2012/01/13 06:31 | 昨日の出来事から | コメント(6)
「日本国債が暴落しない理由」について
昨日、ぐっちー編集長が掲題に関する記事に中で、「日本国債が暴落しないのは『買う人がいるから』と指摘され、また「金融市場なんて理屈もはったくれもなくバクチにすぎない」と書かれていました。
確かに、こうした指摘は単純明快で読む人に対して説得力がありますが、かといって、マーケットの出来事を「相場が上がったのは、買う人が多いから」とか、「相場が下がった時には、売る人が多いから」と言って片づけてしまうのはやや乱暴な説明と言わざるをえません(数学で言えば、途中の計算式も書かずに答えだけを書いているのに近いものがあるのではないでしょうか)。
また、金融取引市場を「理屈もへったくれもなく、バクチだ!」で片づけてしまうのも簡単ことで、事実、為替相場を予測するのは、それこそ下駄を放り投げて予測するのと然程変わらないくらい相関性が低いのですが、これもまた「それを言っちゃあ、(全ての議論は)おしまいよ!」となってしまいます。
じゃあ、日本国債が暴落しない理由は何か?と言われれば、確かに買う人が多いから暴落しないのですが、そこには「何故、買う人が多いのか?」について説明する必要があります(数学で言うところの途中の計算式を示す必要があります)。 にもかかわらず、その答えを「所詮、マーケットはバクチだから」では、その答えになっていません。
私としましては、今回の命題に対し、「金融取引市場を「理屈もへったくれもないバクチだ!」で片づけてしまう事に対して反論する意味で、その理由の一つを次のように説明してみたいと思います。
そもそも、「日本の債券が暴落しないのは、多くの投資が日本国債を買うから」 という表現をもう一歩踏み込んでみますと、それは「多くの投資家が、日本の国債を債券投資として正当k化する理由があるから」と言い換えることが出来ると思います。 それでは、「多くの投資家が、日本の国債を債券投資として正当化できる理由」とは、一体どんなことが考えられるでしょうか。
その理由もたくさんあると思いますが、私は、その理由の一つとして「現在の日本国債の水準は、他の国の国債投資とくらべて魅力があるから」と申し上げたいと思います。
どういうことかといいますと、まず、世界主要国のインフレ率(消費者物価)と10年物国債の利回りを比べてみたいと思います。 例えば、現在のアメリカの10年物国債の利回りは2%程度であり、その一方でアメリカの消費者物価はプラス2.5%です。 もし、ここで10年物のアメリカ国債を2%で買って償還まで保有し、その期間の消費者物価が2.5%のままであったとすると、現在保有しているアメリカ10年物の国債の価値は、毎年0.5%減少してしまいます。即ち、この状態で投資すればするほど損をすることになります(何故ならば、1年あたりに受け取る収益よりも物価上昇の方が0.5%高い為)。
同様に、現在のイギリスの10年物国債の利回りもやはり2%程度で取引されていますが、イギリスの消費者物価が3.5%もあります。 即ち、アメリカ国債と同様に、今、イギリス国債を買って償還まで保有し、消費者物価が3.5%で変わらなかったとすると、毎年、1.5%も保有国債の価値が減少して大損をしてしまいます。
ところが、今、10年ものの日本国債を利回り1%で保有するとします。 現在の日本の消費者物価は殆どゼロですので、この10年物日本国債を償還まで保有し、日本の消費者物価がずっとゼロのままであるとすると、償還まで、毎年、1%の利益を得ることが出来るのです。 つまり、今、他の国の国債に投資すると損をするのに対して、日本国債に投資すると利益が出るのです! だから多くの投資家が日本国債を保有したいのです。
同様に、株と債券、あるいは、商品(コモディティ)と債券を比べてみますと、2011年に限って言えば、以外に思われるかもしれませんが、債券投資が最もパフォーマンスが良かったのです。 故に、投資家の資金は、何も日本国債に限らずそれぞれの国の国債に集まってきたのです(ただし、ギリシャなどの財政破綻懸念のある国の国債は除く)。
金融市場取引(マーケットの売買)にバクチ的な要素があることは否定しませんが、だからと言って金融市場取引全てを「バクチ」の一言で片づけられてしまうのはちょっとご勘弁願いたいところです。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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6 comments on “「日本国債が暴落しない理由」について”
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日本国債に魅力があるなら、なぜ外国人投資家の保有比率が低いままなのでしょうか?
投資対象として魅力がないとう現れだと思うのですが。
こら、大切なメシの種なんだからすっきりさせたら次からメルマガ読まなくなっちゃうでしょw
数字のロジックはそうでしょう
ぐっちーさんの言葉にはいくつかのヒントがあると思いますよ。
ぐっちーさんの記事を拝見して、、、
相場の分析(私のはまだモドキですけど)というのは、理論がベースだけど、理論と思って相場に触ったらダメなんですよね・・・と、思いました。
別に反発を感じたということではなく、そう考えられる自分に気づいて、すこし前よりは自分も成長したな、と。
博奕打つには・・堅気すぎる・・
銀行貯蓄・・駆け込むにしては・・ヤクザすぎる・・
この狭間で・・萌えてらっしゃる・・・
5年物国債のCDSを見ていると、日本の国債の暴落は、時間の問題のように見えます。
欧米のヘッジファンドによる暴落の仕掛けは着々と進んでいます。後はいつそれが始まるかです。遠からずということは、間違いないでしょう。その時に対処する準備をお勧めします。笑っておれるのも、今のうちではないでしょうか。現今の状況を見ていると本当に心配です。
日本の国債も魅力がなくなり、買いたいとか持ち続けたいと思う人が減って、価格が下がって金利が上昇して、政府はその利子を払えなくなって、アップアップする、ということだろうか。
じゃあ、デフレのままがいいってこと?