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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2011/09/20 08:43  | 昨日の出来事から |  コメント(3)

悩めるギリシャ人?!


先日、ここブリスベンの高校で歴史を教えているある先生のワーク ショップを傍聴する機会がありましたので、そのことについてお話したいと思います。

そのワーク ショップは高校生向けですので、歴史の解釈の多面性について面白おかしく講義をし、

先生:「ナポレオンは英雄か?」 
多くの高校生: 大きな声で「Yes」と返事。
先生:「では、ナポレオンは英雄であると同時に、彼は独裁者か?」
多くの生徒は「Yes」といい、一部に「No」の声も。
先生:「ナポレオンが独裁者で英雄なら、独裁者ヒットラーは英雄か?」
多くの生徒:「NO!!」と大声で返事。
先生:「では、同じ独裁者であるナポレオンは英雄なのに、その一方で独裁者ヒットラーが英雄ではないのは何故か?」

といった調子の講義です。

先生と高校生のこうしたやりとりの中で、先生としては「歴史的な出来事を単一的な側面から評価するのではなく、多面的に評価する事の重要性と、世間一般的に言われて既成概念にとらわれた歴史認識に対して、自分の頭で再検討する事の重要性を訴えたかったようです。

こうして白熱した講義が約1時間半続いて、ワーク ショップも無事に終わろうとした時の事です。
先生は、おもむろに「私は、ギリシャ人です。 そう、皆も知っているように、今、ギリシャは大きな問題を抱えていて大変なのです」といい、「皆さんは、今のギリシャをどう思いますか?」と尋ねたのでした。

すると、高校生たちは、クスクス笑いながら「Sloppy(だらしない)!」、「Shame(恥)」、「Default(破綻)!」と返事をしたのでした。 先生は「さもありなん」という様な顔をして頷きながら、やがて生徒の声を制止して、「そうですね、今のギリシャは、皆さんのおっしゃる通りかもしれませんね。では、そんなギリシャは、今後、どうしたらいいのでしょうか?」と先生は皆に問題を投げかけたところで、そのワーク ショップは終わったのでした。

その後、その先生とお話する機会があり、
私:「今、ギリシャは本当に大変ですね。それにしても、どうして高校生に向かって、あのような質問をされたのですか?」
先生:「私は、ギリシャの大学で哲学と歴史を専攻していました・・・」
私:「ギリシャ哲学と言えば、ソクラテス、プラトン、アリストテレスですか?」と、素人のくせに知ったかぶりをして言う私。
先生:「はいそうです。 ソクラテスは、あの有名な『汝を知れ!』(分をわきまえろ、身の程を知れ、あるいは、別の解釈としては、度を越すことなかれ)等、節度を守ることの重要性と、『単に生きるのではなく、善く生きる』事の重要性を説きました。」
私:「そ、そ、そうでしたね・・・」と心もとない返事(というのも、そこまで知らない私、、、)。

先生:「そして、私は大学卒業後、これといった仕事に就くことも出来ずにパートタイムの仕事をしていたのですが、それではいつまでたっても埒(らち)があきませんので、英語の勉強をしてオーストラリアの高校の教師の資格を取って、ここで歴史を教えているのです。」
私:「そうですかあ〜。 それは良かったですねえ〜! ギリシャがこんなことになる前に脱出できて!」と言うと、
先生:「NO!! そんなことはない!!」と語気を強めては「私は、ギリシャを捨て、ギリシャから逃げ出してしまった!」と悲しげな顔をするのです。 

ソクラテスは、弟子クリトンとのやり取りの中で、『国家の庇護の下でおまえの父母が結婚し、おまえが生まれ、扶養され、教育された。祖国とは、父母や祖先よりも貴く、畏怖され、神聖なものである。また、この国家(アテナイ) が気に入らなければ、いつでも財産を持って外国や植民地に移住することが認められているのにもかかわらず、おまえは70歳の老人になるまで、ここに留まり、家庭をもうけ、ほとんど外国に行くことすらなかった。したがって、我々(国家)とおまえの間には合意と契約が成立しているのにもかかわらず、今さらそれを一方的に破棄して、逃亡を企てようというのか?そのような不正が許されるのか?』(「クリトン」の社会契約論から引用)。

そして、その先生が私に向かって言った言葉が強烈でした。
先生:「お前も国を捨てて逃亡してきたのか?!」

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3 comments on “悩めるギリシャ人?!
  1. にゃん。 より
    「逃亡」より「怠惰」や「傲慢」の方が罪は重い

    感じ方はひとそれぞれなのでしょうけど、外国へ移ったひとがその国でまっとうに生活して社会に溶け込めるなら、立派な「国益」なのではないでしょうか。軽蔑されるようなことばかりしていたら「逃亡者」といわれるでしょうし、まっとうに生活していて好感されれば祖国のイメージを多少なりともよくしてくれるかもしれないですし。(だって商売したり、何かのときに助けが必要だったりしたとき、好感のもてる人の祖国だったら、ぜったい印象はプラスと思います。そういうものの積み重ねが大事なのではないでしょうか)
    国に残っていても、恨み言ばかりでだれかに何かをしてもらうことばかり考えているなら、売国奴も同じと思います。
    残って、その土地のために何かをしようというひともいると思うし、その人はそれなりに手に入れるものもあるのではないでしょうか。
    ただ残念なのは、国内で権力の座にあって、外国人からお金をもらうような政治家がいるってことです。逃亡よりずっと重い罪だと思います。

  2. ならりん より
    問いかけ

    深い問いかけ。自分に対しての。知性である。日本の学校教育に必要なこと。

  3. ベルドン より
    悩める日本人

    流刑の地だから・・
    逃亡者でも構わないのでは・・・(笑)

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