プロが語る世界情勢・政治・経済金融の最前線!

The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2012/10/24 06:03  | 昨日の出来事から |  コメント(0)

実質金利が低いからと言って株は買えない?!


おはようございます。

今週号の英誌エコノミストに掲題に関する記事かありましたのでご紹介したいと思います。

実質金利が低い状態というのは、 一般的には景気が悪くて個人消費は低迷し、企業家も投資を控えている為に起こる現象であり、、こうした実質金利が低い時の状態の時、その時の株式市場にとってプラスに働くのであろうか、それともマイナスに働くのであろうか。 

投資家は低い金利の状態で債券や預金で金利収入を得るよりも株式市場に投資してより大きなリターンを狙うことを考えるかもしれない。 そして、思惑通り株価が上昇し、より多くのリターンを得ることが出来れば、その分、多くの消費にお金を使い、それが企業の業績に反映して好決算となり、それが更なる投資家からの資金を呼び込んで株価はもっと上昇するかもしれない。 その一方で、「低い実質金利が低い」という事は、将来的には景気が更に悪化することを示唆していると判断すれば、企業業績は益々悪化することが予想され、投資家は株式投資を更に控えるかもしれない。 実は、2012年のアメリカの株式市場は、FRBによるQE3の超金融緩和政策によって実質金利がマイナスになっている中、この2つの思惑の中で揺れ動いているようである。

そこで、バークレイズ キャピタルが行った1932年から2012年までの間における実質金利が非常に低かった時期のその時の株価の推移を検証してみると、過去に実質金利がマイナスの年が33年あり、その間の平均的な株式のリターンは2.3%しかなかったのですが、 その一方で、実質金利がプラスの時の平均的なリターンは、年換算で6.2%もあったのです。 つまり、実質金利が低いからと言って株式投資に走っても、思うほど利益を上げることが出来ない可能性が高いことを検証結果は示しています。

更に、エール大学のRobert Shiller 教授が計算したところによれば、現在のアメリカ株の景気循環勘案後の配当利回りは、過去の平均的な配当利回りに比べて割高なのです。

英誌エコノミストは、「投資家の中には、現在の実質金利の低さは、絶好の株式の買い場と考えるかもしれないが、歴史の語るところによれは、実質金利の低さが絶好の買い場とは限らない」と結論付けています。

読者の皆様の中には、「何を今頃!そんなことは言わずと知れたこと。 我々日本人は、過去20年間の日本株投資で痛いほどこのことを経験したではないか!」とおっしゃるかもしれません。 しかし、注意しなければいけないのは、日本の場合、過去20年間の名目金利は確かに超低金利でしたが、物価勘案後の金利(実質金利)は、逆に非常に高かったのです。 その点において「現在のアメリカの実質金利の低さ故に株が買えるか?」と言った議論とは一線を画する必要があります。 つまり、(アメリカのように)「実質金利が低くても株価が上がるとは限らないのに、ましてや(日本のように)不景気の下で実質金利が高くてはますます株が上がる筈がない」というのが、正しい認識のようです。

クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
現在有料版にはお申し込みいただけませんのでご了承ください。

当社に無断で複製または転送することは、著作権の侵害にあたります。民法の損害賠償責任に問われ、著作権法第119条により罰せられますのでご注意ください。

コメントを書く

* が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

いただいたコメントは、チェックしたのち公開されますので、すぐには表示されません。
ご了承のうえ、ご利用ください。