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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2012/04/26 06:00  | 昨日の出来事から |  コメント(2)

再燃するユーロ危機への処方箋


おはようございます。
今週号の英誌エコノミストに最近のユーロ危機再燃に関する記事がありましたのでご紹介したいと思います。

ギリシャ危機は、昨年末と今年の2月にECBによる1兆ユーロ(期間3年)もの大量資金を市場に注入する事によって市場は落ち着きを取り戻しましたが、その時間稼ぎ効果は4月に入って既にその効力を失ってしまいました。 具体的にはスペインの10年国債の利回りが6%を越えるまで金利が上昇しています(価格は下落しています)。

英誌エコノミストは、どうしてECBによる1兆ユーロの資金供給がその効力を維持できなかったかといえば、それは「一連の危機に対する治療がまだ不十分であったから」と指摘しています。 即ち、「不況の中にあって財政再建のための緊縮財政は弱い景気を更に悪化させ、また、根本的な問題である単一通貨ユーロの欠陥にまだ手をつけていないからである。 特に、杜撰な各国の銀行監督と最後の貸し手である政府機能不足が問題であると」しています。

これを実行するためには、ヨーロッパの政治家は、次の2点を行う必要がある。一つ目は、(これまでのような不況の中、緊縮財政をするのではなく)ポリシー ミックスのマクロ経済運営を行うべきである(目先的には金融緩和を強力に推進しつつ、中長期的な財政健全化を図る事)。 2つ目は各国の国債(債務)を一つにまとめ、そして域内の大手銀行の不良債権処理に着手すべきである。

前回のギリシャ危機の対応は、結局のところ、EUやIMFの資金供給と、民間の自発的な債務繰り延べ(実質的には部分的なデフォルト)で目先の資金繰りにめどをつけた上で、ギリシャ国民に対して経済実態はお構いなしで一方的に財政緊縮を迫ったにすぎず、その事がかえってギリシャ経済をよりデフレと不況に陥れています。 

先程も指摘しましたが、ユーロの根本的かつ構造的な問題として、ヨーロッパの銀行は自国の企業のみならず、域内の全ての企業に貸し出しをする一方で、その資金源の殆どは自国の国民の預金に頼っているミスマッチがあり、その事が、今回のギリシャ危機のような問題が起きた時に、政府はこのミスマッチに対応しきれないところに問題があります。 

更には、EU各国政府が発行している国債に問題があります。 単一通貨ユーロには、例えば、単一通貨米ドルに対するアメリカ国債のようなソブリン債が存在しないため、大量の資金が一部の国債の集中し(現在ではドイツ国債)、その一方で、財政状態の悪い国債は大きく売られ、単一国債が無い故にその歪みをより助長している現状があります。 これを是正するためにはどうしても 域内の大量の資金の受け皿となる安全資産(ユーロ債、もしくは何らかのそれに該当する債券)が必要です。

しかし、現在、この歪みの恩恵にあずかっているドイツは非常に安い金利で資金を調達できるために、ユーロ債の話にはテーブルに着こうとさえしません。 その一方で、スペイン国民は「いずれドイツが資金援助してくれるであろう」と期待している節があり、英誌エコノミストはこうしたモラル ハザードを警戒すると同時に、「EU内の反発や不信感はすぐには解消されない事はよくわかるが、今、市場で再燃している危機感を沈ませる為には、(こうした構造改革に、すぐには手をつけることはできないまでも)せめて議題に乗せる事が必要である」としています。

このように見てみますと、今の日本政府のやろうとしている事が実にユニークかつ奇異である事がよくわかります。 ギリシャのように破産してしまった国は、不景気であろうが何であろうが貸し手の強制力によって財政緊縮を強引にやらなければならないのは理解できますが、日本の野田政権は、誰に強制されるわけでもないのに、日本経済がデフレ真っただ中の最中に、経済が殆ど成長していないにもかかわらず、自分で自分の首を絞めて更にデフレと不景気を加速させる緊縮財政(消費税引き上げ)を敢行しようとしています。

それって、プロレスでいえば、反則技で相手の首を絞めようと自陣コーナーの紐をパンツに隠し持ち、相手をロープに飛ばして自分もロープに飛んだものの、何を間違えたか自分の首にその紐が巻きついて、ロープに宙ぶらりんになる姿に似ていませんか?!

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2 comments on “再燃するユーロ危機への処方箋
  1. ペルドン より
    ユーロ

    それはその通り・・
    だとしても・・
    中長期的観点・・
    短期的には・・ユーロ問題なしでしょう・・
    ただ・・
    次・・
    インフレの恐れ・・
    ユーロ圏を襲いかねない・・

    何処かの地方の市長なら・・恙なく・・長期任期出来たものを・・まかり間違って・・宰相の椅子に座ったばかりに・・
    座れただけで・・満足か・・・

  2. st より
    国のかたちを変えるしかない

    原発を停止できない、歳出削減にまったく手を付けづに一時しのぎに消費増税をする、外交防衛も米中露に翻弄されて地に足がついていない、今の国会議員や地方議員や官僚を見ているとその体たらくに暗澹たる気持ちになる、維新八策でいいから国のかたちを変えて、中央集権制から地方分権制に、官僚主導から政治主導に、首相を公選制に変えないとこの閉塞感から抜け出すことは出来ないと思います、民主党と自民党を徹底的に叩き潰さないと駄目です。

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