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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2012/07/06 06:40  | 昨日の出来事から |  コメント(4)

日本人は、世界一裕福な国民?!


おはようございます。

今週号の英誌エコノミストに「The real wealth of nations」と題した興味深い記事がありましたのでご紹介したいと思います。

富と言えば、かつて、ガルブレイスは「富は、優位性のないところには存在しない」と彼の本の中に記していますが、一般的には人々の豊かさを比較する際には、便宜的に「所得(Income)」の比較で済ませてしまい、「富(あるいは裕福さ):Wealth」で比較することはありません。 と言いますのも「富(あるいは裕福さ)」を定義するのは非常に難しく、また、それを構成するそれぞれの富を一つの数値(例えば、通貨)に換算することが困難だからです。

幸いにも、今月、国連が発表したケンブリッジ大学のDasgupta教授による主要国20か国のバランス シートの中で、富(Wealth)を3つのカテゴリーに分け(一つ目は、物理的な資本:機械やビルなどのインフラ、二つ目は、人間の資本(教育やスキル、三つ目は自然資本(土地、森,林、鉱山資源など)、それらをドル換算して、各国毎に「富の比較」を行っています。 今回のこうした比較はあくまでも概算的で、かつ試算的なものの域を出ず、「更なる精緻な分析を必要とする」ことを同教授は指摘しています、 しかし、それでも、その比較の示唆することは非常に暗示に富んだものとなっています。

さて、こうした事を踏まえたうえで、2008年度の各国の富の比較においてどのような結果が出たかと言いますと、国別では、アメリカが世界で一番豊かであり、その富の合計は117.8兆ドルとなっています(1990年に比べて0.7%増)。 2位には日本が続き、その額は55.1兆ドルとなり、1990年と比べて0.9%増加しています。 3位には中国の20.2兆ドル(同2.1%増)、そして、4位にはドイツの19,5兆ドル(同1.8%増)、5位にはイギリスの134.4兆ドル(同0.9%増)ときます。 ちなみに私のいるオーストラリアは10位で6.1兆ドル(同0.1%増)となっています。

そして、これを個人ベースの比較で見てみますと、世界で一番豊かなのは日本で、一人あたりの富は約420,000ドルとなり、2位はアメリカの約400,000ドルとなっています。 3位はカナダの約320,000ドル、4位はノルウェーの同320,000ドルが続き、5位にオーストラリアの約280,000ドルとなっています。

読者の皆様は、私たちが「失われた20年」と言われる言葉に代表されるように日本の景気の低迷や所得の減少を身に染みて経験している為、そのような数字を出されても「そうかなあ〜?」と首を傾げられるもしれませんが、これを構成する中身のお話をすればご納得いただけると思います。

ここで試算されている個人ベースの富の中身において、日本人一人当たりの人的資(Human Capital)が約300,000ドルを占め、鉱山などの資本(Natural Capital)は殆どなく、社会インフラ等の資本(Physical Capital) は約100,000ドルとなっています。 こうした傾向(人的資本の割合がその人の富の75%以上を占める国)は、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスで顕著に見ることが出来ます。

その一方で、中国やオーストラリアの人的資本の割合は50%程度して占めておらず、逆に鉱山資源の割合が30%以上も占めています。 特にサウジアラビアに至っては6割が、鉱山資源(サウジの場合は原油)を占め、人的資本の割合は3割程度にとどまっています。

以上の分析から事からわかることは、日本の金融資産は1500兆ドルと言われていますが、この国全体の富の大きさは、その3倍以上の55.1兆ドル(約4500兆円)あり、その多くは、教育の高さとスキルによる個人の人的富となっています。 また、これを個人ベースでみた場合でも、一人あたりの日本人の富の8割は、その人の教育の高さとスキルの高さによるものなのです。

こうして考えてみますと、私たち日本人には、たとえ、今、手元にお金がなくとも、実は、その価値の何倍ものお金を生み出す潜在力(知識とスキル)が、私たちの体や頭の中にあることを示しています。 また、別の言い方をすれば、私たちのHuman Capital(人的資本)をIncome(お金などの所得)に転換する場所は、何も日本だけである必要はないのです。

