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2011/03/24 06:03  | 昨日の出来事から |  コメント(1)

今回の東日本震災の早期景気回復期待は危険


おはようございます。

今週号英誌エコノミストに今回の東日本大震災について特集が掲載され、その中で、前回の阪神淡路大震災の経験をそのまま当てはめて、早期に景気が回復期待をする事に警戒感を示しています。

今回の東日本大震災のマグニチュード9.0は広島原爆の30,000倍のエネルギーに相当し、その被害の規模は、歴史的にも類を見ないものであるとしています。そして、市場関係者の一部には、1995年の阪神淡路大震災の時のように、比較的早期に日本経済が回復する事を期待する向きがあるが、今回はそうはいかないであろうとしています。 その理由は以下の通りです。

1995年の阪神淡路大震災では、震災後15カ月で、ほぼ経済活動としては元の水準まで回復したが、これは偏に被害の範囲が距離的に100km圏内と比較的小さな地域であった為と、しかもこの地域はサービス業を中心とした産業が多かった為、予想以上に早期に回復する事ができた。 また、他の世界の地域で起こった大災害と比べて見ると、2004年12月のインド洋津波、あるいは2005年のカシミール大地震では、経済的に大きなダメージを与えることはなかった。何故ならば、この地域は貧しい人々が多かった為、経済活動しては大きなダメージに至らなかった。

しかし、今回の大震災では、被害範囲が500kmと広範囲であり、また、東北地方は第一次産業である農業や漁業もさることながら、第2次産業の電気機器メーカーの工場が多い。 確かに宮城、福島、岩手県だけを見ればGDPの3.6%しか占めていないが、その周辺の茨城、新潟、長野まで広げると日本のGDPの10.8%を占めるまでになり、非常に大きな影響を与えることになる(周辺の工場間で連携している為、被害の多かった3県に留まらない)。

また、被害金額は、推定で15兆円から20兆円程度と言われており(日本政府は25兆円程度と試算)、GDP対比4%とそれほど大きくないと考えられるかもしれないが、今回の震災の場合には、金額の大きさ以上に福島第一原発事故が大きな問題となっており、他の大震災の被害額とは違ったリスクを孕んである。
というのも、(1)今後、原子力発電ビジネスの廃止あるいは見直しが、当然、議論となり、福島第一原発の再建(あるいは代替)が不可能になるかもしれない。 (2) それに伴って、今後、予想以上に長期に亘り、十分な電力を確保できなくなるリスクが高まっている。 (3)福島第一原発事故の動向次第では、心理的な不安要因から金融市場をパニックに陥れるかもしれない(株価下落、あるいは流動性の問題等)。

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One comment on “今回の東日本震災の早期景気回復期待は危険
  1. ベルドン より

    浅い傷は・・小五月蠅い・・
    深い傷は・・痛みを感じない・・
    とすると・・
    我々は・・まだ今回の傷の痛みを・・味わっていない・・
    深さも・・まだ探していない・・

    官邸を始め・・
    我々は・・探り針をにぎったまま・・呆然と・・突っ立っているだけだ・・
    ただ
    歴史の転換にいる・・それだけは・・漠として・・感じている・・
    我々は・・何処に・・行くのだろうか・??
    ・・
    最悪の事態の時・・最悪の官邸・人材・・我々は・・歴史の冷笑を・・感じる・・・

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