくに労働市場の規制緩和や企業家の活動を支援することによって)、現在のような骨太の競争力のある経済に復活したのでした。
英誌エコノミストは、「オランド大統領が、これまで30年近く歩んできたフランスの硬直した社会を、純粋な意味で改革しなければ、投資家からも、そしていずれはドイツからもその信頼を失うであろう。 そして、これまでの幾つかのヨーロッパの国の財政危機に対する市場の反応を見てきたように、ひとたび市場のセンチメントが変われば、その反応は非常に早く、場合によっては来年にも市場からの攻撃を受けるかもしれない。ユーロの中心に仕掛けられた時限爆弾が破裂しない為のオランド大統領に残された時間は長くない」と締めくくっています。
「来年のことを言うと鬼が笑う」と言いますが、来年は、いよいよ、ユーロの本丸フランスを巡って通貨ユーロの壮絶な戦いが待っているかもしれません。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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One comment on “ユーロ危機の時限爆弾は、フランス?!”
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歴史的にも・・
不仲な・・英国と仏蘭西・・
隙を窺っては・・
仏蘭西の足を・・キック・・
EC脱退・・仄めかす・・
リチャード師子王・・
典型的な英国騎士道の華・・鑑・・
フランス語しか・・離せなかったのに・・
市場の狼・・
次の獲物の・・臭いを嗅いだか・・
それにしても・・
英エコノミスト・・誘導するな・・・(笑)