2010/03/23 05:34 | 昨日の出来事から | コメント(1)
Dance in TITANIC に対する一つの提言
今週の英経済雑誌エコノミストに世界の今後10年間の経済予想をした特集がありましたので、それをご紹介しながら、掲題についてお話したいと思います。
雑誌エコノミストでは、1998年から2008年までの10年間の経済成長と今後10年(2009年―2019年)の見通しを世界全体と各国別に予想しています。それによりますと、世界全体の過去10年間の経済成長率はで年率3%でした。また、今後、10年間の経済成長の見通しは世界全体で年率2.6%と予想されています。
これに対して、先進国の国別に見てみますと、まずアメリカは、過去10年間の成長率は年率2.2%で、今後10年間の経済成長率は1.5%と予想されています。そして私たちの日本は、過去10年間の経済成長率は、年率1.8%程度で、今後10年間の経済成長率は1.1%程度と予想されています。
一方で、ヨーロッパに目を向けますと、イギリスは、過去10年間の経済成長率は、年率1.8%程度でしたが、今後、10年間の経済成長率は1.4%と予想されています。 次にEUの盟主ドイツは、過去10年間の経済成長率は1.5%で、今度10年間の経済成長も1.5%程度と予想されています。同じくもう一つの盟主フランスは、過去10年間の経済成長率は、年率1.5%で、今後の10年間の経済成長率は1.3%程度と予想されています。 反対にEUの問題児の一つイタリアは、過去10年間の経済成長率は、年率0.4%しかなく、今後10年間の経済成長率も0.5%しかありません。
こうして見てみますと、私たちの日本は「失われた20年」とはいっても、過去10年間はヨーロッパの先進国に比べてより経済成長したことになっています(その大半は国の借金で景気を押し上げた形になっていますが)。 世間では「景気が悪い! 景気が悪い!」と言われましたが何のことはない、先進国の中ではアメリカに次いで日本は経済成長をしていたのです!(他の国がどれほど悪かったか、想像がつきそうです)。
ところが、気になるのは今後10年間の経済成長率です。 読者の皆様もお気づきのように、今度10年間で最も景気が失速する割合の大きい国が日本なのです(少子高齢化に伴う人口減少と、限界に来ている財政出動に、今までのような経済成長を期待できないことが大きな要因です)。
以上の数字を見てみますと、日本の現状を 「Dance in (on) TITANIC 」と言う表現が話題になっていますが、それは日本だけではなかったようです。 ことイタリアに至っては、この10年間、Danceすらできていなかったようです。
読者の皆様は、もうこうした類の話(世情を揶揄すること)に辟易とされていると思います(私もそうです)。 そんな事よりも、皆様としては「どうしたら、この閉塞状況を脱却できるのか?」に関心がおありだと思います。
その問いに対する答えの一つを私のいるオーストラリアで見ることが出来ます。
かつて、オーストラリアは、1980年代から1990年代にかけてオールドエコノミー(第1次産業中心の国で工業や第3次産業がない国)として先進諸国の発展から取り残された時期がありました。
この閉塞的な状況を打開しようとオーストラリア政府が力を入れたことの一つは、子供の教育に力を入れ、特に英語以外の言葉の教育に力を入れました。当時の工業先進国であった日本語やドイツ語の教育を小学校から教え始めたのでした。また、こうした取り組みにドイツ政府も協力し、オーストラリアの中学高校の中には、全ての授業をドイツ語で行う学校もあるほどです。 また、政府は数学や科学そして医学にも力を入れ、優秀な人材には奨学金を出して授業料を軽減免除し、更には国費留学を積極的に行いました。
その結果、オーストラリアの子供たちの多くが、学校卒業後、アメリカやイギリス、シンガポール、そして日本やドイツに進出していきました。おかげで(?!)優秀な人材が海外に流出する弊害が出ることになるのですが、それでも、彼らはオーストラリアを見捨てたわけでありません。それが証拠に、オーストラリアは世界でも最も愛国心の強い国でもあるのです。「海外でしっかり働いた後はオーストラリアに帰ってきて余生を過ごす」が、彼らの理想の生き方の一つになっているようです。
ここからは私の提言ですが、日本も小学校から英語や中国語あるいはスペイン語を教えて、子供たちに世界で活躍できる機会を、それこそ国を挙げて応援してあげてはどうでしょうか? 「日本が沈没する前に脱出する」と言った後ろ向きの話ではなくて、子供たちが積極的に世界に活躍の場を求めて日本を出ていくことは、日本を見捨てることでもなんでもありませんし、愛国心がなくなることでもないのです。ましてや日本語が崩壊する等と言った議論は当てはまりません。本来、こうした議論は全く別の次元の話だと私は考えます。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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