2011/03/30 05:45 | 昨日の出来事から | コメント(3)
福島第1原発事故は、本質的にはサブプライム ローン問題と同じ
今回の福島第一原発事故は、原発事業に対する投資とリスク管理の点で、根本的な部分ではサブプライム ローン問題と何ら変わりはありません。
そのことについてお話する前に、今週号の英誌エコノミストに世界の原発の現状についての記事がありましたので、まず、それをご紹介したいと思います。
まず、世界中に原子力発電所の数が443カ所あり、今後、建設予定原発は220カ所あります。一番多いのは、アメリカで、現在104カ所で運転中(更に10カ所は新たに建設もしくは計画中)、そしてフランスの58カ所(同2カ所)、そして日本の55カ所(同14カ所)、そして、ロシアの32カ所(同24カ所)となっています。今後、最も原発を建設予定しているのは、中国で、現在は13カ所稼働中ですが、今後は77カ所の原発を計画しています。
まず、ここで問題なのは原子力発電所の寿命です。一般的には、原子炉や周りの配管の腐食や老朽化を考慮して40年が一つの目途とされています。 世界で最も古い原発は44年も稼働させている原発がありますが、全世界的には原発の平均稼働年数は、現時点で27年となっています。 ちなみに、福島第一原子力発電所一号機は1971年3月26日に営業運転を開始していますので、既に40年経過した原発で、もう寿命に来ていた原発なのです。 つまり東日本大震災で被災する、しないに関わらず福島原発一号機は廃炉の時期に来ていたのです。 にもかかわらず営業をし続けたのは、原発による発電は「非常に採算のいい儲かる商売(ドル箱)」だったことが大きな理由なのです。
しかし、この「非常に採算のいい儲かる商売(ドル箱)」と言う言葉は、私の様な投機家に言わせれば「実に曲者(くせもの)」で、読者の皆様には、2008年に起こった「あの忌々しいサブプライム問題」を思い出していただきたいのです。 あの時、市場では、「サブプライム ローンを組み込んだCDOは、信用格付けが高いにもかかわらず(リスクが低いにもかかわらず)、利回りが高くて夢のような商品だ!」と言われました。
ですが、御存じのようにこれらのCDOは、最終的には紙クズ同然となってしまいました。 どうして破綻したかと言えば、サブプライム ローンの根本的な問題としては、格付会社が本来のリスクを正確に算定せず、ただ確率論で数字をいじくり回して強引に高い格付けをつけた、言わば「食わせ物の商品」だったからです。つまり、あの商品は「本来的には非常にリスクの高い商品」であって、とても高い格付けを取得できる商品ではなかったのです。 しかも、証券会社が400〜500ベーシスも手数料をむしり取って販売された商品が低リスクで高利回りの筈がないのです! つまり、証券投資の教科書が教えるところのリスクとリターンは本来的にはバランスが取れており、大きいリターンを得る為には、大きいリスクが伴うのであって、リスクが少ないにもかかわらず、大きなリターンを得られることなどあり得ないのです。
今回の原子力発電所による発電が「採算のいいドル箱」と言われたのは、本来のあるべきリスクを過小評価した故に、見かけ上、リスクの割に大きな収益が上がり、更に、これまでは隠れたリスクが表面化せずに来た為に「採算のいいドル箱」だったにすぎず、今回の原発事故で、一気にこれらのリスクが表面化して、いまや会社存亡の危機に立たされるまでのリスクに晒されています。
また、商品のリスク管理のついても同じ事が言えます。 今回の原発事故では「核燃料は、原子炉を始め、5重の壁によって守られているから、絶対安心!」と、事故当初は言われていましたが、それがどうでしょうか。 今や「最後の5番目の壁すら損傷し、危機的状態!」となっています。 サブプライム ローンの時も同じでした。 「格付けの高いCDOは、最上級の安全性と、資本の補完、そして保証会社の信用保証によって守られている!」と言われましたが、結果は、二束三文です。
このように、 建設当時から、採算が合うような建設コストの原発設備しか作らず、そして、そのリスクの算定過程では、採算に合わないようなリスク(1000年に一度の大震災のリスク等)は排除し、その後は「それいけドンドン」で、1号機、2号機、3号機、と作り続け、挙げ句には、老朽化して寿命が来ているにもかかわらず、営業をし続けた東京電力の企業としての投資姿勢は、サブプライム ローンを組み込んだCDOを破綻するまで買い続けた投資家の姿と何ら変わりはありません。
そして、これまで目に見えなかったリスク(あるいは故意に無視してきたリスク)が、一気に表面がした時に、 サブプライム ローン問題では、リーマン ショックとなって世界を震撼させ、今回の福島第一原発事故でもその再現(デジャブdeja-vu既視感)を覚えます。
最後に、もう一度言わせていただきます。投資とリスクは、本来、バランスが取れている筈であって、もし、皆様が投資している商品(あるいは物件)が、異様に高いリターンがあれば、それは何か大きなリスクか隠れていると疑って、ただちにその投資を見直すべきです。
クロコダイル通信は2019年12月末日をもって連載終了となります。
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3 comments on “福島第1原発事故は、本質的にはサブプライム ローン問題と同じ”
ベルドン にコメントする コメントをキャンセル
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何故・・
日本は第二次世界大戦に・・
突入して行ったのか・・
止める事が・・
何故・・出来なかったのか・?!・・
その解答が・・
フクシマダイイチ・・・
父は「アメリカを少しでも知ってる人は皆、戦争に反対していたんだ」と、開戦時天皇は「遣るからには絶対に勝たないといけない」と言ったか言わないとか、先の事は分らないから、幻想を抱いてやる場合、金で済む事ならまだいいが命を懸けてやるのだけは止めるべきだと思いますね。
貞観地震は869年。一般的に心理学・社会学では二世代を経過すると「熱さは喉元を過ぎる」といわれている。宮城県沖の大規模災害復興は明治5年だから、だいたい二世代。宮古地域は確か明治5年に津波で流され6年から防波堤を作り、人が住み始めました。「天災は忘れた頃にやってくる」先祖が流され100年あまりの時を経て、また流されなくてもいいものを・・・
そういう意味では、昭和恐慌や昭和21年の預金封鎖。忘れた頃にやってくる?
そして戦後65年、30年後には戦争の道?