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The Gucci Post [世界情勢・政治・経済金融 × プロフェッショナル]

2011/02/22 05:41  | 昨日の出来事から |  コメント(4)

株を買う事はベン バーナンキに賭ける事?!


おはようございます。

最近、NY株が好調です。 また、それにつられて日経平均もしっかりしています。
今週号の英誌エコノミストは、現在のアメリカの株価は人工的な株価対策のおかげであり、水準そのものは懐疑的であると警告しています。

ご存じのように、現在のアメリカの金融政策は、2010年後半から行われている量的緩和政策II( QE II:2011年6月までに約6000億ドル(日本円で約50兆円)の米国債を買い入れ)を行い、この政策の特徴は株価対策を明白に打ち出していることです。 その辺りの事は、2010年11月にワシントン ポストにベン バーナンキFRB議長が寄稿した論文の中で「株価上昇は消費を刺激し、景気に対する信頼感を回復させる。 その事は更に消費を刺激し、 増加した消費は所得と利益を増やし、これらが景気に良い循環となって景気の拡大を下支えする」と、はっきり述べています。

今回の、ある種、人工的な株価引き上げ政策によって、現在の株価水準は景気循環調整後のShiller P/E ( エール大学のRobert Shiller教授によるprice-earning) レシオは23.7と、歴史的な平均的水準から45%も高い水準にあり、また、それは20世紀以降、4度あった株価の高値(Peak)とほぼ同じ水準まで買われています(いわゆる買われ過ぎの状態)。

英誌エコノミストは、今回のアメリカの超低金利政策は、銀行の収益回復に寄与し、投資家の資金を安全な現金から投資に向かせることに成功した事を認めつつも、その一方で問題も多いと指摘しています。 また、更に「300年の歴史を持つ(我が大英帝国の)イギリス中銀は、そのような異常な低金利政策を決して行ってこなかった」 と述べています(このこと自体はあまり意味があるとは思いませんが)。

さて、こうしたアプローチとは別に、バークレイズ キャピタルが行った分析に拠れば、株価は(1)低貯蓄者と(2)高貯蓄者の比率の変化と強い相関関係があると指摘しています。 (1)の低貯蓄者とは、まず25−34歳の若い世代が挙げられます。この世代は家庭を形成し、住宅を購入している時期であり大きな住宅ローンを抱えていますので貯蓄は低い水準に留まっています。 また、65歳以上のリタイヤ世代は、これまでの貯蓄を取り崩していく時期です。 一方で、(2)の高貯蓄者とは、35−54歳を中心とした世代の事で、彼らは住宅ローンに目途をつけ、リタイヤに向けて貯蓄に励んでいる時期です。

そして、20世紀以降、この2つの層の関係が大きく動いた時期があります。それは1960−1970年代、つまりベビーブーマー(日本でいうところの団塊の世代)が、社会に出て働き始めた時期は低貯蓄者の比率が高まります(株価は低迷)。 しかし1980年台から2000年にかけて今度は彼らがローンに目途をつけ、社会的地位も上がることで収入も増えて貯蓄に励む事で高貯蓄者の比率が高くなります。 この間、アメリカの株価は大きく上昇しました。 しかし2000年から2025年にかけては再び低貯蓄者比率が増えていきます(何故ならば、団塊の世代がリタイヤして貯蓄を取り崩す側に回るため)。 つまり、この法則に従えば、株価は2025年にかけて低迷する事が予想されます。
(この考えは、日本では藻谷 浩介氏の「デフレの正体」で展開されている人口論的アプローチに近いものがあると思われます)。

そして、英誌エコノミストは、最後に「これから株を買うというのは、ベン(Ben  Barnake FRB議長)に賭けるのと同じことである」と警告し、現在の株価水準に懐疑的です。

しかし、私達、日本人にすれば、ベンに賭けるのは、もうどうしようもない菅政権に賭けるより、ずっと、ずっと、まともに見えるのですが、、、、。

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4 comments on “株を買う事はベン バーナンキに賭ける事?!
  1. さくたろう より
    間違えてたらすいません。

    量的緩和は6000億ドルではないでしょうか?

  2. 前橋 より
    さくたろう 様

    申し訳ございません。おっしゃる通りでございます。 訂正させていただきました。

    ありがとうございました。

    前橋

  3. ベルドン より
    ベン

    ベンの才能は・・
    弁明にあるのです・・

    分析は・・玉ねぎ・・剥き・・涙が・・
    やりすぎると・・
    食べるところが・・無くなる・・・

  4. あっちー&こっちー より
    スタグフレーション。

    その時、株価は上がると考えていいのでしょうか?
    グッチーポスト、ニューズウィーク日本版http://news.finance.yahoo.co.jp/detail/20110217-00000304-newsweek-column
    でも取り上げだされたようですが…。

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