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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2012/10/19 06:58  | 昨日の出来事から |  コメント(1)

世界的な世代間格差の解消にはインフレが有効?!


先週号の英誌エコノミストに「(社会を)食いものにする世代」と称して、戦後のベビー ブーマー(日本では団塊の世代)が、様々な要因(必然的なものもあれば偶発的な要因)もあって、卑近な言い方をすれば非常に「もらい得」をしており、その一方で、現役世代(若者の世代)は、非常に負担を強いられており、 いわゆる世代間ギャップは、日本に限らず「全世界的な現象」として取り上げていました。

例えば、1964年以前生まれた人の割合は全世界人口の41%を占め、政治的にも経済的にも彼らの影響力は非常に大きなものとなっており、彼らが、現在、享受している恩恵は、現在の若者の世代には決して受けることの出来ない恩恵も数多くあり、この世代間の不公平を解消することは非常に困難であると指摘しています。

例えば、団塊の世代の人々は、戦後、未曽有の世界的な株価上昇の恩恵を受けており、その一方で、現在の若者の世代にはその恩恵はなさそうである。確かに、足元的には株価は上昇していないが、それでも2006年から2010年の間の株価の下落は、2.6%に過ぎない。それどころか、今や、彼ら(団塊の世代)は、それまで保有していた株をリタイヤ後の老後資金に充てる為に常に株を売却したいニーズがあり、それが株の売却圧力となって株価の上昇の足を引っ張っている。

更に、彼ら(団塊の世代)は、税金の上でも恩恵を受けた。例えば、アメリカでは1981年には税率負担率は21%であったが、その後の景気後退により2011年には税率負担率が11%程度まで下がっている。 その一方で、65歳以上の高齢者は、彼らの医療費として国からUSD333bnを受け取っている一方で、現在25歳の若者は、現在、65歳以上の人々が負担した医療費の17倍もの医療費の負担を強いられている。

加えて、彼ら(65歳以上の高齢者)は、大量の資産を保有している一方で、若者は、大幅な債務(大量の借金や様々な負債)を負わされている。 また、グローバルには、先進国の借金が軒並み90%を越える国が大半となっている。

ハーバード大学のエコノミストの試算によれは、国の債務が90%を越えてくると、経済成長率を1%押し下げ、社会インフラに対する投資も1960年のGDP対比3%から2007年の1%にまで低下してしまい、益々、デフレ圧力がかかる状態に陥ると指摘しています。

こうした先進国の財政危機に対して、IMFは「アメリカの財政再建には35%の財政支出の削減と35%の増税のポリシーミックス(consolidation)を行う必要がある」としていますが、政治的には団塊の世代の反対が大きく出来そうにありません。 更に悪いことに彼らの影響力(選挙に占める彼らの割合)は、現在の17%から2030年には26%まで上昇し、益々、彼らにとって不利な政策を打ち出せません。

そこで、これを政治的な圧力もなく、しかも合法的にこうした世代間の不公平を解消させるために、政治家のように選挙で選ばれることのない中央銀行によって、 インフレを誘発させる必要があるとの議論があります。 例えば、戦後のアメリカの国家債務の35%はインフレによって(実質債務の目減りによって)帳消しにされましたし、また、ある研究によれは、数年間に5%のインフレは、借金を持つ家計の債務をより早く軽減する効果があるとされ、別の研究では、アメリカのFedが政策金利をゼロにすることによって、より早く経済を回復させる効果があるとの研究もあります。

また、IMFが最近、発表したレポートによれば、1875年以来、国家債務がGDP対比100%を越えている国が如何にその債務を減らしたについて26のケースについて、成長、削減、インフレから検証したところ、実質金利を下げることが非常に有効であったことが報告されています。

例えば、イギリスの歴史を見てみますと、第1次世界大戦後のイギリスの国家債務はGDP対比140%あり、その時の物価は戦前の2倍に高騰していたために、英中央銀行は、歳出の削減と通貨(ポンド)を戦前の金本位制に強引に戻すため超緊縮政策をとり、英中央銀行は金利を7%にまで引き上げました(実質金利はそれ以上に高い水準)。 その結果、国債の支払金利を除く経常赤字はGDP対比7%に上昇し、1928年のイギリスのGDPは1918年より低くなり、国家債務は1030年には170%まで上昇し、1933年には190%まで急増しました。 その後、イギリスは第2次世界大戦後の世界的なインフレを通じて国家債務を下げることに成功しました。また。第2次世界大戦後のアメリカの債務も、インフレによって国家債務の35%を実質的に目減りさせることに成功しています。

つまり、これら2つの国が行ったオプション(実質金利を引き下げる政策)は、明らかに現在のユーロが行っている政策(緊縮政策による国家債務の削減)よりも、ずっと「まし」であり、世代間の不均衡や不公平をも解消する効果があると英誌エコノミストは結論付けています。

世界中の中央銀行が、近い将来、大泥棒に変身して、私たちの資産を”根ごそぎ”かっさらう日が来そうです。

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One comment on “世界的な世代間格差の解消にはインフレが有効?!
  1. ペルドン より
    だとしても・・

    それを・・
    実行出来る・・政治家・・居ますかね・?
    大英帝国にも・・
    さて・・
    スコットランド・・もし独立したら・・
    自動的にインフレ・・やって来るでしょうか・・?

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