何故ならば、日本人の教育やスキルの高さは世界中どこに行っても通用する高さと価値がありますので、何も無理して日本にしがみついて、やりたくもない仕事を安い給料で我慢してやる必要はないのです(勿論、今の仕事に満足している人もたくさんいらっしゃるとは思いますが、、、)。

前々から、お話しているように、語学力と、その人の覚悟と気概さえあれば、その人の豊かさ(Wealth)は何もお金に限ったことではありませんが、その富を実際の所得(income)といった目に見える形で実現することが海外に行っても十分に可能なのです。

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4 comments on “日本人は、世界一裕福な国民?!
  1. パードゥン より
    クロコダイルさんは、お幸せですか?

     古くは光子ゲラン、最近は小野洋子でしょうか? 女性は、その地で果てても大丈夫なようですが、どうも男子はだめですね。 遣唐使に限らず、弘法大師、森鴎外、ノーベル賞受賞者、働きがピークに向かっている時はいいのですが、あちらでも大丈夫そうな人が功なったあたりから、荒野が胸に広がってきて、日本が懐かしくなるのですよね。 クロコダイルさんは、まだ稼ぎたりない気分なのでしょう。

     差別は感じませんか? いずれ帰る人、役に立っている人と思われている間はいいですが。 畳めでゴロンとして、セミの声を聞きながら本でも読みたくなりませんか?
    ヒジキや、スルメやなんでもない食べ物がいいなと思ってりしませんか?

     若い人の足を引っ張る気はありません。修行道場としてドンドンでたらいいと思いますが、大人はやはり日本で全うな職を創出していくのが責任と思いますよ。

     それと、2カ国語以上で深く物を考えるのは、庶民の生まれつきの頭では無理と思います。 日本語でますしっかり勉強することを勧めます

  2. ペルドン より
    世界一・!

    青山・青学名誉教授研究・・
    マスコミ報道の鵜呑込み度・・
    日本七十%・・
    コレマタ・・
    先進諸国中世界一・・!!

    エコノミスト記事・・
    信じる方は七十%を超す筈・・論理的には・・
    この件に関しては・・
    鵜呑み込み出来ない人は・・
    九割になるか・・
    世界一・・・(笑)?!

  3. ycom より
    このレポートは国家の分析ですね

    前橋さま
    いつも楽しく海外からのレポート拝見しております。

    また、しゃしゃり出てきてしまいました ^_^;

    もとになったレポートを以下で確認しました
    http://www.ihdp.unu.edu/article/read/inclusive-wealth-report-2012-has-been-launched

    これは国家の在り様についての分析の話ですね。
    そこに住む人の直接評価ではありません。
    well-beingをどう訳すかで話は変わりますけどね
    レポートの趣旨が
    The primary objective of the Inclusive Wealth Report is to provide quantitative information and analysis that present a long-term perspective on human well-being and measures of sustainability.
    国家が sustainable であるための human well-beingであり 満足とか幸福ではなく人として教育や健康であるかいうように感じます。
    中身は国民の健康や教育を充実すると国家経済が発展するよという風に誘導したい思いがほとばしってるように感じます、ま 私の読後感ですけどね。

  4. パードゥン より
    隣の国でさえ、厳しいですよ

     グッチ欄に投稿されているYKさんの韓国に関する引用はぜひ読まれるといいですよ。
    やめた大統領が皆さん不遇なので、かねがね不思議に思っていましたが、文化的な課題があるようですね。  書いてある事を鵜呑みにしてはいけませんが、チャングムの誓いを始め、韓国ドラマはうらみを晴らす話がおおいのとは一致します。 結構厳しい働く環境と想像されます。

    韓国は“なぜ”反日か?
    http://peachy.xii.jp/korea/

     最低限、日本の新聞の支店ができて、記者が大いに活動して模範を垂れてからの方がいいですよ。

     

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